リスキリング レポート

年代別のキャリアアップにおけるリスキリングの実態とその課題に関する調査

更新日:

調査: スキルアップ研究所

リスキリングは、個人のキャリア形成だけでなく、社会全体にも幅広い効果をもたらす。

本調査では、20~59歳の働く人々を対象に、リスキリングとキャリアアップに関する意識や行動の実態を調査した。

特に年代別の差異に注目し、それぞれが直面する課題や特徴を明らかにすることで、リスキリングを効果的に活用するための指針を提供することを目的としている。

「年代別のキャリアアップにおけるリスキリングの実態とその課題に関する調査」結果のポイント
  • リスキリングに取り組んでいるのは20代で40%、50代以上で15%
  • 8割の人が同世代のキャリアアップに関心
  • リスキリングの課題は若年層は費用、中高年層は時間が多数

【調査概要】

項目

詳細

調査名

年代別のキャリアアップにおけるリスキリングの実態とその課題に関する調査

対象者

20代~50代の働く人々

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査機関

2025年1月10日〜2025年1月17日

回答数

300

【回答者年代内訳】

年代

人数

割合

20代

63

21.0%

30代

111

37.0%

40代

79

26.3%

50代

47

15.7%

合計

300

100.0%

リスキリングがキャリアアップの鍵となる理由

リスキリングが必要とされる背景と課題

現代の働き方は、コロナ禍を契機にオンライン業務やデジタル技術が急速に進化したことで大きな転換期を迎えている。

本調査では、全体の91%がリスキリングの必要性を感じていることが明らかになり、多くの人がスキル不足を補完する手段としてリスキリングを捉えていることが示された。

一方で、「どのスキルを学ぶべきかわからない」「時間や費用の確保が難しい」といった具体的な課題も挙がっており、行動に移せていない層が約6割に達していることがわかった。

リスキリングの効果は個人と社会の双方に波及する

リスキリングは、個人のキャリア形成だけでなく、社会全体にも幅広い効果をもたらす。個人面では、昇進・昇給、副業による収入増加、自己成長などの成果が得られることが調査で明らかになった。

特に20代では「昇進・昇給」を目的とする人が54%、50代では「自己成長」が51%と世代ごとの特徴が浮き彫りになった。

社会的な影響としては、労働市場の活性化や地域経済の発展、新たなビジネスの創出が期待されている。企業や自治体にとっても、リスキリングを支援することで、人材育成と競争力向上を実現する好機となるだろう。

年代別に見るキャリア意識とリスキリングの必要性

20代は行動力が高く、50代はスキル不足が課題に

20代は行動力が高く、50代はスキル不足が課題に

調査では、20代の36.6%が「キャリアアップを目指して積極的に行動している」と回答しており、キャリア初期段階での行動力の高さが際立っている。

一方で、40代では「キャリアを意識しているが行動に移せていない」という層が20%に達し、新しいスキル習得の必要性を感じつつも、行動を起こす障壁が大きいことが示唆できる。

また、50代以上ではキャリアに意識がない人と行動している人も両者とも他の年代と比べ多く、二極化する結果となった。

リスキリングの必要性を感じる割合は年代が上がるにつれ低下

リスキリングの必需性は中高年層にかけて減少傾向に

リスキリングの必要性を感じるかという問いに対して、20代では52.4%が「リスキリングが非常に必要」と答えた。一方で50代では19.1%と、必要性を感じる人の割合がわずか5人に1人に留まっている。

若年層は現状のスキル不足を強く感じている一方、中高年層では「現状のスキルである程度対応可能」と考えていることがうかがえる。

リスキリングの必需性は中高年層にかけて減少傾向に

また、実際に学んでいるかどうかを問う設問でも同様の傾向が見られ、20代は「学んでいる」割合が他の年代よりも高く、行動に移す意識が顕著であると言える。

一方で30代以降は「学びたいがまだ行動に移していない」割合が増加し、特に40代以降では「特に学ぶ予定はない」という回答が増えている。

この結果から、年齢が上がるにつれて「学びへの意欲」が「実際の行動」に結びつきにくくなる傾向があると言える。

リスキリングの目的は副業やフリーランスへの期待から

リスキリングの目的は副業やフリーランスへの期待から

新しいスキルを学ぶ目的に関しては、「副業やフリーランスとして収入を増やしたい」と答えた割合が全世代で最も高い。

リスキリングの目的は副業やフリーランスへの期待からリスキリングの目的は副業やフリーランスへの期待から

一方で年代別でみると20代では昇進・昇給を目的とする割合が最も高く、キャリア初期段階でのスキル活用が期待されていることがわかる。

これに対し、40代以降では自己成長を目的とする層が増加しており、リスキリングがキャリアだけでなく、精神的な満足感にも繋がっていると考えられる。

リスキリングの障壁とその克服方法

年代別の障壁~若年層は費用、中高年層は時間が課題

年代別の障壁~若年層は費用、中高年層は時間が課題

新しいスキルを学ぶ際の主な障壁を尋ねたところ、「時間の確保が難しい」が191人で最多となった。また、「費用が高い」が133人と続いた。

年代別の障壁~若年層は費用、中高年層は時間が課題

また、年代別で見ると「費用が高い」を1番多く選択したのは30代(51%)であった。

これは、30代が家計への影響を強く懸念する傾向にあることを示唆している。

一方で、20代では27%と他の年代より低い結果が出た。このことから、若年層は学びに投資する価値を認識している、あるいは、企業のサポート(研修費用負担など)を積極的に利用しているといった傾向がうかがえる。

年代別の障壁~若年層は費用、中高年層は時間が課題

続いて時間に焦点を当てると、全体的に「時間の確保が難しい」と感じる割合が高いが、特に30代(72%)が最も高い結果が出た。

30代は仕事や家庭での責任が強まる時期であり、20代に比べて仕事や家族のために割く時間が増えたことを強く感じる傾向にあると言える。

40代、50代になるとやや低下するが、依然として高い割合(50%台)を維持しており、時間の問題が幅広い年代における重要な障壁であることが分かる。

年代別でリスキリングの成果は異なる

年代別で異なるリスキリングの成果

別設問で「現在リスキリングをしている」「過去にしていたことがある」と回答した95人に、リスキリングを行ったことで実現した成果について質問した。

全体としては「特に成果を感じていない」を半数近くの人が選んだ一方、「自己成長や自己肯定感が高まった」や「昇進や昇給を実現した」に回答が集まった。

リスキリングを行った成果として、20代では75%が「昇進や昇給」と回答し、キャリア初期での行動が直接的な成果に結びつきやすいことがわかった。

一方で、50代では「自己成長」が87.5%を占めており、新しいキャリアモデルの構築や精神的な充実を重視しているようである。

この結果から、リスキリングが単なるスキルアップではなく、年代ごとに異なる価値観や目的に応じて成果を提供する手段であることがわかった。

リスキリングの影響は年齢とともに薄れる

働きながら学べる環境がキャリアアップの鍵

リスキリングの有無による影響について質問したところ、年齢とともに薄れ、キャリアへの影響に対する認識も変化していくことがわかった。

若い世代(20~29歳)はリスキリングをしないことによる影響として「昇進・昇給の機会を逃す」(49.1%)を最も懸念しているのに対し、年齢が上がるにつれて「転職市場での競争力低下」や「現職でのパフォーマンス停滞」を懸念する割合が増える結果となった。

特に50~59歳では「現職でのパフォーマンスが停滞する」(36.2%)が最多となり、同時に「特に影響はないと思う」という回答(31.9%)も他の世代と比べて高くなっている。

キャリアアップにおける職場環境の重要性

年代別で異なる「キャリアアップの優先ポイント」

年代別で異なる「キャリアアップの優先ポイント」
キャリアアップの優先ポイントについては、20代が「昇進・昇給のチャンス」を最優先に挙げる割合が他の年代よりも高く、キャリアの初期段階において成長の機会を求める傾向が顕著である。

一方、40代~50代は「ワークライフバランス」を最優先とし、家庭や健康との両立を重視していることがわかる。

また、30代では「スキルアップや新しい挑戦」を挙げる割合が相対的に高く、キャリア形成における転機を迎えることがうかがえる。

キャリアアップ実現のための行動~リスキリングが鍵

キャリアアップ実現のための行動~リスキリングが鍵

キャリアアップ実現のための行動~リスキリングが鍵

キャリアアップをするための行動については、20代では「現職での昇進」を目指す人が最も多く、職場内でのキャリアアップを主眼に置いている。

キャリアアップ実現のための行動~リスキリングが鍵

一方、30代以降は「副業やフリーランス」を選ぶ割合が増加し、複数の収入源を確保する動きが見受けられる。

さらに50代では「自己啓発やメンタルヘルス向上」を重視する割合が高く、キャリア後半における心身のバランスを重視していることがわかった。

8割の人が同世代のキャリアアップに関心

同世代の行動への関心がキャリア形成を促進する

同世代のキャリアアップに対する意識調査については、年代が上がるほど「同世代の行動に対する関心」が低下する傾向が明らかとなった。

20代では「興味がある」が47.5%と最も高く、他者の成功事例や行動からヒントを得ようとする意欲があるようだ。

一方、50代では「興味がある」が14.9%に留まり、「あまり興味がない」(23.4%)と回答する割合が他の年代と比べて高くなっている。

さらに、全体として「どちらかといえば興味がある」という回答が全年代で約40~60%を占めており、軽い関心を持つ層が多数派であることがわかる。

今後の課題・展望

調査結果から、年代ごとにリスキリングへの意識や課題が異なることが明らかになった。20代は「費用」、30代以降は「時間の確保」が主な障壁となっており、それぞれに適した支援が必要である。

若年層には、無料または低価格の学習リソースや補助金制度を整備することで、リスキリングへのハードルを下げることが重要である。

一方、中高年層には、家庭や仕事との両立を可能にする柔軟な学習環境や短時間で学べるコンテンツが求められている。特に40代以降では「自己成長」を重視する割合が高いため、キャリア後半の新たな価値観に対応する支援策が効果的である。

また、全世代に共通して、「どのスキルを学ぶべきかわからない」という課題が挙げられており、成功事例やスキル需要の明確化がリスキリングを推進する鍵となる。

同世代の行動や成功事例をSNSやオンラインセミナーで共有する取り組みは、行動の後押しに繋がると考えられる。

調査結果の引用・転載について

本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。 引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」のような形で出典を明記し、本記事のリンクを付してください。 引用・転載されたことにより利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。