近年、終身雇用制度が崩れつつあり、働き方改革も進んでいる。このような状況の中で、本業以外でもスキルを磨き、複数の収入源を確保するために副業を始める人が増加している。
特に注目すべきは、副業には本業では得られない経験やスキルを習得できるという側面だ。しかし、将来のキャリアアップや独立への準備として、副業を通じたスキルアップを目指す人がどれほどいるのかは明らかになっていない。
そこで今回、副業経験者を対象に、スキルアップを目的とした副業の実態と、その効果について調査を行った。
- 副業経験者のうち22.5%がスキルアップを目的とした副業の経験あり
- 副業で得たスキルは独立のため・フリーランスとして活用したいと考える人が多い
- 大半の人が収入面の理由で副業を始めている
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | スキルアップを目的とした副業に関する実態調査 |
対象者 | 副業の経験がある方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット |
調査期間 | 2024年11月6日〜11月12日 |
回答数 | 200(男性104、女性91、無回答5) |
スキルアップを目的とした副業の普及率と実態
副業経験者のうち、どれほどの人がスキルアップを目的とした副業に取り組んでいて、どのような内容なのか、またどのような効果があるのかについて調査した。
副業経験者のうち22.5%がスキルアップを目的とした副業の経験あり
副業経験がある200人を対象に「スキルアップすることを目的に副業をした経験がありますか?」という質問を行うと、「はい」と回答した人は22.5%であった。
大半の副業経験者がスキルアップを目的とした副業の経験がなく、副業をスキルアップの手段とする意識は普及していないと言える。
スキルアップを目的とした副業で最も多いのはWEB・動画制作
スキルアップを目的とした副業の経験がある人45人を対象に「”スキルアップのために”、具体的にどのような副業を行いましたか?」という質問を行うと、「WEB・動画制作」と回答した人が51.1%で最も多かった。
WEB・動画制作は、パソコン一台で始めることができ、初期投資がほとんど不要であるため、副業として取り組みやすいことが理由としてあげられる。
また、WEB・動画制作は専門的なスキルが不可欠であるため、スキルの習得を実感しやすいことも要因として考えられる。最近ではWEB・動画制作の需要が高まっており、習得する価値のあるスキルとなっている。
また、「ネットビジネス」や「サービス業(接客・販売)」を選んだ人も一定数おり、スキルアップを目的とした副業は多様になっていることが分かる。
スキルアップを目的とした副業では様々な効果が得られる
副業の経験がある人を対象に「スキルアップのために副業をしたことで具体的にどのような効果が得られましたか?」という質問を行うと、グラフのような結果になった。
「その他の効果があった」以外の選択肢の中だと、「本業で新しい仕事ができるようになった」が28.9%で最も多いことが分かる。
回答が分散しており、「その他の効果があった」が31.1%回答されていることから、スキルアップを目的とした副業では様々な効果が得られることが分かる。
しかし「転職できた」と回答した人は45人中わずか1人であることから、スキルアップを目的とした副業を通して、実際に転職できた人は非常に少ないと言える。スキルアップを目的とした副業は、転職には繋がりづらい可能性が指摘できる。
副業でのスキルアップの目的や理由について調査
スキルアップを目的とした副業に取り組む目的や理由について調査した。
新しい分野へのチャレンジとして副業に取り組んでいる人が多い
スキルアップを目的とした副業の経験がある人を対象に「副業でスキルアップをしようと思った理由を教えてください。」という質問を行うと、「本業とは異なる分野のスキルを伸ばしたかったから」と回答した人が51.1%で最も多かった。
この結果から、本業に関わるスキルの向上というよりは、新しい分野へのチャレンジとして副業に取り組んでいる人が多いことが分かる。
また、24.4%の人が「本業はスキルアップが難しい環境だったから」と回答しており、一定の人が本業のスキルアップの環境として不十分なために副業でスキルアップを試みていることが分かる。
副業で得たスキルは独立のため・フリーランスとして活用したいと考える人が多い
スキルアップを目的とした副業の経験がある人を対象に「副業で培ったスキルをどのような目的で活かしたいと考えていました(います)か?」という質問を行うと、「独立・フリーランスとして活かすため」と回答した人が42.2%で最も多かった。
この結果から、副業で得たスキルは独立やフリーランスとしてのキャリア形成に向けた準備として活用したいと考える人が多いことが分かる。
また「独立・フリーランスとして活かすため」、「本業で活かすため」と比較すると少ないが、「転職して転職先で活かすため」という回答も26.7%で、一定の人が転職を想定して取り組んでいることが分かる。
しかし、前述の通り、実際に転職につながった例は少ないため、スキルアップを目的とした副業の効果に対する認識にズレがあることが指摘できる。
転職の意識とスキルアップを目的とした副業の取り組み率に密接な関係はない
「将来的に今働いている企業から転職する意思はありますか?」という質問を行うと、スキルアップを目的とした副業の経験がある人の方が、経験がない人よりも「ある」と回答した割合がやや多かった。
今回の結果では顕著な相関は見られなかったものの、転職に対する意識の高まりから、転職のためにスキルアップを目的とした副業をするケースや、副業によるスキルアップの結果自身の市場価値の高まりを感じ、転職が視野に入ってくるケースが考えられる。
本業の職場での人材育成の意識が低さが副業でスキルアップを図る要因に
スキルアップを目的とした副業の経験がある人を対象に「本業の職場では人材育成の意識が高いと思いますか?」という質問を行うと、「高いと思う」と回答した人はわずか15.6%で、「低いと思う」と回答した人が40%であった。
この結果から、本業の職場で人材育成に対する意識が低い場合が多いことが分かる。本業でスキルアップが難しいことが、副業をスキルアップの場として選ぶ要因の一つとして推測できる。
「本業でのスキルアップ支援制度の有無」と「スキルアップを目的とした副業の取り組み率」にはほぼ相関なし
「本業の職場では従業員のスキルアップを支援する制度が整っていますか?」という質問に対しては、副業の経験の有無に関係なく、8割以上の人が本業の職場に従業員のスキルアップを支援する制度が整っていないと回答した。
制度面の観点からは、本業の職場でスキルアップの制度が整っていないからといって、特段副業にスキルアップを求めるようになるという傾向はないようだ。
スキルアップを目的とした副業をしていない人々の実態について調査
大半の人が収入面の理由で副業を始めている
副業の経験がある人を対象に「なぜ副業に取り組んだ・取り組んでいるのですか?」という質問を行うと、「収入を増やすため」と回答した人が87%で最も多かった。
また4割以上の人が「本業以外にも収入源が欲しいから」と回答しており、収入アップや収入の維持が副業をする圧倒的な理由となっていることが分かる。つまり、副業は「収入のため」というイメージが強いと言える。表を見てもわかるように、スキルアップを目的に副業に取り組んでいる人は少ないのが現状である。
7割以上の人がスキルアップをしてみたいと考えている
スキルアップを目的とした副業の経験がない人を対象に「今スキルアップをしてみたいと思いますか?」という質問を行うと、7割以上の人が「はい」と回答した。このことからスキルアップしたいと考えている人は多いと言える。
副業は収入のためのものというイメージがあるが、副業はスキルアップにつながると捉えられるようになれば、スキルアップを目的とした副業に取り組む人は大きく増える可能性が指摘できる。
スキルアップを目的とした副業の今後の課題・展望
今回の調査を通して、スキルアップを目的とした副業に取り組んでいる人はまだまだ少ないことが判明した。
一般的には副業といえば収入アップや第2の収入源としてのイメージが強いため、スキルアップという視点で副業を捉えている人は少ないのが現状だ。スキルアップには興味がある人が多いが、どのような副業がそれに適しているかを理解していない場合も少なくない。
こうした中で、スキルアップを目的とした副業への関心が集まり、副業=収入という固定観念が薄れていけば、スキルアップに意欲的な人々がより積極的に取り組むようになると期待される。
これにより、副業が単なる収入源にとどまらず、キャリア形成や自己成長のための有効な手段として認識されるようになり、今後の働き方の多様化に貢献することが予想される。
調査結果の引用・転載について
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