データ活用を支えるDS検定★とは|データサイエンティスト協会に聞く
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データの利活用がビジネスにおける重要課題となり、データを用いて課題解決や意思決定をサポートするデータサイエンティストが注目を浴びています。
一般社団法人データサイエンティスト協会が実施するデータサイエンティスト検定リテラシーレベル(DS検定★)は2021年9月の第1回試験開始以降、多くの受験者を集めています。
今回は、一般社団法人データサイエンティスト協会スキル定義委員の菅 由紀子様と、高橋 範光様にお話を伺いました。
DS検定★創設の背景
本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。スキルアップ研究所を運営しております、株式会社ベンドの北川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
一般社団法人データサイエンティスト協会のスキル定義委員を務めております、菅 由紀子です。よろしくお願いいたします。
同じく、一般社団法人データサイエンティスト協会のスキル定義委員を務めております、高橋 範光です。よろしくお願いいたします。
まず初めに、一般社団法人データサイエンティスト協会様が設立された背景について教えていただければと思います。
はい。データサイエンティストという言葉は2010年ごろから広く認知されるようになってきました。
しかし、その職業の正確な定義が確立されておらず、企業側のニーズとデータサイエンティスト人材のスキルの間にミスマッチが生じていました。
加えて、「これからデータサイエンティストとして活躍したい」と考えている方が、どのようなスキルを身につければ良いのかが不明瞭な状態になっていました。
このような状況を解決するため、データサイエンティストの人材像を明確に定義して、データサイエンティストとして必要とされるスキルや、その育成の評価軸も定めることを目的に一般社団法人データサイエンティスト協会を設立しました。
DS検定★は、2021年9月に第1回試験が開催されました。この検定を始められた背景についてもお伺いしたいです。
データサイエンティスト協会のスキル定義委員によって、データサイエンティストに必要なスキルの定義をすることができました。
しかし、データサイエンティストは職務領域の幅が広い上に、データを用いて課題解決するスキルを試験によって測定するのは非常に難易度が高いと認識していました。
一方で、社会で働く方々に当たり前に身につけておいてほしいような入門的な知識・スキルに関しては、試験形式で能力を測ることができます。
この入門的な知識・スキルの能力を測定するのがDS検定★です。
この試験は、データサイエンティスト協会によるスキルチェックリストがベースとなっており、そうしたスキルを体系的に順序立てて学ぶことができます。このような試験があることで、データサイエンスを専門としていない方でも、リテラシー・見習いレベルのスキルや知識を身につけることができると考え、DS検定★を実施し始めました。
DS検定★ならではの特徴
DS検定の他にも、統計検定やG検定のようなデジタル・データ・AIに関わる様々な資格試験がございます。
このような検定とデータサイエンティスト検定の違いやデータサイエンティスト検定ならではの特徴について教えてください。
他の検定との違いは、それぞれが異なる専門領域を対象としている点です。
統計検定は、統計学に特化した試験になっています。また、G検定は、AIによる機械学習の中のディープラーニングに特化した資格試験になっています。
データサイエンティスト協会では、課題を言語化・構造化してそれを解決する能力を「ビジネス力」としてデータサイエンティストに必要なスキルと位置付けています。ビジネスの課題を解決する能力を測るという点がデータサイエンティスト検定の大きな特徴だと思います。
DS検定の想定されている受験者像について お伺いしたいです。
業界問わず、幅広い方に受験していただいています。割合としては、金融機関やゼネコン、製造業の方が多いです。
データサイエンスを専門とされている方やコンサルタントの方だけではなくて、お勤めになられている企業の内部でデータ活用・DXを推進されている方に受験いただいています。
リスキリングを考える上での一般的なスキルとして認知され、幅広い方に受験していただいていると思います。
DS検定★を受験されるにあたっておすすめの勉強方法などはありますでしょうか?
データサイエンティストを目指すというよりは、デジタルやデータ、AIに関しての一般的な知識を身につけたいと考えられている方が勉強するのであれば、まずは「ビジネス力」から勉強されるのがおすすめです。
「データサイエンス力」から勉強しようとすると、数式が山ほど出てきます。
そこの部分で躓かれる方が多いので、まずビジネス力から自信を持って取り組んでいただくのが良いと思います。
DS検定はスキルチェックリストの更新に合わせてバージョンアップがありますが、それに合わせて受験していくというのが良いのでしょうか?
はい。「データサイエンティスト スキルチェックリスト」を2年に1度更新しているので、それに合わせて試験の中身も変化しています。
スキルチェックリストが更新された際には、ご自身のスキルをもう一度確かめていただければと思います。
DS検定★のメリットとは
DS検定を取得することのメリットを教えてください。
「データ活用やデータ分析をしたことがある」という人が、どれだけ正しい理論や知識に裏打ちされているのかを証明する資格や手段は、DS検定の他にはないと思います。
見習いレベルであったとしても正しい理論や技術に裏打ちされたデータ分析ができることや、企業でデータ活用をしていく際にそこでの会話に難なくついていけることを証明してくれます。
また、人的資本経営の重要性が認識され始め、コーポレートガバナンスコードにおいて、デジタル技術の活用やデジタル人材の育成について言及されていることから、企業側がデジタルに関するスキルを持った人材の育成や獲得にKPIを定めて取り組み始めると思います。
それによって、デジタルスキルに関する資格を取得している人を採用する流れが強まるのではないかと考えています。
DS検定★の資格を取得した先のキャリアパスについて教えてください。
一口にデータサイエンティストとして働くと言っても、データサイエンス専業の実働部隊を抱えるコンサルティング会社で働くケースもあれば、事業会社のデータサイエンス部門で働くというケースや事業会社のマーケティング領域でデータサイエンティストとして働くというケースもあります。
いずれにしても、データサイエンスを用いた仕事をする上では、DS検定★を取得していなければ共通言語として職場で話をすることができません。リテラシーを身につけるためには非常に役立つ資格だと思います。
新卒からデータサイエンティストになろうという学生さんには、必ずこの資格を取得してもらいたいです。社会人の方で、「これからデータサイエンティストとして働きたい」という方も取得してしかるべき資格といえます。
一方で、すでに一人前のデータサイエンティストとして働かれている方や、近しいお仕事をされている方は改めてスキルの証左としていただくと良いかもしれません。
データサイエンス・AIのリスキリングの重要性
リスキリングすることの重要性が叫ばれていますが、数あるスキルの中でもとりわけデータサイエンスやAIに関してリスキリングすることの重要性についてのお考えを教えてください。
「なぜ、データ活用しなくてはならないのか?」や「なぜ、データサイエンスやAIに関する分野の勉強をしなくてはならないのか」と疑問を抱いている方も多くいらっしゃると思います。恐らく、そういった方の多くは今の仕事におけるデータ活用やAIの必要性を感じられていないのだと思います。
しかし、考えていただきたいのは今の業務において必要かどうかではなく、将来働く時に必要なのかどうかです。
働き方自体も大きく変化する中で、データサイエンスやAIに関する分野の知識やスキルが必須になります。
「変化する時代の流れについていけなくなる前に勉強しましょう」とお伝えしたいです。
ご自身がどのようなキャリアを築いて行きたいのかに関わらず、デジタルとデータとAIは必ず関わってきます。リスキリングにおいてはこの3つの分野に意識を持ち続けていただくのが良いと思います。
とにかくまずは勉強していただきたいですね。
リテラシーというのは義務教育と言い換えても良いと思います。
そもそもデジタルやデータ、AIに関してよく知らないために、どのように役立つかもわからず、その価値もよくわからないというのが現状だと思います。
我々データサイエンティスト協会は、「最低限ここだけは知っておいてほしい」ということをお伝えしているので、そこだけは「大人の義務教育なんだ」と思って取り組んでいただきたいです。
菅様、高橋様、本日は貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。
一般社団法人データサイエンティスト協会様のスキルチェックリストはこちら!
https://www.datascientist.or.jp/common/docs/skillcheck_ver5.00_simple.xlsx