公認会計士が食えない資格と言われるワケとは?年収アップの方法などを解説

更新

医師や弁護士と並ぶ三大国家資格の一つである公認会計士。しかし近年、「食えない資格」という噂が広がり、資格取得を目指す人々の不安材料となっています。

実際のところ、公認会計士の平均年収は746万円と、一般的なサラリーマンの約1.7倍。大手監査法人では新人でも500万円以上からスタートし、経験を積めば1,000万円を超えることも珍しくありません。

本記事では、この「食えない」という誤解が生まれた背景を紐解きながら、実態に基づいた収入事情や、より高収入を目指すためのキャリアパスを具体的に解説していきます。

このページにはプロモーションが含まれています

なぜ公認会計士は食えないと言われるのか

公認会計士は高い専門性を持つ職業であるにもかかわらず、時に「食えない」と言われることがあります。

ここでは、なぜ公認会計士がそのように言われるのかについて詳しく見ていきましょう。

なぜ公認会計士は食えないと言われるのか

過去の就職難・リストラのトラウマ

公認会計士の合格者は2006年から2008年にかけて急増し、従来の3〜4倍もの人数が資格を取得しました。 

しかしその直後にタイミング悪くリーマンショックが発生し、経済全体が大きな打撃を受けたため、多くの企業が顧客を失いました。

結果として公認会計士の仕事の需要が急減し供給過多となったため、多くの会計士がリストラの対象となりました。

このような過去の出来事が、現在も公認会計士に対する将来への不安や「食えない」というイメージを持たれる要因となっています。 

AIに仕事を代替されるという不安

公認会計士は会計を専門とするため数字を扱う仕事が中心で、データチェックや入力など比較的単純な作業も行います。

これらの業務はAIが得意とする分野と重複する部分が多いため、将来的にAIに代替されるのではないかという懸念が広がっています。

この議論の発端となったオックスフォード大学の論文のマイケル・A・オズボーン氏らによる論文『Future of employment』では、AI化の進行に伴う職業の変化が予測されています。

これらの研究の影響力や、その衝撃の大きさから「公認会計士は食えない」という見方が広まりました。

合格者数が増えている 

さらに、近年の公認会計士試験の合格者数が増加傾向にあることも影響しています。

これにより将来的な公認会計士の供給過多が懸念され、就職難や収入面への不安の声が上がっています。

以下は、直近5年間の合格者数を示した表です。

年度

合格者数

令和5年

1,544人

令和4年

1,456人

令和3年

1,360人

令和2年

1,335人

令和元年

1,337人

直近5年間の合格者数をみると、令和元年の1,337人から令和5年には1,544人と着実に増加しています。

このような状況を受けて、「公認会計士は食えない」などの懸念の声が上がっているのが実情です。 

独立しても仕事がない可能性

公認会計士は独立して自らの会計事務所を開設しても事業が安定しないと言われることが多く、その要因の一つは監査業務のみでは自立が難しいことにあります。

監査業務に特化すると、長年の経験と人脈を持つベテラン公認会計士と競合することになり、若手にとっては厳しい状況になります。

そのため、独立した場合は監査業務に加えて税務相談や経営コンサルティング、監査法人の契約社員としての業務など、多角的な業務スキルを身につけることが望ましいとされています。

しかし、業務内容を多様化するだけでなく自らの事業を運営するためには、新規クライアントやビジネスを獲得する営業力や、それらに対応する経営力など会計士としての専門性以外のスキルも必要となります。

公認会計士は食えない資格ではない理由

公認会計士は「食えない資格」と誤解されることもありますが、実際には非常に高い将来性と安定した収入を得られる職業です。

以下では、公認会計士が「食えない資格」ではない理由を詳しく説明していきます。

公認会計士は食えない資格ではない理由

高収入

公認会計士は、高収入が期待できる資格です。公認会計士の平均年収は約1,010万円と、一般的なサラリーマンの平均年収450万円の2倍以上です。

特に大手監査法人に所属する公認会計士は、初年度から500万円から650万円程度の年収が見込めます。 さらに、公認会計士の中には平均年収が1,000万円を超える人も多く存在します。

公認会計士の需要は今後も継続することが見込まれるため、この高収入水準は維持されると考えられています。つまり公認会計士は経済的に恵まれた職業であり、生活に窮することはないと言えます。

AIに仕事を代替される心配はない

公認会計士の仕事には確かに単純作業が多く含まれており、そのような作業はAIが正確かつ迅速に処理することが可能です。

しかし、公認会計士の主要な業務は経済・会計の現状分析やコンサルティング、監査など判断力と直感力を必要とする部分であり、AIではなく人間だけが持つ能力です。

将来的には、単純作業をAIが担当し、分析や判断を必要とする部分を公認会計士が担うという形になると考えられます。

業務拡大により需要減の可能性は出てこない

公認会計士の需要は業務領域の拡大と企業数の増加により安定して推移しており、今後も需要の増加と地位の安定が期待されます。

監査業務は従来からの主要な役割ですが、新たな会計基準の導入などで職務範囲が広がり、ビジネスチャンスも生まれています。 

また、社会から一層厳格な監査が求められるようになり、公認会計士への需要は増加傾向あります。

就職や転職で有利

公認会計士の資格は、財務や会計の専門家として高い信頼性を持ち、多くの企業から求められています。

監査法人やコンサルティングファームだけでなく一般企業でも公認会計士のスキルは重宝されるため、転職市場でも人気となっています。

また、独立開業も可能で、働き方を柔軟に選べる点が魅力的です。

公認会計士になるメリット

公認会計士は多くの専門知識とスキルを持つ職業であり、資格を取得することで得られるメリットは非常に多岐にわたります。

ここでは、公認会計士になることで得られる具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。

需要が高く安定した職業である

公認会計士は高度な専門性を持ち、「財務諸表監査」という特権的な業務を独占しています。この業務は専門知識が必要で他業種からの参入が難しいため、公認会計士は安定した職業と言えます。

また、大企業や上場企業には法律で財務諸表監査が義務付けられており、景気に左右されず継続的な需要があります。

非監査業務のコンサルティングは経済の影響を受けることもありますが、他職種と比べると安定しているといえます。

自由で柔軟な働き方ができる

また、自分のライフスタイルに合わせて柔軟に働ける点も大きな魅力の一つです。

監査法人では厳格な勤怠管理がなく就業時間に自由度があるため、個々の事情に応じてスケジュールを調整することが可能です。

さらに、リモートワークなど場所にとらわれずに業務を行うことができるため、通勤のストレスを軽減し効率的に働くことができます。

三大国家資格の1つで、社会的信用性が高い

公認会計士は、医師・弁護士と並ぶ三大国家資格の一つとして非常に高く評価されており、その資格を持つこと自体が大きなステータスとなります。 

この資格を取得することで社会や企業からの信頼度が大幅に高まり、幅広い分野でのキャリアチャンスが広がります。

また、財務や経営に関する高度な専門知識を持つため、監査法人やコンサルティングファーム、大企業の経理・財務部門、さらにはベンチャー企業のCFOなど、多岐にわたる業界で求められています。

公認会計士が大変だと言われるわけ

公認会計士は、高い専門知識とスキルが求められる一方で「大変だ」と言われることが少なくありません。

ここでは、公認会計士が大変だと言われる理由について詳しく見ていきましょう。

公認会計士になるのはコスパが悪い

公認会計士は合格率が極めて低く、予備校や通信教育を利用せざるを得ないため、高額な教育費用と長期間の努力が要求されます。

一方でその努力が報われるかどうかは分からず、合格しても就職が約束されるわけではありません。

そうした不確実性から、公認会計士を目指すことは投資したコストに見合う利益が得られないのではないかと不安視される傾向にあります。

資格取得には時間がかかる

公認会計士の資格は、その難易度の高さから日本三大資格の一つと評価されています。

合格には長期間の膨大な勉強時間が求められ、一般的な資格取得とは全く異なる規模となります。

大手予備校の調査では約3500時間もの学習時間が必要とされ、1日6時間から8時間の勉強を1年半から2年間続けなければならないと言われています。

予備校費用が高い

また、資格取得には専門知識が求められるため予備校や通信教育などの支援を受ける必要があり、それらの教育サービスの料金は高額です。

また、長期にわたる学習期間中に積み重なる模擬試験や文房具などの経費も無視できません。

結果として合格までに数十万円から数百万円の投資が必要となるでしょう。

激務で残業時間が長くてしんどい

さらに財務諸表監査という独占業務があるため業務量が多く、多忙になりがちです。

特に3月決算企業の監査時期には残業が80〜100時間にも及び、ゴールデンウィークも働かざるを得ないことがあります。 

最近では監査法人でも働き方改革が進められ状況は徐々に改善されていますが、人手不足のため依然として激務が続いています。

そのため、家庭生活とのバランスを考え、この職に長く携わるのは難しいと感じる人も少なくありません。

公認会計士の年収をあげる方法

公認会計士としてのキャリアを築く中で、さらに年収を上げたいと考える方も多いでしょう。

ここでは、公認会計士が年収を上げるために取るべき具体的な方法についてご紹介します。

昇格による給料アップを目指す

公認会計士が収入を伸ばすためには、監査法人内での昇格が有効な選択肢となります。

以下は、監査法人における役職別の年収です。

役職

平均年収

スタッフ

500万~600万円

シニアスタッフ

700万~850万円

マネージャー

900万~1,100万円

シニアマネージャー

1,200万円

パートナー

1,500万円

公認会計士が年収アップを目指す一般的な道筋としては、監査法人で昇進していくことが挙げられます。特に、スタッフ職の段階では監査経験を積むことで昇格するチャンスが得られることが多いです。

しかしマネージャー以上の職位では、監査業務の経験に加えて、マネジメント能力や交渉力などのビジネススキルや語学力など、個々のスキルが重要視されます。

監査法人で昇進を目指すためには、こうした監査業務以外のスキルも磨いていく必要があり、業務外での自己研鑽が不可欠です。

転職する

年収水準の高い職場に転職する

公認会計士が収入を上げるためには、監査法人より年収水準が高い職場への転職することも一つの方法です。

代表的な転職先としては、FASやコンサルティングファーム、ファンドや銀行の投資部門などが挙げられます。これらの職場では成果に応じた報酬体系が導入されているため、実績を上げればさらなる高収入が期待できるでしょう。

しかし、年収が高い反面、仕事量や責任が増える可能性もあるため慎重に検討する必要があります。

大手企業に転職する

また、大手企業への転職も長期的には年収アップにつながることがあります。転職直後には年収が下がる可能性があるものの、勤続年数に応じた昇給が期待できるため、結果として年収が上がる可能性が高いからです。

特に監査法人でキャリアが停滞している場合、新たな環境で成長を目指す良い機会となります。

さらに、大手企業はワークライフバランスが整いやすく福利厚生も充実しているため、仕事とプライベートの両立を重視する人にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。

ベンチャー企業に転職する

さらに、ベンチャー企業への転職も年収アップにつながる可能性があります。

ベンチャー企業では成果主義が強く重視されているため、他の職場と比べて短期間で昇進や昇給がしやすいと言われています。

また、企業が成功すれば通常の給料に加えてストックオプションと呼ばれる報酬を受け取ることができ、大きな資産を手に入れるチャンスが広がります。

独立して開業する

独立して開業することも、公認会計士として高年収を目指す一つの手段です。

企業に勤めている場合は限られた年収範囲内で働くことになりますが、独立すれば成功次第で1,000万円以上さらには3,000万円以上の年収も期待できます。

ただし独立にはリスクも伴い、成功しなければ年収が下がる可能性もあるため、メリットとデメリットを十分に理解した上で慎重に検討することが重要です。

公認会計士の主な就職先

公認会計士の資格を取得すると、キャリアの選択肢が広がります。

ここでは、公認会計士の主な就職先について詳しく見ていきましょう。

監査法人

監査法人は、上場企業や上場を目指す企業から依頼を受けて財務諸表の適正性を審査する「監査」業務と、経営戦略を支援する「アドバイザリー」業務を行っています。

監査法人は規模により「Big4」、「準大手・中堅」、「中小」に分類され、業務内容や働き方が異なります。 

公認会計士の約9割はまず監査法人に就職し、実務経験を積むことで知識とスキルを深めています。

コンサルティングファーム

コンサルティングファームは、企業の経営課題に対して専門的なアドバイスを提供する機関です。

業務範囲は会計、人事、ITなど多岐にわたりますが、各社によって得意分野が異なります。公認会計士は主に金融、財務、税務、企業再生などの分野で活躍しています。

監査法人での経験を持つ公認会計士がコンサルティングファームに転じるケースも多く、彼らの知識と経験は企業の経営課題解決に大きく貢献しています。

税理士法人 

税務の専門家集団である税理士法人は、企業や個人に対し税務相談、確定申告書作成、税額計算などの一連の税務サービスを提供しています。

公認会計士が税理士法人で働くことで、会計知識と税法知識を組み合わせた高度な税務戦略の立案が可能となり、顧客の税務管理を最適化することができます。

税務分野に重きを置きたい公認会計士にとって、税理士法人は税務の実務経験を積み、専門性を高めるのに適した職場環境といえるでしょう。

一般企業

公認会計士は、専門的な知識と経験を活かし、企業の財務健全性を確保する重要な役割を担っています。

大手企業や特定業種の企業では、財務諸表の作成、内部監査、予算管理、財務分析など、財務に関わる業務を担当することが求められます。

さらに、経験を積むことでCFO(最高財務責任者)として企業の経営戦略にも深く関与できるようになります。

公認会計士の転職なら転職エージェントの活用がおすすめ

公認会計士は専門性が高く評価される一方で、転職の際には自分に合った企業を見つけることが難しい場合があります。

そんな時には、転職エージェントの活用がおすすめです。

特に、公認会計士に特化した転職エージェントでは、業界に詳しいコンサルタントがサポートしてくれるため安心して転職活動を進めることができます。

また、企業との強いつながりを活かして非公開求人の紹介や条件交渉もサポートしてくれるため、自分に合った職場を効率的に見つけることができるでしょう。

公認会計士は食えない まとめ

本記事では、公認会計士が食えないと言われている理由や公認会計士として年収をアップさせる方法について解説しました。

公認会計士は平均に比べてかなり高収入な職業であり、実際には「食える」資格と言えるでしょう。

収入を増やすためには、経験を積んでスキルアップするだけでなく、転職や独立開業も視野に入れてみるといいかもしれません。

ご自身のキャリアビジョンと照らし合わせて検討してみてください。