ITパスポートは、ITの基礎知識を問う国家資格であり、学生から社会人まで幅広い層に受験されている。
比較的取りかかりやすい資格でもあるが、資格取得にかかるコストの実態、取得後で変わったことを明確にし、ITパスポート資格の価値を再認識するべく、スキルアップ研究所では20代~60代のITパスポート資格保持者を対象に調査を行った。
- ITパスポート取得者の9割以上が働きながら資格を取得
- 学習手段では市販教材を使った独学が6割、平均勉強時間は10時間以下と短め
- 資格取得の目的は6割以上が仕事関連、IT関係の実務には必須のスキル
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | ITパスポートの取得に関する実態調査 |
対象者 | 20代~60代のITパスポート資格保持者 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年2月5日~2月12日 |
回答数 | 191名 |
ITパスポートを取得の現状と実態
9割以上が働きながら資格を取得
「ITパスポートを取得した際の状況について教えてください」という質問に対する回答を見ると、回答者の8割以上がフルタイムで働きながら資格を取得していることがわかった。
また、パートタイムも含めると9割以上が社会人になって取得していることが明らかになった。
社会人は仕事や生活の中で学習時間を確保する必要があるため、計画的な学習が求められる。効率的な学習方法やオンライン講座の活用が、資格取得の鍵となるだろう。
勉強時間の確保は早朝が多い
上記の質問に続いて、「その状況で、どのようにして勉強時間を確保しましたか?」という質問をすると、56.1%が「早朝の時間を活用した」と最も多い回答になった。
これらの結果から、仕事や家事の影響を受けにくい時間帯であることや、朝の方が集中しやすいと感じる人が多いことが考えられる。
また、夜間の学習(13.1%)やスキマ時間の活用(12.0%)といった方法を選ぶ人も一定数いることから、学習スタイルは人それぞれ異なることがうかがえる。
ITパスポート取得の平均勉強時間
「ITパスポート取得にかけた勉強時間を教えてください」という質問に対し、回答者の53.3%が「10時間未満」と回答しており、実際の学習時間は一般的に言われる100時間よりも短いケースが多いことがわかった。
一方で、10〜30時間(14.7%)や30〜50時間(12.6%)といった層も一定数存在するため、受験者の知識レベルや学習スタイルによって必要な学習時間には差があると考えられる。
特に、社会人になってから取得した人が多いことを踏まえると、業務での経験や大学の専攻によっては、学習時間を大幅に短縮できる可能性がある。
ITパスポート取得の目的と効果
ITパスポート取得者の6割は現職での活用が目的
ITパスポート資格の取得目的について調査したところ、「現在の職業で活用するため」が61.3%で単独では最多となった。
また、「現在の職業で活用するため」「就職・転職に活かすため」「副業での活用」
「会社で取得が必須だった」といった仕事関連の目的を合わせると80%以上に達し、実務での活用を見据えた資格取得者が大半を占めることが明らかになった。
このことから、ITパスポート資格がIT関係の実務には必須のスキルとして広く認識されていると考えられる。
資格取得が昇進や給与アップにつながっている
「ITパスポート取得後に役立ったことを教えてください」という質問に対し、62.7%が「昇進や給与アップにつながった」と回答した。
一方で、「就職活動で有利になった(2.5%)」や「就職活動で有利になった(7.2%)」での効果は比較的低く、新卒・中途採用における決定的な要因にはなりにくいと考えられる。
全体的に見ると、キャリア面での直接的なメリットを感じていることから、ITパスポートは単なる知識習得にとどまらず、企業内での評価向上や待遇改善につながる資格であるといえる。
ITパスポート取得後に仕事の業務効率向上
「仕事で感じた具体的な成果を教えてください」という質問に対し、71.9%が「業務効率が向上した」と回答した。
その結果からITパスポート取得は単なる資格取得にとどまらず、実務に直結するスキルアップをもたらし、結果として業務効率の向上やキャリアの発展に寄与していると考えられる。
ITパスポート取得の学習方法と選択基準
ITパスポートの学習手段は市販教材が7割を占める
ITパスポート資格取得時の学習方法を調査したところ、「市販の教材を活用した」との回答が75.9%と最も多く、約7割の取得者が独学での学習を選択していることが判明した。
また、講座形式での学習については、通信(オンライン)形式が11.5%、通学(対面)形式が4.2%となり、オンラインでの学習を選ぶ傾向が強いことも明らかとなった。
この結果から、ITパスポートの学習時間が比較的短いことも影響し、多くの人が手軽に始められる独学やオンライン学習を選んでいると考えられる。
満足度はどの学習手段でも高め
上記質問に続いて、その人が利用した学習手段に対する満足度を調査したところ、どの学習手段においても「やや高い」「高い」と回答した人が60%以上いることがわかった。
しかし唯一「YouTubeなどのSNS」だけが「高い」と回答した人がいないことから、手軽にアクセスできる一方で、体系的な学習や深い理解を得るには限界があると考えられる。
特に資格試験のような計画的でしっかりした学習が求められる場面では、SNSのコンテンツだけでは十分な満足感を得られない場合が多いことがわかる。
学習手段に対する満足度はコストパフォーマンスの高さから
上記質問に続いて、満足度が「高い」「やや高い」と回答した人に「満足度が高いと思う理由はなんですか」という質問に対し、76.5%が「コストパフォーマンスが良かった」と回答した。
その結果からITパスポートの学習はコストパフォーマンスの良さと効率的な学習方法が受講者にとって重要な要素となっており、教材選択においては価格と内容のバランスが最も重視されていると言える。
過去問演習がITパスポート合格の鍵
「ITパスポート取得に向けて学ぶ際に最も重視するべきポイントを教えてください」という質問に対し、回答者の67.6%が「過去問演習の徹底」を挙げており、他の選択肢を大きく引き離した。
この結果は、ITパスポート試験対策では過去問演習が非常に重要であることがよくわかる。
過去問を通じて、出題パターンや頻出分野、設問の特徴を的確に把握することが、合格への重要な鍵となる。
ITパスポートはキャリアの第一歩
ITパスポート資格を勧めたい人が9割以上
「ITパスポート取得を他者に勧めたいと思いますか?」という質問に対し、57.1%が「強く勧めたい」、35.1%が「勧めたい」と回答し、合計で92.2%の人がITパスポート資格の取得を肯定的に捉えている。
ITパスポート資格は、多くの人にとって役立つ資格であることが改めてわかる結果となった。
次に目指すなら基本情報技術者試験
「今後取得したいIT関連資格があれば教えてください」という質問に対し、67.5%が「基本情報技術者試験」と回答した。
この結果は、ITパスポートはキャリアの第一歩として機能し、その後のステップとして基本情報技術者試験が最も一般的な選択肢となっていると言える。
また、一部の取得者はより専門的な資格へと進む傾向も見られる。
今後の課題と展望
今回の調査から、ITパスポート資格は多くの人にとって実用性の高いスキルであることがわかった。特に、資格取得者の9割以上が仕事をしながら学習を進めており、その目的の多くが業務に関連していた。
また、ほとんどの人が昇給・昇格や仕事面、自己成長など、資格取得によるメリットを感じていることが明らかになった。
ITパスポートは個人のキャリアアップや業務スキルの向上に役立つ資格といえる。今後は、上位資格へのステップアップ支援や企業研修への導入が進むことが期待される。
実際に、ITパスポートは基本情報技術者試験などの登竜門としての役割も果たしており、継続的な学習をサポートする仕組みが求められる。さらに、企業が研修の一環として活用すれば、業務の効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にもつながるだろう。
調査結果の引用・転載について
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