リスキリング レポート

フリーランス転身後の生活の変化に関する実態調査

更新日:

調査: スキルアップ研究所

近年、フリーランスは柔軟性のある働き方として注目されている。その一方、会社員のようには収入が安定していなかったり、福利厚生が受けられなかったりなど、懸念点も多いだろう。

フリーランスの働き方や年収など、生活面の実態を解明すべく、スキルアップ研究所はフリーランス転身後の生活の変化に関する実態調査を行った。

「フリーランス転身後の生活の変化に関する実態調査」結果のポイント
  • 男性は9割、女性は8割がフリーランス転身前に会社員経験
  • フリーランスになった理由は「ライフステージの変化や家族の事情」
  • 生活水準が「変わらない」「悪化した」が過半数

男性は9割、女性は8割がフリーランス転身前に会社員経験 

本調査の回答者は、女性が 60%(120人)、男性が37%(74人)、回答しないが3%(6人)であった。

1_ozqs8a.png (600×490)

フリーランスになる以前に会社員であったかどうか尋ねると、男性の場合は約9割、女性は8割の人が会社員を経験していた。

実績を積んでからフリーランスになると、経験のない人よりも高収入の案件を獲得しやすかったり、案件を発注する側から信用を得やすかったりするため、このような結果になったと考えられる。

20代後半~30代でフリーランスになる場合が多い

2_ejfmsq.png (600×408)

フリーランスとして働き始めた時期を尋ねると、20代後半が20.5%、30代前半が26%、30代後半が19.5%と、比較的若い年代が多数を占めた。

フリーランスの需要には年齢が関わると言われていることや、若い世代に自由な働き方を求める風潮があることから、若いうちにフリーランスとして働き始める人が多いと考えられる。

準備期間は3ヶ月未満が半数

3_vfzbwp.png (600×408)

フリーランスになるための準備期間を尋ねたところ、「3ヶ月未満」が約5割を占めた。

一般的な転職活動とは異なり、フリーランスとして働く際には転身後の案件獲得が重要になってくるため、準備期間の観点ではフリーランスへの転身はハードルがあまり高くないことが指摘できる。

フリーランスになった理由はライフステージの変化や家族の事情

もともと会社員であった人にフリーランスになった理由を尋ねると、「ライフステージの変化や家族の事情」が17.1%、「労働条件への不満」が14.7%、「人間関係への不満」が14.4%という結果になった。

このような結果となった原因として、結婚や子育てなどのライフイベントにより、働き方がある程度縛られるサラリーマンとして働くことが難しくなったケースが考えられる。また、会社内のコミュニティで生きづらさを感じたり、より良い労働条件や柔軟性ある働き方を求めたりといった点も、フリーランス転身の背景に考えられる。

もともと会社員でなかった人でも、転身理由として「ライフステージの変化や家族の事情」が28.2%と、もっとも回答数が多かった。会社員でなかった回答者の女性比率が多かったことを考慮すると、結婚や子育てなどのライフイベントが結果に影響していると考えられる。

週休日数が少ないほど1日の労働時間が多い傾向

5_rh6lt2.png (600×502)

1日あたりの労働時間を週休日数別に見てみると、週休4日の人では「4時間未満」が73.6%という結果になった。

その一方で、週休日数が増えるごとに1日の労働時間は増える傾向にあり、週休0日の層では全体の半分以上が7時間以上働いている結果となった。

プライベートとの両立を図るためにフリーランスになった層では、仕事以外を優先しつつ無理のない働き方を実践する傾向にあることがうかがえる。しかし、フリーランスでは、自身の仕事量と収入が比例するため、多くの案件を受けかなりのハードスケジュールで仕事をこなす人もいるようだ。

自分のために時間を割けていると感じている人が多い

6_bhepzy.png (600×408)

趣味など個人的な活動に時間を割けているかと尋ねたところ、「そこそこ時間を割けている」が5割を占め、「非常に多くの時間を割けている」が約3割を占めた。

柔軟性のある働き方が可能となるフリーランスは、一定以上満足できる程度には自分の好きなことへ時間を割きやすいと言えることが分かった。

健康状態に問題を感じている人が一定数

7_nhcloi.png (600×378)

フリーランスとして働いている中で健康問題が発生したかどうか尋ねると、32.5%の人が「運動不足が発生した」であることが分かった。

成果報酬の側面を持つフリーランスの働き方は、余裕のない生活になってしまう場合があると考えられ、そのような人が運動があまりできないような生活になっていると考えられる。

一方、20.5%が「転身後に健康状態に問題がなくなった、または感じにくくなっている」と回答し、良い生活習慣を送れている人もいることが分かる。この点は、フリーランスの柔軟性のある働き方ができる側面が現れているといえる。

生活水準が「変わらない」「悪化した」が過半数

8_pcwef8.png (600×408)

生活水準が変化したかどうか尋ねると、29.5%が「ほとんど変わらない」、24.5%が「やや悪化した」という結果になった。フリーランスになってからでも生活に変化が感じられない人や、悪くなったと感じている人が全体の過半数を占める。

柔軟性のある働き方ができる一方で、収入増加による生活水準の向上にはハードルがあるようだ。

国の健康保険を利用している人がほとんど

9_sayp6y.png (600×493)

健康保険はどのように管理しているか尋ねたところ、上記のような結果になった。

フリーランスの場合、原則、国民健康保険に加入することが定められているため、「国民健康保険に加入している」が75.0%となり一番多い。

「民間の健康保険に加入している」が13.5%となり、なんらかのリスクに備えて医療保険などの」民間保険に入っている人がいると考えられる。

一定条件を満たせば、務めていた会社の健康保険に任意で継続加入が出来るため、「元雇用主から提供される保険を利用している」が7.5%となり一定数いることが分かる。

国民年金保険や投資で将来の資金を準備

10_xyz8h0.png (600×492)

フリーランスの人に対して、将来の年金についてはどのように準備しているか尋ねたところ、上記のグラフのような結果になった。

国民年金(基礎年金)は20歳以上60歳未満の人が加入する国の年金制度であり、加入期間が短いほど将来もらえる年金が少なくなるシステムとなっている。「国民年金への加入」が66.0%と、大半の人が国民年金で将来の準備している人がいる。

次に多かったのは、「投資や貯蓄で自己準備している」が31.5%となった。近年、株式投資やFX、つみたてNISAなど、資産運用で貯金を増やす人が多くなっている傾向があり、収入の不安定さへの対応と合わせて備えている人が多いとみられる。

収入の多様化や貯金で不安定な収入のリスクを講じている

11_nwpsdc.png (600×492)

フリーランスの不安要素として収入の不安定さが挙げられるが、そのリスク対策について尋ねたところ、約半数が「収入の多様化を図っている」 を選択した。収入源が限られていると、何かが起こった時に急に無給になるリスクもあることから、クライアントを分散している人が多くいると考えられる。

次いで、4割が「定期的な貯金をしている」を選択し、余裕のあるうちに計画的な貯金をすることでリスクに備えているようだ。

貯金額は300万円未満が過半数

12_amu5am.png (600×408)

どのくらい貯金をしているか尋ねてみると、「50万円未満」が24%と最も多く、貯金額300万未満が全体の過半数を占めた。

一方、600万以上貯金がある人は全体の約2割を占め、特に「1000万円以上」が12%いることが分かった。会社員時代の貯金や資金運用などで貯金を増やし、フリーランスでも生活の安定を図ることができている人が一定数いることが分かる。

フリーランスに対してのイメージは様々

13_pbvobh.png (600×378)

フリーランスとしての未来についてどのような展望を持っているか尋ねたところ、「希望を持っているが不安もある」が38.5%とフリーランスの不安要素を少し懸念しつつも、この職業形態をポシティブに捉えている人が一定数いることが分かった。

一方、「不安に思う部分が沢山ある」が29%となり、会社員とは異なり、確定要素の少ない将来を不安に思う人も一定数いることが分かった。

自分自身で高収入や安定性を獲得できるフリーランスの良い点と、不況に影響されやすかったり、確定的な将来を描けないフリーランスの悪い点、どちらも反映されている結果が出た。

9割以上がフリーランスへの転身に満足している

14_hx9pvd.png (600×408)

フリーランスに転身して良かったかどうか尋ねたところ、9割以上の人がフリーランスへ転身して満足していることが分かった。

生活水準の改善が予想していたより難しかった人が一定数いたことや、休みなく働いている人もいるが、大部分の人がフリーランスという職業形態に満足しており、フリーランスに転身したことをポジティブに捉えていることが分かった。

今後の課題・展望

フリーランスに転身後、自分のために時間を割けていると感じている人は多い。このことは、ワークライフバランスを重視する現代において、大きな魅力である。フリーランスは柔軟な働き方が出来る事も考慮すると、今後もフリーランス人口は増加するだろう。

しかし、生活水準が向上した人は決して多くはなかった。フリーランスへの転身を考える際は、転身することで何を得たいのかを明確にし、収入の安定を図る工夫は必須である。

今後、フリーランスという働き方が自己のスキルの発揮とワークライフバランスの実現を図る有効な手段となるよう、支援の加速や制度の構築が求められる。

調査概要

項目

詳細

調査名

フリーランス転身後の生活の変化に関する実態調査

対象者

フリーランスとして働いている方

対象地域

全国

調査方法

アンケート調査

調査期間

2024年5月16日〜2024年5月23日

回答数

200


調査結果の引用・転載について

本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。 引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」のような形で出典を明記し、本記事のリンクを付してください。 引用・転載されたことにより利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。