マーケティング検定とマーケティング業界のリスキリング|日本マーケティング協会に聞く
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今回はマーケティング検定を運営されている公益社団法人日本マーケティング協会の渡邊様にインタビューを行いました。
マーケティング検定の背景と目的
自己紹介
本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

当協会でマーケティング検定関連の業務全般を担当しております渡邊と申します。よろしくお願いします。
まず最初に、マーケティング検定を立ち上げた目的について簡単にお話いただけますでしょうか。

日本のマーケターのマーケティング力を向上させるために、マーケティング知識を標準化していくことがマーケティング検定の最大の目的です。もともと当協会は、日本の産業発展の礎としてマーケティングの概念を普及させるべく設立された組織です。そのパーパスに向けた一つの柱として、8年ほど前に検定事業を立ち上げました。
一言に「マーケティング」といっても、実際には捉え方は人それぞれです。単純に広告のことだと思っている人もいれば、いわゆるマーケティングリサーチのことだと思っている人もいますし、ブランドマネジメントの一環だと考えている人もいます。しかし、これらの業務には共通した体系的な方法論があり、広義のマーケティングとしてまとめて捉えることが重要です。
マーケティング検定を受験していただくと、マーケティングと呼ばれる領域が実は大変広いということと、それらに通底する発想があること、そしてその視点から各領域においてたくさんの効果的な考え方が生まれてきたことを実感できると思います。
マーケティング検定の特徴
マーケティング検定を通して具体的にどのようなことを学べるのでしょうか?

マーケティング検定では、マーケティングに関する諸概念を適切に理解しているかどうかが問われます。ですので、検定に合格するレベルまで勉強することで、実際の業務においてそういった概念を応用する力が養われると考えています。
検定は3級、2級、1級とレベル別に分かれています。基礎レベルの3級では、マーケティングの基礎知識を一通り身につけているかが測定できます。2級になると、試験範囲も大きく広がり、より専門的な領域も入ってきますので、合格できればマーケティングについてはだいたい知っているというレベルになります。1級は、単に知識を問うだけでなく、知識をもとにして自らで考える力を問う形式になっており、より実践的な能力が必要となります。
具体的な試験範囲については、当協会のWebサイトをご覧いただけますと幸いです。
級ごとに学べる範囲が違うとのことですが、受験ターゲット層はどのように設定されているのでしょうか?

3級は、学生から新入社員、若手を主なターゲットとしています。基礎知識があることで、初めての業務の理解もスムーズに進むはずです。あるいは、別部署からマーケティング部へ異動することになった方が、まず学んでおく内容としても適切です。
2級は、マーケティング業務の経験をある程度積み、広い視点を持って業務を進めることが求められる中堅層向けです。自分がやってきた領域の知識だけでは合格できない試験範囲になっていますので、自らの視野を広げるのに適しています。
1級になると、企業のマーケティングを推進する立場の方を対象としています。さまざまなマーケティング課題に対して、理論や過去の知見を適切に参照して組み合わせて対処していく、そういった能力が合格を通じて証明できます。
マーケティング・ビジネス検定や販売士検定など他のマーケティング分野の検定と本検定との違いについてはどうお考えですか?

マーケティング検定の最大の特徴は、マーケティング領域のすべてを網羅しているということです。
特定領域の実務に即した専門的な能力を測定する検定は多くありますがマーケティング検定はむしろ広い領域を対象とすることで、最終的には企業のマーケティング全体に目配せできる人材の育成につなげられればと思っています。
マーケティング検定合格のメリットとは
マーケティング検定を取得することのメリットはどのようなところにあるとお考えですか?

マーケティング能力を客観的に証明できることが最大のメリットだと思います。また自身の実力を外部に発信するだけでなく、受験者自身も自分のレベルを把握でき、学習を進めるための指針になります。
さらに、1、2級の合格者を対象に、資格保持を証明するオープンバッジを発行しています。名刺に掲載してアピールに利用されている方も多いです。資格者の交流会などのイベントも不定期で開催しており、それを通じてネットワークを築けることも一つのメリットです。
具体的にはどのようなキャリアにつなげることができるのでしょうか?

昇進・昇格の要件として採用している企業や、新卒採用において合格者を優遇している企業もありますし、検定合格を単位認定として利用している大学もあります。
大学生から新卒、中堅層まで、あらゆる段階のキャリアアップにつながる資格です。
マーケティング検定とリスキリングの関係性
マーケティング検定とリスキリングの関係性についてはどのようにお考えですか?

キャリアの途中でマーケティング部に異動する方も少なからずいらっしゃると思います。そのような場合のリスキリングに、まさに2級、3級が役立つのではないかと考えています。
まず基礎知識を得たい人は3級、管理者レベルでのマーケティング知識が必要な人は2級を目指すとよいでしょう。
級ごとにレベルが分けられているのもあり、途中からマーケティングを学ばないといけない人にとっても有効な検定なのですね。網羅的に学べることもとても大事な視点に感じます。
今後のマーケティング検定の展望は?
マーケティング協会の今後の展望について教えてください。

日本社会へのさらなる検定の普及を目指しています。マーケティングはあらゆるビジネスの基礎になる考え方ですので、本当は世界中のビジネスパーソンに受けてもらえる検定にしたいくらいです。
現状は、検定のことを知らない方もまだまだいらっしゃいますので、まずは日本の若手~中堅ビジネスパーソンを中心に認知を広めてまいります。学生にもぜひ3級に挑戦してほしいですね。
また、「社員に対するマーケティングの教育方法がわからない」という悩みを抱える企業に向けて、団体受験しやすいパッケージの提供なども進めていく方針です。
企業として導入いただくことで、社員それぞれが自分の知識の穴などを把握する機会になりますし、部署を超えてメンバーがマーケティング知識を共有することで、円滑なコミュニケーションと事業の発展につながっていくと考えています。
ビジネス全般において必要となるマーケティング能力が、この検定を通して社会全体で底上げされていくことを私も望みます。
本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。