DX・リスキリングで産業構造が変わる|企業研修を支援する株式会社TOASUに取材
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デジタルトランスフォーメーション(DX)とリスキリングが進む中、日本の産業構造は急速に変化しています。この潮流に乗り遅れないため、多くの企業が従業員のスキルアップを図る企業研修に力を入れています。今回は、企業研修を通じてこの変革を支援する株式会社TOASUに取材し、その取り組みや効果について詳しく伺いました。
株式会社TOASUの概要
本日はお忙しい中、貴重な機会をいただき誠にありがとうございます。株式会社ベンドの近藤と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
株式会社TOASUで代表取締役を務めています宮田と申します。本日はよろしくお願いいたします。
同じく株式会社TOASUの大東と申します。よろしくお願いいたします。
まず初めにTOASU様の概要についてお聞かせいただけますでしょうか。
TOASUという会社の設立の背景から簡単にお伝えすると、1960年、戦後の復興を科学技術の向上で支えるという方針に基づき「日本科学技術振興財団」が設立されました。これが後にTOASUの母体になります。
日本科学技術振興財団では、1964年に創設した科学技術館を拠点として、科学技術普及・啓発及び理系人材育成のための幅広い活動を全国規模で行い、日本の産業競争力強化に貢献してきました。
その後、1971年に「日本技能教育開発センター(JTEX)」が日本科学技術振興財団から分離して誕生しました。JTEXでは主に社会人向けに、社会で通用する技術ノウハウを教える教育事業を行っていました。
そして1995年、JTEXの研修・コンサル事業が独立する形でジェイテックスマネジメントセンター(JMC)が設立されました。同年Windows95 が発売され、今後さらにIT需要が伸びると予想しておりましたので、従来の人材教育にIT関連の研修を加える形で教育内容の強化・アップデートを行って参りました。
JMCは2022年に社名を変更し、現在のTOASUという名前になっています。
このように、時代の要請に応えながらも長年に渡り一貫して「人材育成」に携わってきているのが、TOASUという会社になります。
高度成長期から人材の育成に携わっておられたのですね。
TOASU様が現在提供しているサービスはどのようなものなのでしょうか。
弊社が従来から提供している主なサービスは「ビジネススキル系の研修」になります。BtoBの事業で、依頼のあった企業様に対して研修サービスを提供するものとなります。
研修の内容は画一的ではなく、顧客からのヒアリングを通してカスタマイズして組み立てていきます。
主な顧客は大手企業が中心で、業界としてはITが6割、製造が3割、その他1割となっています。また、昨今の動向に対応するためにも、現在はIT関連の研修(DX研修等)やリスキリング研修も行っています。
これらの幅広い分野に渡る研修はこれまで一社単位で実施する研修であるプライベート研修としてご提供していましたが、本年からは個人毎にネットワーク経由で当社HPから直接申し込めるオープン研修(Zoom配信)としてもご提供しております。
従いまして、これまで当社の研修を活用し辛かった中堅・中小企業のお客様や地方のお客様、更には企業に属さない個人のお客様にもご活用して頂けるようになりました。
政府の「5年で1兆円のリスキリング投資」の与える影響
最近、日本政府がリスキリングに1兆円の予算を投入すると発表しましたが、この政策についてTOASU様としてどのような見解をお持ちですか?
また、こうした政策はTOASU様にどのような影響を与えていますか?
政府はこのリスキリングに5年間で1兆円の投資をしようと考えています。この政策の前提には、自動車業界の構造転換や社会全体のデジタル化の波(リモートワーク、業務のデータ化)などがあげられます。こうした社会の変化に適応するには、個々人がITのリテラシーを向上させて社会に順応していくほかありません。
当社を含めたリスキリング事業は、単なるビジネスとしてだけではなく、産業構造の変革を手助けするための社会活動の一環という認識を持っています。
また、政府が用意したBtoB向けの助成金として、厚生労働省が行っている「高度IT人材育成」のための助成金があり、弊社でも新人研修などでこういった制度を活用しています。この制度では大手企業は60%、中小企業では75%の助成金をもらうことができます。
経済産業省が行っているBtoC向けの助成金制度もあります。この制度では、まず初めに対象者はキャリアコンサルティングを受けます。次に研修を行い、それが終わると人材紹介会社に登録して転職をする流れとなります。
現状、既存の産業に人口が集中し、IT業界は人材不足という課題があります。この制度では、必要な業界に必要な人材を集めることを目標に人材の流動化を行おうとしています。
こういった制度を受け、弊社としましても、企業様に向けた研修だけでなく、個人に向けた研修のご用意を行なっております。
日本のDXの実態と課題
現在ではコンサルティングファームなどに対して数多くの企業からDXの支援依頼が殺到していると耳にします。こうした状況の中で、DXが日本の企業に与える影響について、TOASU様はどのような見解を持っていますか?
また、TOASU様の研修プログラムでは、企業のDX化をどのような形でサポートしていますか?
前提として、私はIT企業とそれ以外の企業ではDXの捉え方が異なっていると考えています。
現状、IT企業はDXをソリューションできる人材育成にかなり苦労しています。これは、テクノロジーの急速な進歩により、新技術の習得やコンサルティングできる人材不足が原因となっています。
またIT企業以外の業種に目を向けると、現状DXを活用した事業には、オムニチャネルを利用した小売販売やデジタルバンキング、遠隔医療などがあげられます。しかし、企業はこうしたDXが顕在化された事業をまだ多く見いだせていないことから、DX自体、社会全体としてまだまだ取り組めていない、取り組み方が分からないという部分が多いと感じています。
特に中小企業では資金や技術に限界があり、外部の専門機関との連携や公的支援の活用が求められます。
こういった現状の中、弊社は永年培われた広範囲な講師ネットワークの中からDX分野に精通した講師による研修を提供することができます。また、先ほども申し上げましたが、弊社の研修サービスは顧客へのヒアリングを通して研修内容をカスタマイズできるので、そういった点も魅力になると思います。
実際、弊社の研修の満足度は非常に高く、大変多くの企業様で毎年継続して研修を発注いただいております。
TOASUの提供する研修プログラムの特徴と今後
TOASU様の研修プログラムが他社と異なる点は何ですか?
特に人気の研修や、効果的だと感じられる研修方法を詳しく教えてください。
弊社の研修プログラムで特徴的な講座は「三社合同プログラム」というものになります。このプログラムはモデルケースを活用して三社で提案等の競合を行って頂きますので、より実践的な内容であるのと同時に、他社との交流を通して自身を客観視できることが魅力です。
研修内では、課題や人物設定がはっきりしているため、よりリアルな空間を提供できます。また、その業界の第一線で活躍している方を講師としてお招きするので、運営がごたつかないのも魅力の一つかと思います。このようなプログラムは他社にはなかなか見られない弊社独自のものだと思います。
「三社合同プログラム」は参加いただく方の熱量が非常に大きいことが特徴的で、他社との交流を通してよりスキルアップの必要性を感じ、主体的に学びを深めている方が多いです。弊社としてはこのような刺激的な環境を提供できていることを大変うれしく感じております。
近年のリスキリングのトレンドを踏まえたTOASU様の今後の展望をお聞かせいただきたいです。
今後はeラーニングを含めたデジタル化を進めていき、ライブ研修との組み合わせによるブレンディット研修等の提供も含めより効果の高い研修を実現することを目指しています。
例えば、弊社では昨年からの取り組みとしてLMSの活用というものがあります。LMS機能により、例えば研修後のリフレクションを提供できるようになります。
研修の参加者の方に、例えば研修から1ヶ月後にメールで研修の復習を促すような内容を送ることによって、受講者の能力の定着が期待できます。
また、弊社はビジネス系の研修が得意なのですが、こうした仕組みを活用し、近年の高い需要に応えたDXやリスキリングといった「IT関連の研修」にも力を入れる所存です。
また、弊社は学研のグループ企業ということもあり、今後はシニア層のリスキリングにも踏み出すことを構想しています。
シニア層の方の中には、新しいことを学ぶことに対してある種の諦めのような感覚を抱いている方も少なくありません。そういった高齢者の方の心のバリアを壊して、新たなことに挑戦するきっかけに私たちがなれたらと考えています。
本日は貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。
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