Web開発技術を認定することの価値とは|LPI-Japan鈴木氏に聞く

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今回は、HTML5プロフェッショナル認定試験などIT関連資格の認定を行うLPI-Japanの理事長を務めておられます、鈴木 敦夫様にインタビューをさせていただきました。

鈴木様

スキルアップ研究所
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本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木様
鈴木様

LPI-Japanの理事長を務めております鈴木です。

よろしくお願いいたします。

スキルアップ研究所
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まず初めに、鈴木様から簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?

鈴木様
鈴木様

以前は、NECグループで基本ソフトウェアの開発やUNIXワークステーションの事業総括、プラットフォームSIや製品事業などに携わっていました。

1998年にLinuxなどのオープンソースが話題になった時、NECのLinux事業の推進を担った関係で、Linuxを使える人材を増やすため、LPI-Japanの活動に参加しました。

当初は理事として主に試験開発を担当し、新規認定試験の開発、品質向上に尽力しておりましたが、5年半ほど前から理事長を務めています。

HTML5プロフェッショナル認定試験の背景と目的

スキルアップ研究所
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HTML5プロフェッショナル認定試験をリリースされた背景を伺いたいです

鈴木様
鈴木様

Webが誕生したのは、今から30数年前になります。それ以来、Webインターフェースをシステム開発で利用する動きが徐々に広がりました。

当時はWebシステムの開発に慣れていない人が多かったこともあってさまざまな問題が発生していたため、きちんとした知識を持った技術者を養成することの必要性を感じていました。また、Web学習の指針などもなかったため、そうしたものを作りたいとも考えていました。

そんな思いもあり、Webマークアップ言語の標準規格としてHTML5が登場したタイミングで、多くの技術者の方々の協力によりWebシステムの開発にかかわる技術者が習得すべき技術範囲を定めて認定試験を開発しました。

HTML5プロフェッショナル認定試験の特徴

スキルアップ研究所
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HTML5プロフェッショナル認定試験を通して、具体的にどんなことを学び、何に活かすことができるのでしょうか?

鈴木様
鈴木様

この認定試験を通して、HTMLやCSSといった静的なコンテンツを作るための言語と、JavaScriptという動的なコンテンツを作るための言語や実装に必要な知識を体系的に学ぶことができます。

エンジニアにとっては、よく使う機能だけでなく体系的に広く機能を知っていることや実装技術が、さまざまな選択肢を考えたり、実際に直面する課題を解決していくうえで必要となるため、この認定の取得を目指して学習することで仕事のパフォーマンスを上げることができるでしょう。

スキルアップ研究所
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静的、動的なコンテンツの作成がそれぞれHTML5プロフェッショナル認定試験のレベル1、レベル2と対応しているわけですね。

鈴木様
鈴木様

はい。また、実践的な技術の習熟もわれわれが重視しているポイントです。

実際に現場では、ある要件を実現しようとした場合、エンジニアはどの技術をどのように使うのかを判断しなければなりません。

HTML5プロフェッショナル認定試験では、そのような現場でのシチュエーションを想定した設問も出題されるのが特徴です。

そのため、本認定を取得することで実践にも活用できるスキルレベルにあるか確認できると考えています。

スキルアップ研究所
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HTML5プロフェッショナル認定試験について、他のWebコンテンツ分野の検定との違いについて教えていただけますか?

鈴木様
鈴木様

我々の認定試験は、技術の仕組みを体系的に理解した上で、手を動かして実践できる技術者を認定することを目的としています。そのために多くの有識者が参加するコミュニティを形成し、実際のITの現場での重要度を考慮して試験範囲について議論・確認を行っています。また試験開発では、試験の品質を高めるために統計的手法を取り入れるなど、先進的な試験運営を実現しています。

また、LPI-Japanでは「オープンテクノロジーのキャリアマップ」を定義しています。運営している他の認定試験と合わせて、エンジニアが段階的に技術を身に付けて成長していくための道標となるものです。このマップの中にHTML5プロフェッショナル認定試験も含まれており、Webシステム開発の前提となる共通的な技術知識や関連する技術も含めて身に付けられるようになっています。

このように、Webシステム開発に必要となる技術をしっかりと体系的に整理して試験の出題範囲やマップに展開しているのは、LPI-Japanだけだと思います。

HTML5プロフェッショナル認定試験の受験者層

スキルアップ研究所
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HTML5プロフェッショナル認定試験の受験ターゲット層はあるのでしょうか?どのような層の受験を想定されていますか?

鈴木様
鈴木様

我々としては、特定の層を受験者層として定めているわけではありませんが、実態としては、Webアプリケーションを開発しているSEや、アプリケーション開発会社などのフロントエンドエンジニアが多く受験しています。

もちろん、サーバーサイドエンジニアやスマホアプリの開発者、Webディレクターも多く含まれています。Web教育に力を入れている教育機関からの需要も大きく、学生の受験者も増えています。

HTML5プロフェッショナル認定試験合格のメリット

スキルアップ研究所
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HTML5プロフェッショナル資格を取得することによるメリットとして、どのようなことを想定されていますか?

鈴木様
鈴木様

さまざまな調査機関のレポートを見ても明らかですが、現在フロントエンドで使われているJavaScriptやHTML、CSSは世界で最も利用者が多い言語です。

そのため、これらはエンジニアであれば常識として知っておいてほしい知識の一つであり、これからエンジニアを目指すなら前提知識として勉強しておいてほしいですね。

取得すればWebシステムの利用者との接点となる重要な部分で活躍できるでしょう。

WEBコンテンツ作成とリスキリングの関係性

スキルアップ研究所
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HTML5プロフェッショナル認定試験は、社会人のリスキリングにどのように関係してくるとお考えですか?

Web開発デザイナーが自らのスキルの証明として使えるといったイメージでしょうか?

鈴木様
鈴木様

「認定」の価値は2つあると思っています。

1つ目は、スキルの証明です。ある特定の技能・知識を持っていることを第三者に対して見える化するということ。

2つ目は、認定が技術者を正しい方向へ導く力を持っていること。

認定試験を通じて自分の知識の足りない部分に気が付くことができ、それを補うために新たな知識を習得することで、技術者としての実力をさらに高めることができます。

HTML5プロフェッショナル認定の取得により、最もよく使われるWeb技術について確かな技術力を証明できることの価値はもちろんですが、重要なのはこの認定の取得を通して得られる実践的で体系的な知識の習得にあり、活躍するための大きな力を得られる点にあります。

スキルアップ研究所
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エンジニアではないサラリーマンのスキルアップとしての役割は果たすとお考えですか?

鈴木様
鈴木様

基本的にエンジニアを目指している方を想定していますが、あらゆる業務にITが使われる時代ですから、さまざまな現場でエンジニア以外の方がITを活用できる力を身につけることはとても価値があると思います。

特に、Webシステムのユーザーインターフェースを作る部分を構成する技術要素について理解していれば、エンジニアとのコミュニケーションの円滑化や現場目線でかつ現実的な業務改善や、ITを活用した新たなサービスの思い付きに繋がるかもしれません。

今後のHTML5プロフェッショナル認定試験の展望は?

スキルアップ研究所
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最後に、今後のHTML5プロフェッショナル認定試験の展望などについてお聞かせいただけますか?

鈴木様
鈴木様

Webシステムの開発ニーズは今後も拡大を続けることはまちがいありません。HTML5プロフェッショナル認定試験は、時代の変化に合わせて、適宜、改訂を行っていきます。

現在検討しているのが名称の変更です。標準規格としてのHTML5がHTMLスタンダードという名称に変わったことが背景にあります。技術そのものは変わっていないので認定試験の出題範囲や設問内容が変わることはありませんが、誤解を招きやすいので名称変更は必要だろうと考えています。

また、従来は静的コンテンツを扱う言語と位置づけられていたCSSが、現在は動的コンテンツも扱うことができるようになったこともあり、これまでの静的/動的という分類が適切かどうかという議論を試験開発コミュニティでしています。

技術を体系化して試験に反映していくという原則は変わりませんが、最新技術の取り込みも継続的に行っていきます。

スキルアップ研究所
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本日は貴重なお話をいただきまして、誠にありがとうございました。