基礎知識としてのメンタルケアリテラシーの重要性とは|(一財)日本こころ財団に聞く
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今回は、文部科学省後援こころ検定を主催している一般財団法人日本こころ財団の理事長を務めておられます、別府 武彦様にインタビューをさせていただきました。
本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。

一般財団法人日本こころ財団の理事⻑を務めております、別府です。よろしくお願いいたします。
文部科学省後援こころ検定資格設立の背景と目的
文部科学省後援こころ検定設立の背景についてお聞かせいただけますか?

この検定資格は心理学の能力を測るためのもので、多くの国⺠の方に基礎的なこころのリテラシーの知識、能力を備える修得機会を増やすことを目的としています。
「多くの国民の方に」という部分について、詳しくお聞かせいただけますか?

現状、心理学は心理カウンセラーを目指す方が学ぶ学問として多くの人に認識されています。
しかし、メンタルケアを行う人の養成が主流となっている状況に対し当財団では、心理学は全国民の必須リテラシーと考えています。
自らのこころを認識し見つめることで自分自身のメンタルの状況が把握でき、高ストレス状態や精神疾患などを予防できると考えています。
このように当財団は、いつでも、どこでも心理学を学べる社会を目指しています。
「こころのリテラシー」という部分について、もう少し詳しくお聞かせください。

当財団では、文部科学省後援こころ検定の知識・技能を、カウンセラーを目指す方だけでなくすべての人に身につけていただける基礎的なものとして「こころのリテラシー」と呼んでいます。
こうした基礎的な知識を持っていることで、自分の心への予防措置を取れることに加え、共感力を高め、相手の気持ちも分かるようになると考えています。
文部科学省後援こころ検定の特徴
こころ検定の対策を通じて具体的に学べることというのは、どのようなレベルのものなのでしょうか?

心理学には大きく分けると「基礎心理学」と「応用心理学」があります。
文部科学省後援こころ検定においては「基礎心理学」は3級と4級、「応用心理学」は2級と準1級、1級に当たり、それぞれの知識と技能を学びます。
したがって、当検定の対策を通じて入門レベルから高度な専門的レベルまで学ぶことができます。
心理カウンセラーだけが心理学を学ぶ前提ではないということですね。
全国民が一般知識としてこころのリテラシーの知識、技能を学ぶため、広く門戸が開かれているということですね。
心理分野の他資格・検定との違いなどはございますでしょうか?

「心理学」という意味では学ぶ内容にそこまで違いはありません。
ただ、今までにも申しましたが、老若男女誰もがこころのリテラシーを学べる検定資格となっているのはまず珍しいと思います。
文部科学省後援を受けている心理系資格や検定は他に無く、皆様、よくご存じの英検、漢検、数検、色彩検定、世界遺産検定などと同じ文部科学省後援検定資格ですので社会での信頼性は高いと言えます。
検定試験ですが、上級の級(2級、1級)を取得する方で心理支援の立場を考えている方は、「日本学術会議協力学術研究団体 メンタルケア学術学会」へ申請することにより、心理支援の専門家として、2級合格者は「メンタルケア心理士R」、1級合格者は「メンタルケア心理専門士R」の称号を受けることが出来ます。
文部科学省後援こころ検定受検者として想定されているターゲットなどはございますでしょうか?

文部科学省後援こころ検定のターゲットは全国民です。
こころのリテラシーとして、誰もが心理学の知識・技能を身につけ、様々なステージでそれを活用することでQOLを高めていくことができると考えています。
実際、高校生も含めた若い方から退職された年配の方まで受検いただいています。
これまでの資格取得者層の変遷などございましたら伺いたいです。

以前は、心理職につきたいという方が多かったのですが、今では「現在の仕事や生活で役立てたい」という方が大半になりました。
実際、現在では9割ほどが社会人で、プラスアルファのスキルとして学ばれています。
医療・福祉関係者や一般企業の特に人事部の方など、人と接する機会が多い方が、コミュニケーションスキルの向上のために学ばれているという印象です。
文部科学省後援こころ検定取得のメリット
文部科学省後援こころ検定を受検することで得られるメリットについて、貴財団はどのようなものを想定されていらっしゃいますか?

心理カウンセラーとして基礎的な心理的支援を行えることはもちろん、自らのこころのリテラシーを学ぶことでカウンセリングを受ける側の状況が理解できるようになると考えています。
それによって、よりクライアントに寄り添うことのできる心理カウンセラーになれることは大きなメリットだと思っています。
こころ検定とリスキリングの関係性について
こころ検定と社会人のリスキリングはどのように関連してくるとお考えでしょうか?

心理学は、リスキリングの対象として学ぶこと以外でも、付帯知識として必須だと考えています。
文部科学省後援こころ検定のような心理学の知見は、コミュニケーションのスキルを高めることができ、他の分野でのリスキリングの効果をより高める基礎リテラシーであると捉えています。
多くの仕事でクライアントとのコミュニケーションは非常に重要となりますよね。
相手の気持ちになって考えることは、全ての仕事で役立つ技能だということですね。

おっしゃる通りです。
ですからリスキリングの際には、全ての仕事に付帯的な効果を発揮する知識・技能として文部科学省後援こころ検定を受検していただければと思います。
今後の貴財団・検定の展望
最後に、貴財団の今後の展望などについて伺いたいです。
資格のさらなる普及など、目指されているところをお聞きしたいです。

もちろん、一般教養として「こころのリテラシー」を学べる環境を作り、支援する側を増やすことは大きな社会的貢献だと考えています。
ただ当財団としては、全国⺠が「こころのリテラシー」として自らの心を理解できる基礎的な能力を持つことを可能にし、それによって最終的には国民全体のQOLを高めていくことを目標としています。
こころを理解する基礎的なリテラシーを持つことで、わだかまりを解消し、精神疾患などを未然に予防することができると考えています。
また、相手の心の状態を理解することでコミュニケーションが円滑になり、良好な人間関係を築いていけるような状態を目指しています。
「こころのリテラシー」を学んだ全員の、ひいては社会全体のプラスになるように、といったイメージでしょうか。

もはや心理学が全員にとって必須のスキルになるような状態を作りたいという思いがあります。
実際、文部科学省などにも訴えながら、子供の頃からできるだけ多くの人が心理学を学べる状況を作るように働きかけなども行なっています。
本日は興味深いお話をありがとうございました。