行政書士試験合格後の登録は必須?登録料・年会費やメリットまで解説

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行政書士試験に合格しても、実際に行政書士として業務に携わるためには登録が欠かせません。しかし、合格者の中で、登録すべきかどうか悩んでいる方も少なくないことでしょう。

そこでここでは、行政書士に登録しないとどうなるのかについて解説しつつ、登録料や年会費の詳細、そして登録によるメリットまで分かりやすく紹介します。


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行政書士になるためには登録が必須

行政書士になるためには、試験に合格することだけでは不十分で、行政書士名簿への登録と所属会への加入が必須です。

試験合格後、詳細な個人情報や事務所情報を登録し、所属する地域の行政書士会に加入することで、初めて行政書士としての資格が得られます。資格を取得するには、試験合格後も適切な手続きを経ることが欠かせません。

行政書士登録しない場合はどうなる?

行政書士登録しない場合はどうなる?

行政書士試験合格後の登録は必須ではありませんが、登録しない場合は主に以下のような問題が生じます。

行政書士として活動できない

行政書士として活動するためには、法律に基づいた行政書士登録が義務付けられています。登録を行わずに「行政書士」の肩書を使用することは認められていません。行政書士法第19条の2で明確に規定されているように、未登録者が行政書士やそれに類する名称を使用することは違法となります。

たとえ行政書士試験に合格していても、登録を行っていない場合はこの例外にはなりません。違法に行政書士の肩書を使った行為は、意図の有無に関わらず法律違反となるのです。誤解を招くような行動もまた違法行為と見なされます。

この規定は口頭のみならず、名刺や自己紹介、プロフィールなどの文書においても適用されます。

行政書士会の研修が受けられない

行政書士として最新の知識を維持するためには、行政書士会の研修に参加することが重要です。ただし、研修を受けるには行政書士としての登録が必須条件となります。

行政書士試験に合格しただけでは知識が古くなる恐れがあるため、継続的な学習が不可欠です。行政書士会は登録会員向けに各種研修を開催しており、これらの研修は能力向上と最新情報の習得に役立ちます。

一方、未登録者は自らの努力で情報収集と学習を行う必要があります。研修に参加できれば効率的な学習が可能ですが、参加できない場合は独自の工夫が求められます。

研修の機会を逃すことで、業務遂行とキャリア形成の面で不利益を被る可能性があります。

人脈を広げることが難しい

行政書士として成功するためには、他の士業者との人脈作りが欠かせません。行政書士登録をしていない状態では、士業交流会への参加や同業者との交流が制限されてしまい、貴重な人脈構築の機会を逃してしまいます

特に、独立開業を目指す行政書士にとっては、早期から他の士業者と意義ある交流を持ち、信頼関係を築き、ネットワークを維持することが重要です。行政書士の仕事は単独で完結するものではなく、他の士業者と協力しながら業務を遂行していくものです。人脈の広がりが、キャリアの成長に大きく影響します。

行政書士登録の登録料・年会費について

行政書士の登録には高額な費用がかかります。高額な登録費用ですが、実践的な業務を遂行するための必要な投資と考えられています。

登録手数料は行政書士として認定を受けるための費用で、会費は年間の各種サービス利用料、そして入会金は加入時の一種の保証金となります。

地域により多少の違いはあれ、通常30万円前後の費用がかかるのが一般的です。

行政書士会の登録料

行政書士になるためには、所属する都道府県の行政書士会への入会が必要となり、その際に登録料の支払いが求められます。登録料とは、登録手数料と入会金を合わせた金額で、各行政書士会によって金額や支払い方法が異なります。

以下は、東京都行政書士会の例です。

登録手数料

25,000円

入会金

225,000円

東京都行政書士会では、登録料を一括で指定口座に振り込む方式を採用しています。

また、行政書士の所属する行政書士会は、事務所の所在地によって決まります。

行政書士会の年会費

行政書士の一員として活動するためには、所属する地域の単位会に対して月会費を定期的に支払う必要があります

月会費の金額は単位会ごとに異なり、東京都行政書士会では7,000円(会費6,000円と政治連盟費1,000円)の支払いが求められています。この月会費は3か月分ごとにまとめて、21,000円を納める必要があります。

支払い時期になると、単位会から通知が届きます。振込みで支払う事務所には納付書が送られてきます。

重要なのは、行政書士として活動する限り、この月会費の支払いは義務付けられているということです。したがって、やむを得ず廃業する場合は、適切な手続きを経て会費支払い義務から外れる必要があります。手続きを怠ると、永久に会費を支払い続けなければならなくなるので注意が必要です。

その他

行政書士登録には、登録料や年会費のほかにも、登録免許税30,000円の支払いが必要になります。この登録免許税は現金ではなく、収入印紙を用意する必要があります。収入印紙は申請書に貼るのではなく、そのままの状態で持参します。

また、バッジ、領収書、職印などの行政書士としての活動に必要なアイテムの費用が、諸経費として10,000円から15,000円程度かかります。

会費を支払わないとどうなる?

行政書士として適切に職務を遂行するためには、所属する行政書士会の会費を期限までに支払うことが重要です。会費を滞納すると、催告書が届いたり、決済が遅いという印象を与えてしまう可能性があります。

さらに、長期にわたって会費を支払わなければ、会員資格が停止され、研修やセミナーへの参加、会報の受け取りなどの特典が制限されてしまいます。最悪の場合、廃業勧告を受け、行政書士を辞職せざるを得なくなる事態にもなりかねません。

一度信用を失墜すれば、その影響は深刻であり、少額訴訟を提起されるリスクさえ存在します。適切な職務遂行のため、会費は確実に期限内に支払うことが肝心です。

融資を活用して資金を集める

行政書士として業務を始めるには想像以上の費用がかかりますが、日本政策金融公庫の創業融資を利用すれば、実績がなくてもスムーズに資金調達できます。

創業融資は金利が2%台と低く、返済期間も最長5年と柔軟なため、多くの人に活用されています。融資申請には事業計画書の作成が必要ですが、これは行政書士業務の一つであり、経験を積むチャンスにもなります。

担当者と相談しながら書類作成や返済計画を立てることで、返済リスクを避けられます。ただし、全く貯蓄がない場合は審査でマイナス評価される可能性があるため、開業前から少しずつ貯蓄を心がけることが賢明です。


行政書士試験に受かったら?その後の流れ

行政書士合格後の流れ

行政書士試験に合格した後、行政書士登録するためには一定の手続きを踏む必要があります。ここでは、登録までの主なステップをご説明します。

まず、書類一式を提出する必要があります。次に、現地調査が行われ、最後に行政書士会連合会による審査があります。

各ステップには時間と手間がかかるかもしれませんが、しっかりと準備を重ねれば、スムーズに手続きを進めることができます。以下ではそれぞれのステップについて解説します。

申請者や履歴書などの必要書類を提出する

行政書士試験に合格した後、必要な手続きをスムーズに進めるためには、提出書類の準備が重要です。各単位会のホームページでしっかりと確認し、漏れなく書類を揃えましょう

必要書類には、以下のようなものがあります。

書類名

備考

行政書士登録申請書

規定用紙あり

履歴書

規定用紙あり

誓約書

規定用紙あり

都道府県行政書士会への入会届

規定用紙あり

行政書士試験合格証

戸籍抄本

住民票記載事項証明書

登記されていないことの証明書

法務局の本局で取得

身分証明書

本籍地の市区町村役場で取得

事務所の使用権限を証する書面

賃貸借契約書など

事務所の写真・位置図

各行政書士会によって異なる

本人の証明写真

書類の指定の部分に添付

書類には、登録申請書や誓約書、合格証明書などが含まれます。単位会によって若干の違いがある可能性もあるので、提出前に確認を怠らないようにしましょう。書類が揃ったら、事前予約が必須の単位会が多いので、予め予約を入れておきます。

一部の単位会では事前チェックを受ける必要があり、その後に本申請の提出日時が決まります。所属予定の単位会の受け付け方法をよく確認し、手続きを円滑に進めましょう。

行政書士会による現地調査

行政書士試験に合格した後、独立開業を目指す場合は、事務所設立の際に所属する行政書士会による現地調査が行われます。

この調査は、事務所の適切性を確認するためのものですが、写真提出で済む場合もあります。また、既存の事務所や法人に勤務する場合は、現地調査は不要で、雇用契約書等の提出が求められます。

このように、手続きは活動形態によって異なるため、行政書士としてどういう形で業務を遂行するか、しっかりと計画を立ててから、準備を始めることが必要不可欠です。

日本行政書士会連合会による審査

行政書士試験に合格した後、行政書士として活動するためには、所属する都道府県の行政書士会に申請を行う必要があります。この申請により、日本行政書士会連合会にも情報が送られ、審査が実施されます。

この審査に合格すると、行政書士名簿に登録され、正式に行政書士としての地位を得ることができます。審査には約1ヶ月かかるため、早期の開業や就職を希望する場合は、迅速な申請が重要です。

ただし、行政書士資格の取得には、いくつかの制限事項があります。次のような場合は、審査を通過することができません。

  1. 未成年である 
  2. 成年被後見人、被保佐人 
  3. 破産者で復権を得ていない場合 
  4. 禁固以上の刑を受け、その執行が終わって3年が経過していな場合 
  5. 公務員で懲戒免職処分を受けて3年が経過していない場合 
  6. 行政書士登録の取り消し処分を受け、3年が経過していない場合 
  7. 行政書士業務禁止の処分を受け、3年が経過しない場合

合格しても行政書士登録しない人がいるのはなぜ?

行政書士試験に合格しても、必ずしも行政書士として登録する必要はありません。実際、行政書士試験に合格した人でも、行政書士に登録しない人は少なくありません。

行政書士登録をしない何らかの理由や、登録しないことによるメリットがあるのでしょうか。

登録費・維持費が高すぎるから

行政書士試験に合格しても、多くの人が登録を避ける理由の一つは、登録にかかる費用が大きな経済的負担になるためです。都道府県によって多少の違いはありますが、登録には約30万円の初期費用がかかります。

さらに、登録後も毎年約10万円程度の年会費が必要となるため、継続的な出費が見込まれます。このような高額な費用負担が、登録を見送る人が多い主な理由といえます。

手間がかかるから

行政書士の資格取得後、実際に登録しない人がいる理由の一つは、書類準備などの手続きが面倒であることです。登録には多くの書類が必要で、その取り揃えに非常に手間がかかります。

例えば、事務所が賃貸物件の場合は、貸主からの同意書が必要になるなど、所在地によって異なる書類があります。

状況に応じて書類を準備しなければならないため、時間的にも精神的にもストレスがかかり、この面倒な手続きが登録を躊躇する大きな理由となっているのです。

有効期限がないから

行政書士試験に合格しても、すぐに行政書士として活動する必要はありません。合格後はいつでも登録が可能なので、自分のキャリアプランに合わせて登録のタイミングを選べます

例えば、合格から10年以上経ってから登録し、新たな人生をスタートすることもできます。定年退職後に行政書士として活躍するのも一つの選択肢です。この柔軟な制度があるおかげで、合格者は自分のベストなタイミングで行政書士登録を行うことができます。

そのため、合格しても直ちに登録する人は少ないかもしれません。自身の準備が整った時に登録できるのが、この試験の特徴なのです。

一般企業に就職するケースも多いから

行政書士試験に挑戦する理由は人それぞれ異なります。新たに行政書士として働くことを目指す人もいれば、就職や転職活動の際に自信をつけるためだけに受験する人もいます。

また、既に企業に勤めている人の中にも、行政書士の実務を学ぶ必要がなく、単に組織内でのスキルアップを目指して受験する人がいます。彼らにとっては、行政書士の登録自体がメリットとは限りません。

そのため、行政書士試験に合格しても、実際に行政書士として働くつもりがない人は、登録を見送ることもあります。一般企業で働きながら自己研鑽を図るだけの目的なら、行政書士登録は必須ではないのです


行政書士登録を抹消するには?

行政書士を廃業する際には、業務から引退する場合や死亡した場合など、行政書士登録の抹消手続きが必要となります。

この手続きを怠ると、会費が継続して発生してしまう問題が起きます。そのため、適切に行政書士登録を抹消する必要があります。

ここでは、行政書士登録抹消の手続き方法と必要な書類について説明します。

行政書士登録を抹消する流れ

行政書士の登録を抹消する際には、一連の手続きが必要です

まず、行政書士会に「行政書士登録抹消届出書」を提出し、登録証も返却します。

次に、未払金の清算と未収金の回収など、経営上の金銭的な問題を解決します。

その後、税務署に「廃業届」や「青色申告の取りやめ届出書」を提出し、課税事業者の場合は消費税の還付申請と「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出も行います。

最後に、年の途中で廃業した場合は確定申告の手続きも必要になります。

これらの手続きを適切に行うことで、無事に登録抹消を完了させることができます。

抹消に必要な書類

行政書士の登録を抹消する際は、所属する行政書士会に対し、必要書類を提出する必要があります。

必要書類は、行政書士登録抹消届出書(廃業用)、届出済証明書返還届(入管業務を行っている場合)、社労業務取扱証明書返還届出書(社労業務取扱の証明を受けている場合)になります。

また、届出書提出の際に以下のものを返還します。

書類名

備考

行政書士登録証

行政書士証票

各行政書士会の会員証

職務上請求書(統一用紙)

該当者のみ

届出済証明書

該当者のみ

社労業務取扱証明書

該当者のみ

後見人候補名簿登載証明書

該当者のみ

著作権相談員カード

該当者のみ

上記は東京都行政書士会のケースであり、単位会によっては必要書類が異なる場合があるため、所属している行政書士会のホームページを確認するようにしましょう。

行政書士のキャリアパス

行政書士試験に合格したからといって、キャリアについて考えるのは終わりではありません。行政書士の仕事は多岐にわたり、自分がどのような道を歩みたいかによって、働き方は大きく変わってきます。

自分の望むキャリアに必要なスキルや経験は何かを理解し、最適な道を探していくことが重要です。行政書士試験の合格は、その第一歩に過ぎません

一般企業や事務所に所属する

国家資格である行政書士の資格を取得した後は、一般企業や行政書士事務所に所属することが一般的なキャリアパスの一つです。

企業に所属した場合は、法務部門や総務部門で契約書作成や登記業務などを担当し、専門知識を活かすことができます。行政書士の資格は就職や転職の際に魅力的な武器となり、企業からの評価も高くなります。

さらに、他の国家資格との組み合わせで市場価値を高めることも可能で、より良いキャリアを描くための戦略になるでしょう。

行政書士事務所を開業して独立する

行政書士となるには、特別な実務経験は必要ありません。資格を取得し、行政書士会に加入すれば、自身で事務所を開業することも可能です。

行政書士の日常業務は主にデスクワークですが、一人で作業する時間が多く、独立開業が求められる性質の仕事です。同時に、クライアントとの関係構築、調整、交渉、さらに新規顧客獲得のための営業活動も自ら行う必要があります。

しかし、それが開業の魅力でもあります。自分で事務所を運営し、直接クライアントと関わることは、行政書士を目指す人にとって重要なキャリアパスの一つです。そのため、資格取得後は自身の力を試す場として、開業を視野に入れることが多いのです。

合格後も勉強は続く

行政書士試験に合格した後も、実際に行政書士として働く予定がある方は、今後の業務に向けて勉強が欠かせません。ここでは、試験合格後、実際に業務を始めるまでに改めて勉強しておきたい分野をご紹介します。

相続法

行政書士として実務を行う上で、相続や遺言に関する相談は避けて通れません。事務所の所在地によっては、行政書士が無料相談会で受ける相談の大半が相続や遺言、成年後見に関するものとなる場合もあります。

そのため、業務内容に関係なく、親族法や相続法の基礎知識を整理しておくことが重要です。開業までの期間を活用し、行政書士試験で学んだ知識を見直し、確実に身につけておくことをお勧めします。

会社法

行政書士試験の準備では、民法の親族・相続法と商法や会社法の間で、勉強の偏りが生じがちです。商法や会社法は出題数が少ないため、軽視されがちですが、実際の業務では重要性が高まります。

特に会社法の知識は、株式会社や合同会社の設立案件で必須となり、定款作成などの準備書類作成には専門知識が求められます。

インターネット上の模範定款に頼るのではなく、具体的な案件に適切に対応するためには、行政書士自身の会社法理解が不可欠です。合格後も会社法の継続学習が重要なキャリア形成につながるでしょう。

特定行政書士も視野に入れよう

行政書士のキャリアは多様な選択肢を有しています。一般的な業務に加え、特定行政書士としてスキルを磨き上げることもできます。

特定行政書士は、行政の判断に対する不服申し立ての代理手続きを担当する資格を持ちます。この資格は一般の行政書士には認められておらず、特定行政書士のみが有しています。

特定行政書士になるには、まず行政書士登録を行い、その後、行政書士会の特定行政書士法定研修を修了する必要があり、さらに考査試験に合格しなければなりません。この考査試験は決して易しいものではありません。受験者全員が既に行政書士としての専門性を持つ中で、合格率は6~7割程度と言われています。

行政書士合格後の登録まとめ

行政書士資格を取得した後は、業務を行うために登録が必須となります。

登録には費用と年会費が発生しますが、登録することで信頼性が高まり、業務範囲も広がるなどのメリットがあります。

スムーズに行政書士登録を進めるためには、登録の重要性と手続き、費用、メリットなどを十分に理解しておくことが大切です。