リスキリングの意義とキャリアコンサルティングの果たす役割|JCDA佐々木氏に聞く
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今回は、国家資格であるキャリアコンサルタント資格の試験運営をする日本キャリア開発協会(JCDA)の理事を務めておられます、佐々木好様にインタビューをさせていただきました。
本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。
日本キャリア開発協会の理事を務めております、佐々木好です。よろしくお願いいたします。
まず初めに、佐々木様の方から簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?
大学を卒業後、外資系企業の人事部(主に採用・研修・組織開発)、国際機関の人事・事務局を経て自分でもキャリアデベロップメントアドバイザー(CDA)の資格を取得し、2012年からNPO法人でありますJCDAに入職しました。
キャリア開発について学習する講座としてCDA養成講座を紹介されまして、それがこの分野に興味を持ったきっかけでした。
キャリアコンサルタント試験の背景と目的
キャリアコンサルタント試験の目的についてお聞かせいただけますか?
まず、国家資格になる以前ですが、複数の団体がキャリア支援の民間資格を発行していました。
目的としては、少子高齢化による職業人生の長期化ならびに変化する社会や環境の中で、キャリアを支援する専門家を育成する必要性に応えるものでした。
キャリアコンサルタントは2016年に国家資格になったと拝見しました。その経緯を伺いたいです。
民間資格の時代はそれぞれの団体が異なる基準やカリキュラムで運営していたため、資格の水準や信頼性を高めるために法律的にも統一を進めようということで、2016年に職業能力開発促進法でキャリアコンサルタントが国家資格として定められました。
国家資格となったことで、それまで以上に社会インフラとしての力も発揮することができるようになったと考えています。
キャリアコンサルタント試験の特徴
キャリアコンサルタント試験は、労働者の職業選択や職業能力の開発・向上に関する助言や指導を行うキャリアコンサルタントとなる能力を、学科試験と実技試験の両方を通じて測る試験だと認識しています。
JCDA様の方で、キャリアコンサルタント試験の勉強や試験対策といった部分もなさっているんでしょうか?
基本的にキャリアコンサルタント資格に関しまして、JCDAは登録試験機関ですので試験対策を行うことはできません。
そのため、キャリアコンサルタントを目指す方の養成機関は他にあり、役割を分離している形です。
資格取得者に対しては、何かその後のアプローチはされるんでしょうか?
キャリアコンサルタント資格は、キャリアコンサルタントの質の担保のために、5年に一度更新を行なっています。
そこで資格の登録者を対象に、当協会では更新のための更新講習を行なっています。
キャリアコンサルタント試験のターゲット層などはございますでしょうか?
当協会として特にターゲット層を絞って考えているということはございません。
ただ、最近の受験者の方の傾向としては、企業で人事を担当していて人材育成やキャリア面談・就労支援に関わっている方が多い印象です。こうした方々は経験を通じて培われたご自身の専門能力を証明するために受けられているようです。
他にも、FPや社労士、産業医など、他の対人支援職の方々がキャリアに関する知見を深めるために受験されるなど、応用範囲が広い資格だと言えると思います。
キャリアの視点を持って、専門性をブラッシュアップさせていくといった意味で受験されている方も多いようです。
キャリアコンサルタントとリスキリングの関係性
キャリアコンサルタント試験とリスキリングはどのように関係してくるとお考えでしょうか?
キャリアコンサルタントとリスキリングの関係には2つの側面があると考えています。
一つ目が、キャリアコンサルタント資格の取得自体がリスキリングになっている場合です。
キャリアコンサルタントの養成講座では自分の人生を振り返り、自分自身のキャリアの棚卸し、自分の興味や価値観について深く考えることができます。その意味でキャリアコンサルタント試験への勉強を通じて自己理解を深めることもできるため、良いリスキリングだと思います。
二つ目が、キャリアコンサルタントとして、他の人のリスキリングを支援する場合です。
厚生労働省も学び・学び直しの重要性について促進ガイドラインを出していますし、キャリアコンサルタントへの期待もあると考えています。そうした視点から見ても、リスキリングはキャリアコンサルタントにとって非常に重要ですし、注視して支援していくべきところだと思っています。
後者について、もう少し伺ってもよろしいですか?
キャリアコンサルタント自体、もともと職業能力開発促進法に基づいていますし、働く人の能力開発支援のプロです。
そのため、リスキリングをしようと思っている人が現在持っているスキルと理想の差分やギャップを考えて、今後何を学ぶ必要があるのか、どのような計画・道筋で学習やトレーニングをするのかという部分の支援は得意としているところです。
実際の学習計画支援以外にも、モチベーションの維持なども含めてリスキリングをしたい人に伴走していく役割に適していると考えています。
ただ、学ぶのには労力も時間もかかりますし、忙しい日々の中で「学び」を自分の生活においてどのように位置付けるのかも含めて、リスキリングについてはキャリアコンサルタントによる支援や伴走が大切だと感じています。
厚生労働省も人口減少に端を発する労働環境変化を根拠にリスキリングの重要性を表明していますよね。
ガイドラインによると、リスキリングの前後でのキャリアコンサルティングによる方向性の明確化が効果を高めるということですね!(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202411_002.html)
今後の展望
最後に、JCDA様の今後の展望などについて伺いたいです。
例えば御団体が直接、キャリアコンサルタント試験のテキストや講座を出されるといったことは考えていらっしゃるんでしょうか?
試験機関は、養成機関との役割の違いがありますが、今後は、皆さんの学習のためにもう少し力を入れていきたいと考えています。
現在はHPに直近3回分の過去問題を掲載しているんですが、もっと学習のための情報が欲しいという希望の声をいただいていたりもしますので、現在出版の計画中です。
私どもと致しましても、楽しみにお待ちしております。
本日は貴重なお話をいただきまして、誠にありがとうございました。