介護職員の給料はいつから上がる?2024年度の新処遇改善と今後の展望を解説
更新
介護職員の待遇改善は長い間課題となっていましたが、近年その実現に向けて動きが出てきました。
この記事では、2024年度からの新処遇改善による介護職員の給料アップの内容や対象者、今後の展望について解説します。
介護職の給料は上がっている
日本の介護職の給料は一般に「低賃金」と認識されていますが、近年その状況に変化が見られてきています。
介護職の給料は年々1~2万円近く増加
以下は介護職の給料の推移と前年度との差額を表したものです。
年月 | 平均給与額(当年) | 平均給与額(前年) | 差額 |
---|---|---|---|
2021年9月 | 323,190円 | 315,410円 | +7,780円 |
2020年2月 | 325,550円 | 307,430円 | +18,120円 |
2018年9月 | 300,970円 | 290,120円 | +10,850円 |
出典:厚生労働省『令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要』
厚生労働省の調査結果によると、介護職員の平均給与額は年々1~2万円近く上昇していることがわかります。
実際、ここ数年のデータを見ると、介護職の給料は確かに上昇傾向にあることがわかります。これは、国が介護職への賃金改善を重要課題として位置づけ、様々な施策を進めてきた成果だと言えるでしょう。
しかし、他の業種と比べると依然として低い水準にあることも事実です。介護職の給料改善は今後も継続して取り組むべき課題であると認識する必要があります。
2024年6月から新処遇改善スタート
介護職員の待遇改善が2024年6月から本格的に始まりました。これは、3年ごとに介護保険制度の見直しを行う介護報酬改定によるものです。
過去の例を見ると、介護報酬が改定されるたびに介護従事者の給与も改善されてきました。
介護事業所の収入は介護報酬に大きく依存しているため、介護報酬が引き上げられれば、職員の給与アップにもつながるのです。
介護士はなぜ賃上げされる?
介護職の給料が上がる理由は、長年続く介護士不足の解消と介護職の重要性への社会的な認識の高まりにあります。
給与水準の低さが介護士不足の根本原因とされてきたため、賃金アップにより人材確保と定着を図ろうとしています。
また、新型コロナウイルス禍で介護士や看護師の存在価値が再認識され、彼らに適切な報酬を支払うことで退職を防ぎ、新規人材を呼び込もうという狙いがあります。
2024年6月から介護報酬は改定される
2024年6月から、介護報酬の改定が行われました。
この改定では、現在の「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの評価基準が統合され、新しく「介護職員等処遇改善加算」が設けられます。
この改定は、介護事業者の事務手続きを簡素化すると同時に、利用者に対してもわかりやすい制度となることが期待されています。
また、介護事業者には、より柔軟な事業運営が可能になるでしょう。
具体的な内容については、以下で紹介しています。
新加算の「介護職員等処遇改善加算」の全体像
2024年6月から予定されている介護報酬の改定により、「介護職員等処遇改善加算」という新しい仕組みが導入されました。
この制度は、現在ある複数の加算制度を一本化したもので、介護職員の待遇改善をさらに進めることを目的としています。
新制度は4段階に分かれており、それぞれⅠからⅣまで異なる加算率が設定されています。すべての区分において、介護職員の基本給与のアップやベースアップが含まれており、基本的な待遇改善が図られます。
さらに、より高い区分では、加算率が上がる要素として、職場環境の改善、生産性の向上、資格や経験に基づく昇給制度の整備、そして経験豊富で技能の高い職員の充実度が考慮されます。このように、職場全体の質を高める努力が報われる仕組みとなっています。
また、以前の「ベースアップ等支援加算」を受けていなかった事業所に対しては、新制度で増える加算額の一部、具体的には2/3以上を職員の月給アップに充てることが義務付けられています。これにより、全ての事業所で賃金改善が進むことが期待されています。
新加算では職種間の賃金配分ルールを統一
2024年6月からの「介護職員等処遇改善加算」では、介護職員を中心に賃金を配分することが基本となりますが、経験や技能に応じて賃金を重点的に支払うことも推奨されています。
また、事業所ごとに柔軟な賃金配分が行えるようになり、職種間の賃金格差是正が期待されます。
さらに、書類作成の簡素化により、事業所の負担も軽減されます。この改定を通じて、より公平な賃金ルールが確立され、介護従事者の処遇改善が図られる見込みです。
新加算では改定率+1.59%
今回の改定では、介護報酬が1.59%引き上げられることになりました。この引き上げ分のうち、0.98%が介護職員の処遇改善に、残りの0.61%が各種介護サービスの基本報酬や他の加算などに充てられます。
さらに、処遇改善に関連する3つの加算制度を一本化することで期待される賃上げ効果や、水道光熱費の基準費用額の増額による介護施設全体の収入増加なども考慮されています。これらの要因により、追加で0.45%相当の実質的な改定効果が見込まれています。
結果として、公式の改定率1.59%と、これらの付加的な効果0.45%を合わせると、実質的には2.04%相当の引き上げとなりました。
2024年介護報酬改定で注意するべきポイント4選
ここまでご紹介してきた介護報酬の改定での注意するべきポイントなどは、どういったことなのでしょうか?
6000円の賃上げは終了済
厚生労働省は、2024年の介護報酬改定に向けて、2024年2月から5月までの4カ月間介護職員の収入を一時的に底上げする措置を講じていました。
具体的には、介護職員の給与に対して約2%相当、月額平均で6,000円程度の補助金を支給するというものです。
なお、現在は2024年6月からの「介護職員等処遇改善加算」に伴って、月額6,000円の賃上げ措置はすでに終了していることに注意が必要です。
処遇改善加算をもらうには事務所の申請が必要
介護職員の処遇改善のための加算を受け取るには、各介護事業所が申請する必要があります。2024年の介護報酬改定では、この点に特に注意が必要です。
厚生労働省によると、約90%以上の事業所が改定前の介護職員ベースアップ等支援加算を取得しているため、改定後もほとんどの介護職員は加算を受け取ることができるでしょう。
しかし、まだ加算を申請していない事業所もあるため、自身の勤務する事業所が申請済であるか確認を取ると良いでしょう。
対象者は主に介護職員・従事者
支給対象は介護職員であり、介護現場で直接介護に関わりサポートする人々を指します。そのため、生活相談員やケアマネジャーなど、直接介護を行わない職種は対象外です。
しかし、今回の施策では事業所の判断で介護職員以外の職種の処遇改善に給付金を配分することも可能です。もし、直接介護を行うことがある職種であれば、給付金の割り当てについて確認してみましょう。
新加算の手当では物価高に対応できない
2024年の介護報酬改定では、物価上昇に十分に対応できないおそれがあります。最近の物価高騰により、国民生活は厳しさを増しています。具体的には、2024年度の改定率が1.59%、実質的な引き上げが2.04%であるのに対して、2023年から2024年の価上昇率は2.7%と高く、給与の上昇を物価上昇が上回る状況にあります。
この問題は介護職に限らず、様々な職種で給与上昇が物価上昇に追いついていないのが実情です。しかし、介護職の場合は報酬改定が3年に一度しかないため、低い改定率は深刻な影響を及ぼします。
今後も介護職の給料は上がる予定
高齢化が進む日本社会において、介護サービスの需要と供給のバランスが大きな課題となっています。2025年以降、介護職員の給与上昇が見込まれています。
これは、2025年には65歳以上の高齢者人口が約3,657万人に達すると予測され、介護需要が急増すると考えられているためです。
介護業界では慢性的な人材不足に悩まされています。現在でも人手不足は深刻ですが、今後の介護需要の増加によりさらに状況が悪化すると予想されます。
新処遇改善加算による賃金アップ
2024年6月からスタートした新たな処遇改善策により、介護職員の賃金引き上げが期待されています。この施策は、介護現場で働く人々の給与を一定水準以上引き上げることを目指しており、加算率の増額や配分方法の見直しが行われる予定です。
具体的には、2024年度には2.5%、2025年度には2.0%の賃金アップが見込まれています。介護職員の給与水準はこれまで決して高くありませんでしたが、この改善策により着実な処遇改善が図られることになります。
厚生労働省による給料改善案
高齢化が進む中、介護サービスの需要は増大しています。
一方で、介護職の難しさや低賃金がイメージされており、人材不足が深刻な課題となっています。
厚生労働省はこの問題に対処するため、「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計について」において、介護職員の給与を月額1万2,000円引き上げる改善案を掲げ、魅力を高めることで人材確保を図ろうとしています。
2024年度の介護報酬改定で残された問題
介護従事者の処遇改善は社会的な課題として注目されており、2024年度の介護報酬改定で改善しきれなかった問題は数多くあります。
例えば、ケアマネジャーや介護業界で働く看護師は、給与が低いことにも関わらず、処遇改善の対象にならないことが多いことが問題視されています。
また、2024年度の介護報酬改定で給与アップが見込まれますが、給与水準は依然として全産業平均を下回っており、従事者が本当に求める水準には届かないと見られています。
これらの問題の解決には、2025年以降の動きが注目されるでしょう。
介護職が給料アップするためには
給与アップにつながる上位資格を取得する
介護職員の給料アップを実現するためには、スキルアップによる上位資格の取得が有効な方策の一つとなります。資格を持つことで、専門性と信頼性が証明されるからです。
資格は業務に対する深い理解と知識があることを裏付け、それゆえに高い給与を得られる可能性が高まります。
介護福祉士の資格を既に持っている方でも、さらに専門的なスキルと知識を身につけるために上位資格を取得し続けることが重要です。そうすれば、給与アップだけでなく職位の昇進も期待できます。
以下では給与アップにつながる2つの上位資格を紹介します。
介護福祉士の資格を取る
1つ目は介護福祉士の資格です。
介護福祉士は、介護に関する専門的な知識と技術を持ち、利用者のケアプランの作成や他の職員の指導・管理も行う重要な役割を担っています。
介護福祉士の資格を取得していると、一般的な介護士より高い給料をもらえる可能性が高く、スキルアップやキャリアアップの機会が多いことから、介護の分野で活躍したい方にとって魅力的な資格と言えます。
実際に令和4年度における介護士全体の給料は317,540円であるのに対し、介護福祉士の給料は331,690円と月に約1.5万円の差があります。
ケアマネージャーの資格を取る
2つ目はケアマネージャーの資格です。
ケアマネージャーは、利用者や家族のニーズを的確に把握し、適切なケアプランを作成する重要な役割を担います。介護事業所と利用者の橋渡し的な存在で、コミュニケーション能力が求められます。
ケアマネージャーの平均月収は約37万6,770円と、介護福祉士より4万円ほど高くなる見込みです。
ただし、資格の取得には、介護福祉士の資格と5年以上の実務経験が必要です。ケアマネージャーの資格取得は、給与アップだけでなく、スキルとキャリアの向上にも役立つでしょう。
管理職にキャリアップする
管理職につくことも介護の仕事で収入を上げる一つの方法です。
介護福祉士の資格を持っていれば、施設長や管理者といった上位の役職に就くことができます。管理職となれば、その責任と専門性が評価され、給与に反映されます。
令和4年度の厚生労働省の調査では、介護事業所の管理職の平均給与は月額35万6,570円となっています。介護福祉士が管理職に昇進すれば、給与が4万円近く上がる可能性があるということです。
夜勤の回数を増やして夜勤手当をゲットする
介護職員の給与アップには、夜勤の機会を増やすことが有効な手段の一つです。
特別養護老人ホームや老健施設では、夜勤手当が支給されるため、夜勤回数を増やせば収入アップにつながります。
具体的には、1回の夜勤で3,000円から6,000円の手当が出ます。常勤の介護職員は月に4〜5回程度の夜勤が一般的ですので、これを増やせば収入は自然と上がります。
また、夜勤専従として働くこともできます。労働時間は少なくなりますが、単価が高いため、工夫次第で給与を大幅にアップできる可能性があります。
他の職場や他業種に転職する
給与の高い施設に転職する
より良い待遇を求めて給与の高い介護施設へ転職することは、キャリアアップのための有効な選択肢です。
介護職の給与は、施設の運営形態や規模、立地により大きく異なるため、同じ職種でも勤務先によって格差が生じるのが一般的です。
経験やスキルを正当に評価してくれる施設を見つけることで、単に収入を増やすだけでなく、やりがいややる気の向上、長期的なキャリア形成にもつながります。賃金面の向上は労働意欲を高める重要な要素であり、生活の質の向上にも貢献できるでしょう。
他業種に転職する
介護職員の平均月収は約31万円と一般企業とほぼ同等ですが、昇給や賞与面では一般企業の方が有利な傾向にあります。
そのため、給与面で不満を感じる介護職員にとって、異業種への転職は収入アップの選択肢となり得ます。未経験の転職にはハードルがあるものの、十分な準備と対策次第では成功する可能性があります。
成長産業への転職も視野に入れ、自身のキャリアを見つめ直し、スキルと経験を最大限に活かせる仕事を見つけることで、給与アップを実現することができるでしょう。
介護職の転職なら転職エージェントの活用がおすすめ
介護職の方で給与アップを目指して転職を考えている場合、転職エージェントの利用をお勧めします。
エージェントは非公開求人情報の提供や、年収アップにつながる適切な企業の紹介だけでなく、履歴書作成のサポートや面接対策も行います。これは未経験分野へのキャリアチェンジや、さらなるスキルアップを目指す転職にも役立ちます。
介護業界は人手不足が深刻で、求人数は多いものの、働きやすい職場を見つけるのは簡単ではありません。エージェントを介すことで、給与水準の向上はもちろん、福利厚生や勤務体制の改善も期待できます。
経験豊富なコンサルタントが情報収集から交渉まで一貫してサポートしてくれるため、単独では難しい条件をクリアできる可能性が高まります。
介護職の方のキャリアアップに大きく貢献する転職エージェントの活用を、ぜひ検討してみてください。
これまでの介護職給料アップの政策
2024年6月からの「介護職員等処遇改善加算」の開始までは、「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つが実施されていました。
ここでは、これまで実施されていた3つの加算制度について紹介します。
介護職員処遇改善加算
介護職員の待遇改善と人材確保を目的とする「介護職員処遇改善加算」は、適切な賃金体系と研修制度を整備し、スタッフの処遇改善に取り組む事業所に対して、国から加算された介護報酬が支給されます。
この制度により、介護職員の給与アップが実現し、介護の仕事への魅力向上と、より質の高いサービス提供が期待されていました。
介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの違い
介護職員の処遇改善を目的とした加算制度には、3つの水準があります。水準が高くなるほど、取り組む項目が増え、難易度が高くなりますが、支給額も増えます。
具体的には、加算Ⅰは介護職員1人あたり月額3万7,000円相当、加算Ⅱは介護職員1人あたり月額2万7,000円相当、加算Ⅲは介護職員1人あたり月額1万5,000円相当になります。
対象職員
給与アップの対象は、利用者や入居者の世話を直接行う介護職員です。
正社員だけでなく、パートタイムや派遣社員も含まれます。
また、介護業務を一部兼務している他の職種の人も対象となります。
配分の決まり
配分方法は2022年に導入された賃上げ制度と同じ枠組みを利用しています。主に介護職員を対象としていますが、他の職種にも柔軟に適用することが可能です。
分配の際には、勤続年数などの客観的な基準を用いることができます。ただし、具体的な配分方法は各事業所の裁量に委ねられているため、詳細は勤務先や希望する就職先に直接確認するのが賢明です。
介護職員特定処遇改善加算
「介護職員等特定処遇改善加算」は、熟練した介護職員の処遇改善を図り、優秀な人材の確保と定着を目指す制度です。
この制度により、介護福祉士の年収が440万円以上となるよう、月給が最低8万円アップします。事業者は都道府県に申請を行い、要件を満たせば介護職員への手当て支給のための資金を受け取ることができます。
この制度は2019年に開始され、介護職員が安心して長期間働き続けられる給与水準を実現し、離職を防ぐことを目的としています。
対象職員
介護職員の処遇改善を目的とした「介護職員特定処遇改善加算」の対象者は、主に高い経験と技能を持つ介護職員です。
介護福祉士の資格を持ち、その分野での経験が豊富な職員や、長年にわたり現場で働いている職員、リーダーシップのあるリーダー職の職員が該当します。
具体的な基準の一例として、「勤続10年以上の介護福祉士」がありますが、それ以外でも優れた実績があれば対象となる可能性があります。
この制度により、単に資格を持つだけでなく、実際の能力が評価され、処遇改善につながります。事業所の約77%が特定処遇改善加算を取得していることから、介護の質向上への意識が高いことがうかがえます。
配分の決まり
特定処遇改善加算には2つの区分があり、施設ごとに加算率が異なります。加算対象となるおもなサービスと加算率は、以下の表のとおりです。
サービス区分 | 加算(Ⅰ) | 加算(Ⅱ) |
---|---|---|
訪問介護 | 6.3% | 4.2% |
夜間対応型訪問介護 | 6.3% | 4.2% |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 6.3% | 4.2% |
通所介護 | 1.2% | 1.0% |
地域密着型通所介護 | 1.2% | 1.0% |
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 3.1% | 2.3% |
介護老人福祉施設 | 2.7% | 2.3% |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 2.7% | 2.3% |
(介護予防)短期入所生活介護 | 2.7% | 2.3% |
介護老人保健施設 | 2.1% | 1.7% |
(介護予防)短期入所療養介護(老健) | 2.1% | 1.7% |
出典:厚生労働省 『2019年度介護報酬改定について~介護職員の更なる処遇改善~』
介護職員に対する加算率は、訪問介護や夜間対応型訪問介護などで加算(Ⅰ)が6.3%、加算(Ⅱ)が4.2%と高めに設定されています。
通所介護や地域密着型通所介護はそれぞれ1.2%と1.0%です。認知症対応型共同生活介護では加算(Ⅰ)が3.1%、加算(Ⅱ)が2.3%となっています。
介護老人福祉施設は加算(Ⅰ)が2.7%、加算(Ⅱ)が2.3%です。
全体的に、サービス区分ごとに異なる加算率が設定され、介護職員の給与改善が図られています。
介護職員等ベースアップ等支援加算
令和4年10月の介護報酬改定で新たに導入された「介護職員等ベースアップ等支援加算」は、介護職員の給与を月額約9,000円(概ね3%程度)引き上げることを目的としています。
注目すべき点は、この給与アップが介護職員だけでなく、介護現場で働く他の職種にも適用される可能性があることです。
これにより、介護の仕事の魅力を高め、人材確保と職員の定着につながり、ひいては介護サービスの質の向上が期待できます。
対象職員
この政策の主な対象は介護職員ですが、チームワークを重視し、介護サービスに携わる全ての職種を対象とすることで、介護業界全体の待遇改善と質的向上を図ろうとしています。
介護職員のみならず、リハビリ職、看護師、ヘルパー、管理者、事務職員などの処遇改善も可能となり、包括的な視点から介護業界を支援する政策となっています。
配分の決まり
「処遇改善加算」や「特定処遇改善加算」と同様に、介護サービスごとに設定された一律の加算率を介護報酬に乗じる形式です。
サービス区分 | 加算率 |
---|---|
訪問介護 | 2.4% |
夜間対応型訪問介護 | 2.4% |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 2.4% |
(介護予防)訪問入浴介護 | 1.1% |
通所介護 | 1.1% |
地域密着型通所介護 | 1.1% |
(介護予防)通所リハビリテーション | 1.0% |
(介護予防)特定施設入居者生活介護 | 1.5% |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 1.5% |
(介護予防)認知症対応型通所介護 | 2.3% |
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 | 1.7% |
看護小規模多機能型居宅介護 | 1.7% |
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 2.3% |
介護老人福祉施設 | 1.6% |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 | 1.6% |
(介護予防)短期入所生活介護 | 1.6% |
介護老人保健施設 | 0.8% |
(介護予防)短期入所療養介護(老健) | 0.8% |
介護療養型医療施設 | 0.5% |
(介護予防)短期入所療養介護(病院等) | 0.5% |
介護医療院 | 0.5% |
(介護予防)短期入所療養介護(医療院) | 0.5% |
介護職員に対する加算率は、訪問介護や夜間対応型訪問介護などでは2.4%と高めに設定されています。
一方、介護老人保健施設や介護療養型医療施設では0.8%から0.5%と低めです。通所介護や地域密着型通所介護は1.1%、認知症対応型サービスは2.3%となっています。
これにより、介護職員の給与改善が多様なサービス区分に応じて行われています。
介護職の平均給与
介護職の給与は、近年の政府による処遇改善加算の拡充や人材確保の取り組みにより、着実に上昇傾向にあります。
全国の介護職の平均給与は月額約27万円となっており、経験年数や保有資格、勤務形態によって大きく変動します。ここでは、介護職の給与の実態と、2024年度からスタートする新たな処遇改善策について詳しく解説していきます。
介護職の常勤・非常勤の場合
厚生労働省の最新の調査結果によると、介護従事者の給与は職種によって大きな開きがあることがわかりました。常勤の介護職員の平均給与は月額31万8,230円ですが、非常勤の場合は12万330円と大幅に低くなっています。
介護従事者全体の給与水準は比較的低めで、専門性の高い看護師や理学療法士など他の医療職種と比べると明らかな格差があります。このような給与の違いが、介護業界の人手不足や離職者の増加につながっていると指摘されています。
介護職の資格別平均給与
以下は、介護職の平均給与を資格別に表したものです。
資格 | 年収(円) |
---|---|
介護福祉士 | 3,972,960円 |
実務者研修 | 3,629,160円 |
初任者研修 | 3,629,160円 |
保有資格なし | 3,224,160円 |
社会福祉士 | 4,201,440円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 4,521,240円 |
介護職の資格別年収は、介護支援専門員(ケアマネージャー)が最も高く4,521,240円、次いで社会福祉士が4,201,440円です。
介護福祉士は3,972,960円、実務者研修と初任者研修は共に3,629,160円です。保有資格なしの場合は3,224,160円となっています。介護職は資格によって年収に大きな差が見られます。
介護職の施設形態別平均給与
以下は、介護職の平均給与を施設形態別に表したものです。
施設名 | 平均給与額(月収) | 平均給与額(年収) |
---|
全体 | 317,540円 | 3,810,480円 |
介護老人福祉施設(特養) | 348,040円 | 4,176,480円 |
介護老人保健施設 | 339,040円 | 4,068,480円 |
訪問介護事業所 | 315,170円 | 3,782,040円 |
通所介護事業所(デイサービス) | 275,620円 | 3,307,440円 |
特定施設入居者生活介護事業所 | 313,920円 | 3,767,040円 |
認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム) | 291,080円 | 3,492,960円 |
介護職の給与は施設の形態によって大きな開きがあります。
施設別に見ると、特別養護老人ホームや老人保健施設の介護職員の平均月給は約35万円程度で最も高くなっています。
一方、デイサービスは最も低く、月収は約28万円程度となっています。
介護職の勤続年数別平均給与
以下は、介護職の平均給与を勤続年数別に表したものです。
勤続年数 | 平均年収(万円) |
---|---|
1年 | 約338.4万円 |
2年 | 約345.8万円 |
3年 | 約357.2万円 |
4年 | 約364.2万円 |
5年〜9年 | 約374.2万円 |
10年以上 | 約415.8万円 |
介護職員の給与水準は、経験年数に応じて上昇する一方で、その職務内容や専門性に比べて十分な待遇とは言えない現状があります。
新人職員の初任給は平均的な水準ですが、地域による差が大きく、ばらつきがあります。
経験を重ねるにつれ給与は上がっていきますが、他業種と比較すると低い水準にとどまっています。
介護職の年齢・男女別平均給与
以下は、介護職の平均給与を年齢・男女別に表したものです。
年齢 | 男性介護職の年収(万円) | 女性介護職の年収(万円) |
---|
20~24歳 | 約312万円 | 約307.9万円 |
25~29歳 | 約361.5万円 | 約336万円 |
30~34歳 | 約398.1万円 | 約348.4万円 |
35~39歳 | 約412.5万円 | 約345.6万円 |
40~44歳 | 約426.5万円 | 約359.5万円 |
45~49歳 | 約425.8万円 | 約369.2万円 |
50~54歳 | 約406.5万円 | 約363.6万円 |
55~59歳 | 約379万円 | 約363.8万円 |
60~64歳 | 約336.4万円 | 約332.9万円 |
65~69歳 | 約287.5万円 | 約310.8万円 |
介護職の平均年収は約359万円ですが、年齢や性別によって大きな開きがあります。
20代で約310万円、50代で約410万円と、年齢が上がるにつれて年収は上昇する傾向にあります。
また、男性の平均年収約387万円に対し、女性は約336万円と、男女間でも差があります。
パート・アルバイトの性別・年齢別平均給与
以下は、パート・アルバイトの介護職の平均給与を性別・年齢別に表したものです。
年齢 | 男性・平均給与額(円) | 女性・平均給与額(円) |
---|
全体 | 134,210円 | 119,880円 |
29歳以下 | 147,690円 | 135,800円 |
30~39歳 | 139,060円 | 128,340円 |
40~49歳 | 152,370円 | 124,370円 |
50~59歳 | 141,840円 | 123,900円 |
60歳以上 | 124,280円 | 113,200円 |
介護職のパート・アルバイト職員の収入は、性別や年齢によって異なる傾向があります。
男性介護職員の方が女性より若干高い給与を受け取ることが多いですが、これは重労働や夜勤の多い職種に従事するためです。
一方、年齢が上がるにつれて経験を積み、平均給与も上がります。
しかし、60歳を過ぎると体力的な問題から給与が下がる場合があります。
介護職員の給料についてまとめ
今回の記事では、2024年度からの新処遇改善による介護職員の給料アップの内容や対象者、今後の展望について解説しました。
介護職員の給与は、2024年度の新たな処遇改善策により向上することが期待されています。
ただし、過酷な現場環境の改善や慢性的な人手不足といった課題は、完全には解決されていません。スキルアップをしても給与に見合わないと感じる場合は、転職を視野に入れてみるのも良いかもしれません。
この記事が、介護業界で働く皆様の一助となれば幸いです。