公認会計士の平均年収はいくら?高年収を目指すキャリアパスも紹介
更新
公認会計士は高度な専門知識を持つ専門家として認識されていますが、実際の待遇や収入面ではどうなのでしょうか。
この記事では、公認会計士の平均年収を明らかにするとともに、より高い収入を得るためのキャリアパスについても紹介します。
公認会計士を目指す学生やキャリアチェンジを検討中の会計士、転職を考えている方々にとって有益な情報となることでしょう。
公認会計士の平均年収は手取り約750万円
公認会計士は、高い専門性とビジネス環境の変化に強く対応できる能力が評価され、需要が安定しているため、高い年収を得ることが期待できます。
厚生労働省の調査でも、企業規模10人以上の企業における公認会計士・税理士の平均年収は約750万円と、一般的なサラリーマンよりはるかい高い水準にあります。
ビジネス環境の変化が進む中で公認会計士の役割と期待はますます高まり、その結果として年収水準も上昇する傾向にあります。
公認会計士初任給は月収30~35万円
公認会計士の資格を取得した後、監査法人といわれる組織で実務経験を積むことが公認会計士としてのキャリアスタートの道となります。
特に、世界的な大手監査法人の「Big4」と呼ばれる大手4社は、公認会計士志望者の人気の就職先となっています。
これらBig4に入社する公認会計士の初任給は30万円から35万円程度で、年収は賞与を含めると500万円前後となります。
20代の平均年収が200万円台後半から300万円台後半であることを考えると、公認会計士の初任給はかなり高水準にあると言えます。
年齢・性別ごとの平均年収
公認会計士は年収750万円程度とされていますが、年齢や性別、経験年数によって大きく変動します。
以下は、公認会計士の平均年収を、年齢・性別ごとにまとめたものです。
年齢階級 | 年収(男性) | 年収(女性) |
---|---|---|
20~24歳 | 577万7700円 | 598万3200円 |
25~29歳 | 787万400円 | 777万8500円 |
30~34歳 | 960万2500円 | 649万8100円 |
35~39歳 | 1078万7900円 | 777万9200円 |
40~44歳 | 1241万1800円 | 915万8500円 |
45~49歳 | 1276万6200円 | 984万5900円 |
50~54歳 | 1084万6600円 | 930万1600円 |
若手では700万円程度が平均ですが、経験を重ねるごとに上昇し50代では1500万円程度になるといわれています。
一方、男女間の格差もあり、男性の900万円程度に対して女性は650万円程度と差があります。
しかしこれらはあくまで平均値であり、個人のスキルや専門性、勤務地域によって年収は変わってきます。特にフリーランスの場合は依頼内容や業務量で収入が大きく異なります。
公認会計士は高収入を得られるだけでなく、専門知識を活かして組織の健全な経営を支える重要な役割を担います。
キャリア別平均年収
公認会計士の平均年収が約750万円であることは前述の通りですが、この数字はあくまで平均値であり、実際の年収はキャリアパスによって大きく異なります。
公認会計士のキャリアは多岐にわたるため、それぞれの分野や役割によって収入に差が生じます。
ここでは、主なキャリアパス別の平均年収をより詳細に見ていきましょう。
監査法人の場合
監査法人では経験年数に応じて役職が上がり、それに伴って年収も増加していくのが特徴的です。
特に「Big4」と呼ばれる大手監査法人4社では、平均年収が高水準となっています。以下は、役職ごとの年収の目安と詳細を表にまとめたものです。
役職 | 年収の目安 | 詳細 |
---|---|---|
スタッフ | 500万円台 | 入社直後から2~3年以内のポジション。年収は0年および1~4年のデータを基に500万円台と推定。 |
シニア | 600~700万円台 | 入社から4年前後で昇格。年収は600~700万円台と推定。 |
マネージャー | 800~1,000万円台 | 入社後8年目程度から昇格。年収は800~1,000万円台と推定。昇格直後は一時的に下がることも。 |
パートナー | 1,500万円以上(最大で1億円超も可能) | 入社後15年程度から昇格。最低年収1,500万円で、会社の業績や個人の能力次第では1億円超も可能。役職により年収の振り幅が大きい。 |
監査法人の組織構造はピラミッド型になっており、若手スタッフが最も多く上位のパートナーに向かって人数が徐々に減っていきます。
そのため、監査法人に所属する公認会計士の大半は経験の浅い若手スタッフで占められています。
結果として、監査法人全体の平均年収は年齢や経験の少なさを反映して、企業内で働く公認会計士よりも低くなる傾向があります。
税理士法人・会計事務所の場合
公認会計士の年収は、税理士法人や会計事務所で働く場合平均的には他の業種と大きな違いはありませんが、中央値は低めになっています。
税理士法人や会計事務所の主な業務は税務に関するものが多く、監査業務からの転職者は即戦力とはなりにくいためです。
しかし、税務業務に慣れると徐々に収入は上がり、最終的には監査法人時代の水準に戻ることが可能です。
また、一部の税理士法人ではM&Aやコンサルティング業務を手掛けており、これらを通じて付加価値を提供することで収入を増やすこともできます。
コンサルティングファームの場合
公認会計士は監査法人で経験を積んだ後、コンサルティング会社に転職したり出向したりする機会が多くあります。
コンサルティング会社では、監査法人と同様、経験年数を積めば年収がアップしていく仕組みになっています。
以下は、コンサルタントの役職と勤続年数、年収の目安を表にまとめたものです。
役職 | 勤続年数 | 年収の目安 |
---|---|---|
アソシエイト | 入社0〜3年 | 700万円~900万円 |
シニア アソシエイト | 入社3~5年 | 1,000万円~1,500万円 |
マネージャー | 入社5〜10年 | 1,500万円~2,000万円 |
パートナー | 入社10年以上 | 2,000万円以上 |
以上の表から、勤続年数に応じた役職によって年収が大きく異なることが分かります。
また、監査法人と比べると、勤続年数が同じ場合にはコンサルティングファームの方が年収が高い傾向にあります。
一般企業の場合
一般企業で活躍する公認会計士の報酬は、企業の規模や実績によって異なりますが、全体的に安定して高水準となっています。
多くの公認会計士は監査法人での勤務経験を経て、シニアスタッフやマネージャーとして一般企業に転職します。
この豊富な経験が評価され、転職後の年収は高くなる傾向にあります。
大手企業や上場企業では年功序列に沿った安定的な昇給・昇進が一般的ですが、ベンチャー企業などでは実績次第でCFOなどの幹部職への抜擢の機会もあります。
公認会計士が高収入である理由は?
公認会計士は企業の健全性を保つ上で不可欠な存在であり、経済活動が複雑化する現代においてますます重要視されています。
以下では、公認会計士が高収入である具体的な理由について解説します。
資格取得の難易度が高いから
公認会計士試験は合格率が常に10%前後と極めて低く、最低でも約3,000時間以上の勉強が必要とされる難関の試験です。
公認会計士は会計監査を実施できる唯一の資格であり、その重要性と価値は非常に高いため、資格取得者は限られ需要が高まります。
そのため、一旦この資格を手にすれば高収入が期待できるのです。
業務の専門性が高いから
公認会計士は高度な専門性が求められる職業であり、その専門性の高さが高収入の理由となっています。
具体的には、決算書の監査や企業の財務状況の評価などの会計原則や法律、税法に関する広範かつ具体的な知識が必要とされる業務を行います。
このような高度な専門知識を身に付けるには一般的な職業以上に長期間の学習が求められるため、これらの分野に精通する人材は貴重なのです。
需要が大きいから
上場企業が事業を継続するためには、公認会計士による定期的な会計監査が欠かせません。
公認会計士は資格保有者しかできない専門職でありその人数が限られているため、企業は高い報酬を支払ってでも公認会計士を雇う必要があります。
特に、上場企業の増加や経済活動の複雑化が進む現代では、企業が直面する会計上の課題も高度化しており、優れた公認会計士による質の高い監査が求められています。
これに伴い公認会計士の報酬は高水準を維持しており、今後もその需要はますます拡大し、キャリアの魅力も高まるでしょう。
キャリアパスが多様であるから
公認会計士の年収が高い理由の一つは、キャリアパスの多様性にあります。
公認会計士には様々な道が開かれており、多くの場合には監査法人や会計事務所でキャリアをスタートさせます。そこで経験を積むことで、大手企業の最高財務責任者(CFO)といった重要な地位に就くチャンスも生まれてきます。
また、独立して自分の会計事務所を立ち上げる道もあります。この場合、努力次第でかなりの高収入を得られる可能性があります。
公認会計士の生涯年収は?
公認会計士は、一般の給与所得者と比べると生涯収入が2倍以上になるとも言われています。
厚生労働省によると、公認会計士の平均年収は男性で989万円、女性で728万円で、就業期間40年と想定した場合、生涯年収は、男性が約3億9,560万円、女性が約2億9,120万円となります。
一方国税庁によると、一般の給与所得者の平均年収は男性563万円、女性314万円で、40年就業した場合の生涯収入は男性が約2億2,520万円、女性が約1億2,560万円となります。
ただし、これらは平均値に過ぎず個人差があることに留意が必要です。
公認会計士が高年収を目指すには
公認会計士が高年収を目指すためには多様なキャリアパスがあります。
以下では、年収1000万円、2000万円、3000万円を目指すための具体的な方法を紹介します。
年収1000万円以上を目指す方法
公認会計士であれば、年収1,000万円は誰でも目指せる範囲です。
以下に、そのための具体的な方法を詳しく説明します。
監査法人で10年以上働く
監査法人で長く勤務を続けることは、高年収を目指す一つの確実な道のりといえます。
監査法人は出世競争が激しい他の企業と比べ、規律を守り努力を重ねれば着実に昇給昇進できる環境にあるため、30歳前後で年収1,000万円を視野に入れることも十分に可能となるでしょう。
特に大手監査法人に勤めれば、マネージャー以上の職階で年収が大幅に上昇する機会があり着実に高年収を目指すことができます。
コンサルタントとして3年以上働く
公認会計士として高収入を目指すには、会計コンサルタントという職に就くのが有効な選択肢の一つです。
この職では、実績や経験を積むことでより高付加価値の業務や大規模なプロジェクトに携わる機会が得られ、年収の大幅な上昇が期待できます。
シニアアソシエイトで年収1,000万円を超えるため、最短入社3年程度で年収1,000万円に到達できる可能性があります。
また、大手コンサルティング会社では平均年収が1,000万円を上回っているため、無理なく年収1000万円を達成できるでしょう。
一般企業でも求人によっては1000万以上
公認会計士は専門知識と技術を活かして企業の会計を管理する役割を担うことができ、そこでは高い待遇が見込まれます。
具体的には、会計管理部門や経理チームのリーダーとして従事したり、財務報告書の作成や分析を担当したりする職務があります。
もちろん相応のスキルや経験が求められますが、企業の規模や業務内容によっては年収1,000万円以上の求人もあります。
独立開業する
公認会計士が高収入を得る有力な選択肢の一つとして、独立開業があります。
独立開業した公認会計士の平均年収は1,000万円を超えるとされています。
実務経験を積んだ後、自身の事務所を構えることで、自らクライアントを獲得し、財務評価や税務相談などを行うことができます。
ただし、事務所設立や自己経営の知識、クライアントとの信頼関係構築など、初期投資と精神的な負担が伴います。
年収2000万円以上を目指す方法
公認会計士が年収2,000万円以上を目指すためには、単なる専門知識の深化にとどまらず、実績や高いレベルのスキルを身につけ、戦略的にキャリアを構築することが不可欠です。
以下に、その具体的な方法をご紹介します。
監査法人や会計コンサルタントのパートナーになる
公認会計士として年収2000万円以上を得るには、監査法人や会計コンサルタント企業でパートナー(共同経営者)に昇進することが一つの道です。
監査法人のパートナーは年収1500万円以上、会計コンサルタントのパートナーは2000万円以上の収入が見込めます。
パートナーへの道は、所属する会社での昇進コースと、外部から会計コンサルタントに転職する2つの方法があります。
前者は既存の経験を活かしてじっくりキャリアを積むことができ、実際に監査法人勤務者の約半数がこの道を歩んでいるとされています。
一方、転職では新たな環境に挑戦することが必要になります。
外資系金融機関・ベンチャー企業などに転職する
公認会計士として身につけたスキルを十分に活かして年収2000万円以上を目指すなら、外資系金融機関やベンチャー企業への転職が有効な選択肢の一つとなります。
具体的には、外資系金融機関の財務部門で専門職としてキャリアを積むことや、ベンチャー企業でCFO候補として入社し役員への昇進やIPOを経験して上場による利益を得る道もあります。
ただし、このような高待遇の求人は数が限られており、一般に公開されないことが多いのが現状です。
そのため、転職エージェントなどが持つ非公開求人情報を活用するのが効果的な方法と言えるでしょう。
独立開業して実績を積む
年収2000万円以上を目指す方法の一つとして、自身のスキルと実績を磨いた上で、独立開業することが挙げられます。
具体的には、経験を積み能力を高めた後に自身の会計事務所を開業します。
初めは想定通りの年収を得るのは難しいかもしれませんが、顧客を増やし信頼関係を深めていけば年収アップにつながっていきます。
年収3000万円以上を目指す方法
公認会計士で年収3000万円以上を目指すのは決して簡単ではありませんが、いくつか方法はあります。
以下に、その具体的な方法をご紹介します。
監査法人・税理士法人でパートナとして長く働く
公認会計士が高収入を目指す上で、監査法人や税理士法人でパートナーとして長期間務めることは非常に有益な選択肢です。
パートナーに就任した当初は年収1,500万円から2,000万円程度が一般的ですが、これは収入の上限ではありません。
経験を重ね実績を積み重ねることで大手企業の監査や高額報酬の案件を手がけられるようになり、徐々に年収を大幅に伸ばすことができます。
スタートアップ・ベンチャー企業で役員クラスの職位に就く
年収3000万円以上を目指す一つの道筋として、スタートアップやベンチャー企業で役員クラスの職を得ることが挙げられます。
しかし、スタートアップ業界では、企業の業績が直接自身の報酬に影響するため、一定のリスクを覚悟しなければなりません。
ただし、事業が成功すれば大幅な年収アップが見込めることは大変魅力的です。
独立開業して高い業績を上げる
公認会計士が高収入を得る主要な方法の一つに独立開業があります。
独立開業した公認会計士の平均年収は1,000万円以上と言われており、安定した収入源となっています。ただし収入の上限は特に決まっておらず、新規顧客の獲得次第で大きく変わってきます。
特に大手企業や成長企業を顧客として獲得できれば、高額な報酬が期待できます。
仕事を複数掛け持つ
年収3000万円以上を目指すには、単一の収入源に頼らず複数の収入源を確保することがより現実的な方法です。
例えば、会計事務所やコンサルタント会社を設立して代表取締役をしながら他職種や他業種に携わる、フリーランスとしてコンサルや法人監査など複数の業務を掛け持ちするなどの方法が挙げられます。
公認会計士がキャリアアップ時に心がけること
公認会計士がキャリアアップを目指す際には、専門性を深めるだけでなく他者との差別化を図るスキルを磨くことが重要です。
以下では、キャリアアップを成功させるために心がけるべきポイントを紹介します。
差別化できるスキルを磨く
公認会計士がキャリアアップするためには単なる監査経験にとどまらず、監査業務以外の幅広い経験とスキルを積むことが重要です。
転職市場は激しい競争が存在するため、他者と差別化できる多面的な強みを身につけることで高い評価を受けることができます。
激務であることを心得る
公認会計士としてキャリアアップを目指す際、高年収を得られる職場では厳しい労働環境が避けられないことを心に留めておく必要があります。
高い収入と引き換えに、幅広い業務への対応や長時間労働が求められることが多いのが現状です。
キャリアアップを考える場合は、自分が理想とするワークライフバランスを保てる職場を選ぶことも重要になってきます。
福利厚生の手厚いところを選ぶ
転職を検討する際、収入だけでなく福利厚生にも注目することが重要です。
監査法人から一般企業に移る場合は年収は下がる可能性がありますが、大手企業であれば住宅手当や家族手当などの手厚い福利厚生が用意されていることがあります。
そのため、実質的な収入は監査法人時代と変わらない、あるいはそれ以上になる場合もあります。
また、医療費支援などの福利厚生制度により、生活コストを抑えられるメリットもあります。
公認会計士になるためにかかるコストは?
公認会計士になるためには時間と費用の両方で大きな投資が必要です。
以下では、公認会計士を目指すためにかかる具体的な時間と費用について説明します。
時間は3,000〜5,000時間
公認会計士試験に合格するには約3,000~5,000時間もの勉強が必要とされています。
例えば2年で合格を目指す場合、毎日4.8時間もの勉強が必要になります。
ただし、試験に合格するには長時間勉強するだけでなく試験の傾向や対策を熟知し効率的な学習が不可欠です。
費用は約70万円以上
公認会計士試験に合格するには、教材費や模擬試験の費用などのかなりの金銭的投資が必要になります。
独学で合格する人はごくわずかですが、独学で挑戦する場合でも数十万円以上のコストがかかることがあります。
一方、多くの受験生が選ぶ資格スクールでは充実した教材や経験豊富な講師陣、他の受験生との情報交換などのメリットがありますが、約70万円以上の受講料を払う必要があります。
ただし、これらの費用をかけて公認会計士になれば、リターンは大変大きいことを視野にいれ、長期的な判断をすることが重要です。
公認会計士の転職なら転職エージェントの活用がおすすめ
公認会計士は高度な専門性を持つため様々な分野で活躍できる可能性がありますが、自力での転職活動は時間と労力がかかり、自分に合った企業を見つけるのが難しいものです。
転職エージェントは豊富な求人情報と幅広い企業ネットワークを持つ専門家です。公認会計士の経験とスキルを適切に評価し、最適な企業を紹介してくれます。
また、面接の調整から年収交渉までの転職活動全般をサポートしてくれるため、スムーズな転職が可能です。
さらに、自分の強み弱みや市場価値を教えてくれるので、長期的なキャリア設計の観点からも有用と言えるでしょう。
公認会計士の年収まとめ
この記事では、公認会計士の平均年収や、高収入を得るためのキャリアパスについてお伝えしました。
公認会計士は、資格取得の難しさや業務の専門性から需要が高く、全体的に高い収入が期待できる職業です。
経験を積みスキルを向上させたり、独立・開業したり転職してCFOなどの上級職に就くことで、より高い収入を得られる可能性があります。
高収入を目指したい方は、ぜひこの記事を参考にしてキャリアプランを考えてみてください。