税理士の独立開業は食えないのか?事務所開業に必要な費用や準備についても解説
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税理士として独立開業を目指す方は、安定した収入を得られるのか心配になるかもしれません。
独立開業は大きな一歩ですが、現実的な視点で状況を理解し、具体的な計画を立てることが重要です。
本記事では、その疑問に答えるとともに、開業に向けて必要な費用や準備について詳しく説明します。
税理士の独立までの流れは?
税理士になるためには、極めて難関な国家試験に合格する必要がありますが、それだけではありません。試験合格後も会計事務所や企業で実務経験を積み、将来独立するための多面的な知識を身につける必要があります。
独立開業に向けたステップとしては、まず試験合格、次に実務経験の積み重ね、そして事務所開設と進みます。
ここからは、税理士試験受験から独立までの流れを一通り紹介していきます。
税理士試験受験
税理士を目指す人は、試験合格だけでなく実務経験や業界動向の理解も欠かせません。
税理士試験は毎年1回実施され、全11科目のうち会計関連2科目と税法関連3科目の計5科目をクリアする必要があります。
ただし、一度の受験で全科目に合格するのは困難で、多くの受験生は数年をかけて科目ごとに合格を重ねていきます。試験に合格しても、最低2年間の実務経験が義務付けられています。
税理士試験合格
税理士の資格を取得するには、難関とされる税理士試験に合格することが第一関門です。
税理士の試験は毎年8月上旬の3日間行われ、合格発表は12月中旬となります。
しかし、試験合格だけでは税理士と名乗れません。日本税理士会連合会への登録と、通算2年以上の実務経験が必要不可欠です。つまり、試験合格後もさらに実務経験を積む期間が求められます。
実務経験の積み重ね
実際に税理士になるためには税理士試験に合格後、租税または会計に関する事務に2年以上従事し、実務経験を積むことが必須です。その経験を経て、初めて日本税理士会連合会の名簿に登録できます。
その際重要なのが、将来を見据えた情報収集です。働く事務所の業務運営方法や、経営・人材の体制などを詳しく把握するようにしましょう。
この下積み期間は、税務処理の技術を習得する機会であるとともに、将来的な人脈作りの場でもあります。事務所の上層部や顧客との良好な関係性は、自身の開業への後押しとなります。
登録を申請
税理士試験に合格し、必要な実務経験を積んだ後は、税理士登録の手続きが待っています。日本税理士会連合会の税理士登録申請書に必要事項を記入し、書類を添えて申請します。
開業地の選定では、同地域の税理士や税理士法人の状況を把握することが重要です。こちらは日本税理士会連合会のオンラインサービスで調べられます。競合他社や潜在的な顧客の有無を考慮し、適切な開業地を選びましょう。
申請後は、所属する地域の税理士会が審査を行います。面接や調査を経て適性が認められれば、あなたの名前が税理士名簿に登録され、官報にも公示されます。
独立資金の準備
税理士として独立開業するためには、税理士試験の合格だけでなく、開業資金の準備が重要な課題となります。
事務所の設立には、賃料、敷金、礼金、オフィス家具、OA機器の導入費用など初期投資が必要です。さらに、名刺やウェブサイトの作成費用も見込まれ、信頼性を高めるためにはデザインにも一定の費用をかける必要があります。
これらの開業資金を一度に集めるのは大変です。そのため、具体的な開業時期を見据え、地道にコストを計算し、順序立てて資金を準備していくことが大事です。
独立に関する勉強
税理士として独立するためには、事前の調査が欠かせません。開業前後の具体的な行動を想像するのは簡単ではありませんが、必要な専門知識を事前に身に付けることが重要です。
開業に向けて情報を集めるには、書籍やウェブサイトからの情報収集がおすすめです。ベテラン税理士から実際の経験を聞くのも良い方法でしょう。また、開業時の重点事項を取り上げたセミナーに参加するのも一つの手です。
また、日本税理士会連合会のウェブサイトでは、「税理士登録・開業の手引き」が公開されており、登録と開業に必要な注意点が網羅されています。万が一何から始めていいかわからないといった際には、一読をおすすめします。
独立した税理士が食えない・難しいと言われる理由
税理士の独立開業が「生計が立たない」「困難だ」と言われる背景には、いくつかの理由が存在します。
以下ではそれらの理由について紹介していきます。
独立した税理士はベテランの割合が高い
税理士の独立開業が難しい大きな理由の一つは、税理士業界にベテラン税理士が多く残り続けていることにあります。
定年制度がないため、経験豊富なベテラン税理士が引退する必要がなく、彼らが豊富な経験と高度な専門性を武器に新規顧客を獲得しやすい傾向にあります。
一方で経験の浅い若手税理士は新規参入が難しく、ベテラン税理士が引退せずに業務を続けることで、若手税理士への仕事の流れが滞り、開業が困難になっています。
人脈の不足による相談相手や紹介者の不在
独立開業したばかりの税理士にとって、人脈の不足は大きな障壁となります。
長年の経験を持つ先輩や他の専門職との良好な関係がないと、紹介によるビジネスチャンスを逃すリスクがあります。紹介は新規顧客獲得の重要な手段ですが、それを得るには信頼できる人脈が不可欠なのです。
さらに、人脈の有無は業務上の助言を求められるかどうかにも影響します。税務で難しい案件に直面した際、相談相手がいれば問題解決への道筋がつかめます。
独立開業時の人脈不足は避けられない課題ですが、着実に人的ネットワークを広げていけば、やがては豊富な人脈を持つことができるでしょう。
会計ソフトやAIの普及による税理士業務の減少
テクノロジーの進化、特にクラウド会計ソフトの普及とAI化の影響で、従来税理士が担ってきた業務が自動化・簡素化されつつあります。
手軽に経理や申告ができるクラウド会計ソフトが中小企業に浸透したことで、専門家の必要性が薄れてきました。また、AIによる業務の自動化で、税理士の存在意義が揺らぎつつあります。
こうした状況下で税理士が生き残るには、時代の変化を捉え、新しいサービスを提供することが不可欠となっています。
税理士の登録者数の増加
会計年度 | 登録者数 |
昭和40(1965)年度 | 15,827 |
昭和45(1970)年度 | 24,024 |
昭和50(1975)年度 | 32,436 |
昭和55(1980)年度 | 40,535 |
昭和60(1985)年度 | 47,342 |
平成2(1990)年度 | 57,073 |
平成7(1995)年度 | 62,550 |
平成12(2000)年度 | 65,144 |
平成17(2005)年度 | 69,243 |
平成22(2010)年度 | 72,039 |
平成27(2015)年度 | 75,643 |
令和2(2020)年度 | 79,404 |
令和3(2021)年度 | 80,163 |
令和4(2022)年度 | 80,692 |
令和5(2023)年度 | 81,280 |
参考:日本税理士連合会
税理士業界の飽和状態が進み、独立開業を目指す税理士にとって大きな障壁となっています。
日本税理士連合会の最新データによると、税理士の登録者数は年々右肩上がりに増加しており、令和5年度には81,280人に達しました。
過去5年間で3,000人以上の増加があり、今後もこの傾向が続くと予想されています。
独立開業を目指す税理士は、業界が飽和状態に近づいているという危機感を抱えながら、難題に立ち向かう必要があります。
競争激化に伴う価格の低下
税理士業界では価格競争が激しくなり、独立した税理士の収入が脅かされています。
経験の浅い税理士は、安価なサービス料金を設定する傾向にあります。しかし、大手事務所は業務の効率化を進め、コスト削減に努めているため、価格競争では勝ち目がありません。
独自の価値を提供し、自社の強みを活かした経営戦略が重要です。持続的な収益を確保するには、顧客に対する価値提供と自社の明確な位置付けが不可欠なのです。
営業スキルやノウハウの不足した独立
税理士に限らず、収入を得るためには営業力が鍵となります。
会社に所属する税理士は主に企業から案件が提供されるため、営業の機会は限られています。一方、独立した税理士は自らの営業力によって顧客を見つけ出し、需要に合った提案をする必要があります。
独立した税理士には、顧客からの信頼を獲得し顧問契約を結ぶための営業力と、顧客の課題解決のための専門知識・スキルの両方が求められます。
弁護士や公認会計士による業務の奪取
税理士業界において、弁護士や公認会計士の兼業者が増えていることが問題視されています。
弁護士や公認会計士は、税理士資格を持つことで幅広い業務を手がけることができるため、独立した税理士の業務を奪っている面があります。
特に開業税理士は、弁護士や公認会計士の多角的な専門性に対抗しづらく、経済的に苦しい状況に陥りやすいとされています。このため、独立した税理士の創業が困難になるケースが増えているといわれています。
独立した税理士と雇用税理士の年収を比較
税理士として独立開業を検討している人は、収入の変動に不安を感じるかもしれません。
一般的に、雇用税理士は安定した給与収入がありますが、独立税理士の収入は自身の売上に左右されます。
雇用税理士は、所属する会社から安定した給与を得られますが、昇給や昇進には限界があり、収入アップの余地が限られます。
一方、独立税理士の収入は自身の能力と努力次第で大きく変動します。顧客を確保し、業務量を維持することが成功のカギとなります。そのため、初期投資やリスクも高くなりますが、成功すれば雇用税理士をはるかに上回る収益が期待できます。
したがって、個人の価値観や目指すライフスタイルによって、独立開業の是非を判断することが重要となります。
独立した税理士の平均年収
開業税理士の年収には大きなばらつきがあります。
一般的に平均年収は2,000万円から3,000万円程度と言われていますが、実際には500万円以下の低収入者も少なくありません。
開業税理士になれば必ず高収入が得られるわけではなく、個人の能力や経験によって事業の成否が決まります。つまり、開業税理士の年収は安定しておらず、リスクを覚悟する必要があります。
雇用税理士の平均年収
税理士の年収は、勤務形態や役職、経験、スキルなどによって大きく変わります。
厚生労働省の調査では、企業に勤務する税理士・公認会計士の平均年収は約599万円とされています。
ただし、公認会計士を除くと、一般の勤務税理士の平均年収は400万円から500万円程度と推定されます。一方、役員に相当する「社員税理士」の年収は900万円前後と高くなる傾向にあります。
参考:厚生労働省『賃金構造基本統計調査 』
独立に必要な費用や準備
独立して税理士事務所を開業する際には、事前に適切な資金計画を立てることが重要です。
初期投資として事務所の設備や備品などにかかる一時的な費用、そして事業を継続するための人件費や光熱費などの継続的な支出を見積もる必要があります。
一般的には200万円程度の資金がある程度の規模の事務所開設には必要とされますが、具体的な金額は事務所の規模や水準によって変動します。
広告宣伝費
事業を成功させるためには、効果的な広告宣伝が不可欠です。
企業の存在を広く知らせるためには、ウェブサイトの制作やロゴデザイン、名刺やチラシの印刷など、様々な広告宣伝活動に費用がかかります。
新規事業を立ち上げる際は、集客手段とそのコストを綿密に検討し、適切な予算を確保する必要があります。
オフィスの賃料や備品の購入費
事業を立ち上げる際には、オフィスの種類と備品の準備が主な出費となります。
初期費用を抑えたい場合は、レンタルオフィスがおすすめです。レンタルオフィスには会議室や共有スペース、ネット環境、備品が備わっており、すぐに業務を開始できます。
一方、賃貸オフィスを選ぶ場合は、敷金や仲介手数料などの初期費用が必要となり、50万円程度を見込む必要があります。
オフィス備品については、PCやデスクなどの基本的な備品で20万円から30万円を想定しておくとよいでしょう。大型の機器は購入かリースかを検討し、予算と運用コストを踏まえて判断します。
会計ソフトの購入費
起業を目指す人にとって、会計ソフトの選択は非常に重要です。適切な会計ソフトを導入することで、経営の効率化と税務対応の円滑化が期待できます。
会計ソフトの購入を検討する際、まず価格が注目されます。一般的なパッケージ製品は5万円から10万円程度が相場ですが、税務に特化したものは10万円から15万円程度と高額になります。
近年では、初期費用を抑えられるクラウド型の会計ソフトも人気があります。毎月数千円の利用料を支払う形式ですが、長期的なコストも考慮し、自社のビジネススタイルに合ったソフトを選ぶことが大切です。
税理士登録料や税理士会入会費
税理士になる道のりには、知識やスキルだけでなく経済的な準備も必要不可欠です。特に、税理士登録料や税理士会費用は重要な要素で、これらの費用を理解しないままでは開業の計画を立てられません。
日本税理士会連合会には、全国15の税理士会が所属しており、さらにそれぞれの税理士会に支部会が設置されています。税理士登録をする際には、開業地域の税理士会だけでなく、その支部会にも所属する必要があります。
重要なポイントは、独立開業のための初めての税理士登録では、税理士会への登録料として約11万円、所属地域の支部会への入会金として3~5万円が必要となることです。
一方、勤務税理士からの開業税理士への変更の場合は、手続き料として5,000円のみで済みます。
さらに、毎年、所属する税理士会と支部会に対して、それぞれ10万円から15万円の年会費を支払う必要があります。
税理士の独立のメリット
税理士として独立開業するには、周到な準備と資金確保が欠かせません。
困難が伴いますが、成功すれば大きな恩恵を受けることができます。
ここからはそんな税理士の独立のメリットについて紹介していきます。
自分の努力が大きな結果になりうる
独立して税理士業を営むということは、自分の才能と能力を最大限に発揮できる機会です。
自分の努力が直接的な成果につながるため、大きな達成感と報酬を得られる可能性があります。会社勤めとは異なり、給与や地位は会社の慣習や勤続年数ではなく、提供するサービスの質とスキルによって決まります。
しかし、独立するということは、自分のサービスが顧客の期待を満たすかどうかの責任を完全に負うことを意味します。
プライベートとの両立が比較的容易
自分のペースで仕事ができることが、開業税理士の大きな魅力です。
業務時間や働く場所を自由に選択できるため、プライベートとのバランスを保ちながら、育児や介護などのライフイベントとも両立しやすくなります。
また、出身地や好みの場所で活動することも可能です。
やりがいがあり自由に働ける
税理士として独立して開業することの最大の魅力は、制約なく自由に仕事ができ、それによってやりがいを感じられることです。組織に属さずに、自分の判断と意志で働くことができるからです。
開業して経営が軌道に乗り始めた時の喜びは計り知れません。自分の手で築いた顧客との契約関係や選んだ業務内容は、自信となり持続的な高いモチベーションを生み出すでしょう。
さらに、独立開業であれば、定年などに縛られず、自らの引退のタイミングを決められます。生涯現役を目指し、やりがいを優先した働き方を続けられるのも大きな魅力です。
長く現役で働き続けられる
税理士として独立すると、健康が保たれる限り、定年制がないため、長期的に安定した収入を得られるというメリットがあります。
しかし、一方で経営状況次第では事務所を閉鎖せざるを得なくなる可能性もあり、自ら市場の変化や能力の衰えに対処し、引退の適切なタイミングを見極める必要があります。
さらに、いずれは後継者を見つけなければならないため、計画的な準備が欠かせません。
若くても高年収を目指せる
独立開業した税理士は、努力次第で年収を大きく伸ばすチャンスがあります。
20代や30代から高収入を目指せる可能性があり、将来的に年収1000万円を視野に入れている意欲的な方には魅力的な選択肢となります。
自身で事務所を構えるため、リモートワークや休日調整など柔軟な働き方が実現できます。
企業勤務とは異なり、自らの業績が直接的に収入につながるため、自己責任と自由を手にしたい税理士にとって、自己成長と収入アップを両立できるメリットがあります。
クライアントを選択できる
税理士が独立して事務所を開業すると、クライアントの選択が自由になるというメリットがあります。
しかし、このメリットは開業当初ではなく、一定の収益が見込める段階になってから実感できるでしょう。
自分の専門性や経験を生かせるクライアントを優先的に受注でき、不本意な仕事を押し付けられる心配がありません。
独立のデメリット
税理士として独立開業をする際には、メリットもある一方でもちろんデメリットも存在します。
以下では税理士の独立のデメリットについて紹介します。
収入の不安定さ
独立開業時の最大の課題の一つは、収入の不安定さによる金銭的なストレスです。
勤務の場合は給与が保証されていますが、独立すると自らクライアントを開拓し、営業活動に専念しなければなりません。
さらには、規律ある顧客との信頼関係を構築し、年間契約を結ぶなどして収入源を確保する必要があります。
業務以外の雑務が多い
独立した税理士は、本業の税務業務に加えて、営業や人事など事務所経営全般にも携わる必要があります。
事務所運営に関するあらゆる業務を一手に担うため、優れた管理能力と業績アップのための戦略が求められます。
専門業務と並行して、経理を含む多岐にわたる業務処理が求められるため、膨大な時間とエネルギーを消費し、本来の税務業務に専念できる時間が大幅に減ってしまいます。
知識の更新が自己責任
独立して税理士事務所を開業すると、知識の更新は自分次第となります。税法や会計基準は常に変化しているため、古い知識に頼っていると適切な助言ができなくなり、クライアントの信頼を失う恐れがあります。
会社に所属していれば、同僚と情報を共有し研修を受けられますが、独立開業の場合は自分で情報収集と学習に努めなければなりません。
そのため、セミナーへの参加や自己学習など、絶えず知識を更新し続ける必要があります。独立により自由度は増しますが、成功するには学び続け、情報ネットワークを構築することが重要です。
増大する業務責任
税理士が独立して自営業を選択すると、業務に対する責任が大きくなります。自身の仕事に対する自由度は高まりますが、クライアントや従業員への影響も無視できません。ささいなミスでも、自分自身だけでなく、様々な人々や企業に影響を与えかねません。
会社員として働く場合は他のスタッフが失敗を取り戻そうと努力しますが、独立すると、失敗の責任は全て自分一人に課せられます。その結果を受け止め、個人的・専門的に対処しなければなりません。
さらに、独立は孤独な道のりとなる可能性があります。立場の同じ仲間がいない場合、ビジネスに関する相談相手がいなくなり、精神的な負担が大きくなるかもしれません。
代わりがいないことのリスク
独立開業には、自分自身に代わりがいないことが大きなリスクとなります。
個人事業主の場合、自らが活動しなければ事業は回りません。体調を崩した際にも、休むことが難しく、無理をすれば悪循環に陥る可能性があります。
さらに、万が一長期入院となれば、お客様との信頼関係が損なわれ、重要なクライアントを失うかもしれません。また、収入源が途絶えて経済的に困難な状況に陥るリスクもあります。
休暇の問題
開業税理士として自営業を営む場合、従業員とは異なり、有給休暇や育児休暇、介護休暇などの制度がないため、病気やけがで事務所を閉鎖せざるを得なくなるリスクがあります。
また、親の介護など予期せぬ事態で業務継続が困難になる可能性もあり、いつ何が起こるかわからない不安が常にあります。
さらに、スタッフを雇用する場合は、彼らの生活を保証する重大な責任も伴います。
独立開業で失敗しないための準備
独立開業には多くのリスクが伴いますが、適切な準備を行うことで失敗の可能性を出来るだけ低くすることができます。
以下では、独立開業で失敗しないための準備を紹介します。
市場を詳しく調査する
税理士業務では、顧客が自身の重要な情報を提供する必要があるため、入念な市場調査が欠かせません。インターネットやリモートワークが普及した現在でも、緊急時にすぐ対応できるよう、近隣の税理士に依頼するケースは依然として多くあります。
そのため、税理士事務所を開業する際には、周辺地域の状況を十分に把握することが重要です。具体的には、近隣の他の税理士事務所の特徴や、地域に集中している企業の業種などを事前に調査します。
そして、自身の強みや専門性が、ターゲットとする顧客層のニーズと合致しているかを慎重に検討する必要があります。
自分の強みを持ち差別化する
独立開業の成功の鍵の一つは、自分の強みや専門性を明確にし、その分野のスペシャリストとなることです。
例えば、医師なら特定の疾患に対する高度な治療技術を磨き上げ、その評価を広めれば、患者は自然と集まってくるでしょう。
税理士も同様に、得意分野を見つけ、その領域を深く掘り下げることが重要です。「相続税の問題はこの税理士が一番」「事業継承にはあの経験豊富な税理士を頼むべき」と評価されれば、その分野の権威となり、多くの依頼が舞い込むことになります。
顧問料を適正に設定する
独立開業の成功には、提供するサービスの価値に見合った適正な顧問料の設定が欠かせません。
高すぎれば顧客獲得が難しくなり、低すぎれば適切な報酬が得られず、十分な利益を確保できません。
さらに、低料金の契約が長期化すると、労働時間が過剰になり、他の有望な案件を逃すリスクもあります。
高付加価値のサービスを提供する
税理士として独立開業する際には、単なる業務処理にとどまらず、高付加価値のサービスを提供することが不可欠です。
一人で扱える案件数には限界があるため、低価格での量産型のビジネススタイルは自らを傷つける恐れがあります。
むしろ、専門性を活かして顧客一人ひとりに具体的な価値を提供し、適正な対価を求めることが重要です。例えば、個別のニーズに合わせた提案や最新の税制知識の提供などが考えられます。
営業スキルを習得する
独立して事業を始める際、特に税理士として開業する際は、顧客を獲得するための営業活動が非常に重要です。
様々な業務はありますが、顧客獲得のための営業スキルは必須となります。営業が苦手な方でも、この点は認識しておく必要があります。
しかし、心配する必要はありません。現在では、対面での営業だけではなく、インターネットを活用した営業手法も広まっています。
独立後は経営者としての自覚が必要
独立開業を選択することは、実質的に自分自身を経営者として位置づけることを意味します。
会社に所属する税理士とは異なり、専門知識を活かすだけでなく、新規顧客開拓やオフィス運営など、あらゆることを自分で行わなければなりません。しかし、これらの経験を通じて、顧客の心理を深く理解できるようになるのです。
このように、独立開業は税理士としての成功とキャリアアップのチャンスにもなります。自分の成功は自分次第であり、行動を起こし、事業を推進する必要があります。
税理士の独立に適した時期や年齢とは?
税理士として独立開業するタイミングは個人差があり、一概に決められるものではありません。
しかし、国税庁のデータから、税理士試験合格後数年間の実務経験を積んで40歳前後に独立開業する人が多いことがわかります。
専門知識に加え豊富な実務経験が求められるため、経済的にも安定し、キャリア形成の観点からも理想的な時期を選ぶのがよいでしょう。
事務所勤務の理想的な期間
税理士試験の受験者の年齢分布から、税理士として独立開業するには一定の年齢と経験が必要であることがわかります。
すぐに独立開業するケースは少なく、ほとんどの場合は10年から15年程度の実務経験を積んだ後に開業しています。この期間を経ることで、税務知識に加えて経営ノウハウなども身につけることができるからです。
実際、多くの税理士が40歳から50歳代で開業しており、この年齢になるとさまざまな実務スキルが備わっているためです。
独立する前に転職エージェントの活用がおすすめ
独立開業を目指す税理士にとって、しっかりとした実務経験を積むことが欠かせません。
そのためには転職エージェントを活用するのが効果的です。特に専門性を高めたい方、将来的に独立を視野に入れている方は、その経験が成功への第一歩となるでしょう。
ここからは、実務経験を積みたい税理士におすすめの転職エージェントについて紹介していきます。
MS-Japan
MS-Japanは税理士専門の就職支援サービスを提供しています。大手税理士法人から個人事務所まで、幅広い求人情報を持っており、業界に精通した実績とネットワークを有しています。
キャリアアドバイザーが一人ひとりの希望や適性を丁寧にヒアリングし、最適な職場をご提案します。履歴書の添削や面接対策など、就職活動の全般においてきめ細かくサポートいたします。
税理士は未経験からでもスキルを積み重ね、キャリアを築いていくことができる職業です。MS-Japanは、税理士を目指す方々が夢を実現するまでを全力で支援し、信頼できるパートナーとしてキャリア形成を支援します。
ビズリーチ
ビズリーチは、税理士を目指す方々に向けた革新的なキャリア支援サービスを展開しています。業界トップクラスの転職サイトとして、豊富な税理士関連の求人情報を提供しています。
会員制のサービスを通じて、ヘッドハンターや企業から直接スカウトされる機会も多く、キャリアアップの可能性が大きく広がります。また、AI技術を駆使したマッチング機能により、個々のスキルや経験に適した求人を効率よく見つけることができます。
さらに、ビズリーチでは業界の最新動向や年収データなど、キャリア選択に役立つ情報も充実しています。
ヒュープロ
ヒュープロは、税理士業界に特化した人材紹介サービスです。長年の経験と専門知識を活かし、税理士を目指す方々に理想的なキャリアプランを提案しています。
大手から中小規模まで、さまざまな税理士事務所の求人情報を網羅し、一人ひとりのニーズやスキルに合わせて丁寧にマッチングを行います。
経験豊富なキャリアアドバイザーが履歴書作成や面接対策などを手厚くサポートし、業界の最新動向も提供しています。
未経験者から経験者まで、税理士を志す全ての方々に最適なキャリアプランを提案し、理想のキャリア選択を後押しする存在です。
税理士の独立についてまとめ
ここまで税理士の独立について詳しい流れや特徴を紹介してきました。
税理士として独立することは、あらゆる困難に直面する必要があるかもしれません。しかしその困難を乗り越えた先にはあらゆるメリットが待ち受けています。
この記事を参考に、税理士の独立を検討してみてはいかがでしょうか。