保育士の平均年収はいくら?給料アップの方法や保育園選びのポイントも解説

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保育園は子育て世代には欠かせない存在ですが、保育士不足が深刻な問題となっています。

本記事では、保育士の給与アップの可能性や、良い保育園を選ぶポイントについても解説します。

子どもたちの成長を陰ながら支えている保育士の労働環境を知ることで、より良い保育環境づくりに役立てましょう。

保育士の平均年収はいくら?

保育士の平均年収(年代別)

保育士の平均年収は年齢とともに変動しますが、経験が評価されるにつれて上昇する傾向にあります。20代から30代前半にかけては徐々に増加し、40代半ばでピークを迎えた後、一旦下降するものの、50代後半以降は再び上昇に転じます。

特に60代後半以降は大幅な上昇が見られ、70歳以上では368万円と高額な水準となっています。

ただし、この数値は基本給のみを対象としており、賞与や手当てなどは含まれていません。

年齢

平均年収(万円)

20〜24歳

224.9

25〜29歳

253.0

30〜34歳

258.9

35〜39歳

272.3

40〜44歳

279.0

45〜49歳

276.0

50〜54歳

279.3

55〜59歳

303.2

60〜64歳

296.4

65〜69歳

328.2

70歳〜

368.1

出典:e-Stat 『政府統計の総合窓口』

保育士の平均年収ランキング(地域別)

保育士の年収は、勤務する地域によって大きく変わります。国の公式統計データによると、保育士の平均年収は東京都が455万円でトップ、次いで神奈川県435万円、千葉県422万円と、関東圏が高収入となっています。埼玉県、茨城県、栃木県も400万円を超える高い年収水準です。

このように、地方においても一定の収入が見込めますが、総じて関東圏の方が年収水準は高くなっています。保育士を目指す際は、勤務地域によって収入に大きな違いが生じることを念頭に置く必要があります。

順位

都道府県

平均年収(万円)

1

東京都

455

2

神奈川県

435

3

千葉県

422

4

埼玉県

415

5

茨城県

412

6

栃木県

407

7

愛知県

407

8

三重県

401

9

静岡県

398

10

大阪府

398

出典:e-Stat 『政府統計の総合窓口』

保育士が年収を上げる方法

保育士が年収を上げる方法

私立保育士から公立保育士になる

公立保育士は給与面や福利厚生面で恵まれた環境にあります。内閣府の調査では、公立保育士の年収は私立に比べて高く、園長職で約760万円、主任保育士で約670万円、一般保育士でも約360万円と報告されています。

また、週休二日制や有給休暇、産休・育休制度など、働きやすい環境が整備されているのも大きなメリットです。ただし、公立保育士になるには公務員試験に合格する必要があり、年齢制限などもあるため、しっかりと対策を立てる必要があります。

競争も厳しいですが、年収アップを望む保育士にとって、公立保育士は有力な選択肢の一つと言えるでしょう。

保育関連の資格を取得する

保育士の年収を上げるには、保育に特化した国家資格や民間資格を取得することが有効です。絵本専門士、こども環境管理士、リトミック指導員などの資格を持つことで、専門知識と技術が認められ、職場での評価が高まる可能性があります。

実際、資格を取得すると、より高度な知識や技術を保育現場で活用できることから、けん引手当が支給される場合も多くあります。

さらに、保育士資格に加えて幼稚園教諭の免許を取得することも推奨されます。認定こども園などでは、両資格を持つ人材のニーズが高まっており、子供たちへの適切な対応力が評価されるためです。

他の保育園に転職する

保育園の設備やシステムが多様化し、各園で給与構造や昇進の考え方が大きく異なる現状があります。このような状況下で、保育士の年収アップにつながる大きなポイントは、他の保育園への転職を検討することです。

現在の園で昇進の見込みが薄かったり、キャリアアップ支援体制が不十分であれば、積極的に条件の良い園を探すことで状況を改善するチャンスがあります。

転職を希望する際は、保育士専門の転職支援サービスを利用するとよいでしょう。そういったサービスでは、園の理念や雰囲気、キャリアパスについて詳しい情報が得られます。複数の転職サービスを活用すれば、転職にかかるリスクを大幅に軽減できます。

所定の研修を受ける

ここでは、保育士の皆さんに手軽に取り組める年収アップ方法をご紹介します。所定の研修を受講し修了すれば、役職昇進がなくても月額5,000円から最大40,000円の収入増加が可能になります。

具体的には、経験年数に基づく処遇改善等加算Ⅰと、研修を通じたキャリアアップを支援する処遇改善等加算Ⅱの2つの制度があります。

特に「加算Ⅱ」では、役職に縛られずに研修を受講することで待遇改善が期待できます。例えば「副主任保育士」や「職務分野別リーダー」といった役職への道が開かれます。

ただし、研修受講には園の理解と協力が不可欠な場合もあります。研修1つにつき最低15時間以上の受講が義務付けられているため、働く園の状況によっては調整が必要になるからです。研修を検討している方は、まずは所属園に相談してみましょう。

保育士の基本給や手取りが低い理由

保育士の基本給や手取りが低い理由

そもそも労働力と給料のバランスが取れてないから

保育士の仕事は表面上は子どもの保育だけに見えますが、実際には保育計画の立案、イベントの企画、保育料の管理など多岐にわたる重要な業務があります。さらに、保護者とのコミュニケーションや連絡帳の記入など、保護者との円滑な連携も求められます。

このように、保育士には多大な労働が課せられているにもかかわらず、給与は必ずしも十分とは言えない状況にあります。

子供の数に応じて保育士の数を調整しないといけないから

保育士の基本給や手取りが低い理由の一つは、子供の年齢に応じて一定の保育士数を確保しなければならないことにあります。低年齢の子供ほど多くの保育士が必要とされ、保育の質を保つためには、保育士一人当たりの担当する子供の人数が制限されています。

このため、保育施設では十分な保育士を配置しなければならず、それが保育士の給与を抑える要因となっているのです。

さらに、認可保育園ではスタッフ全員が保育士資格を持つ必要があり、非認可保育園でも一定数の保育士を確保しなければなりません。長時間開園する場合は、基準を上回る保育士を配置することも求められます。

財源を確保する力がないから

保育士の給与が低い理由の一つは、財源確保の困難さにあります。公立保育園の場合、保育士の給料は自治体によって定められ、一定額が保証されています。その財源は保育料だけでなく、国や自治体からの補助金も含まれています。

しかし私立保育園は一般に補助金を受け取ることが少ないため、地域や園の状況によっては財政的に厳しい状況に置かれがちです。そのため保育士の基本給や手取り額が低くなりやすい現状があり、財源確保の難しさが給与水準の低さにつながっているのです。

法律によって予算が変わらないから

保育士の給与が低水準にある大きな理由の一つは、「公定価格」と呼ばれる制度にあります。この公定価格は、保育施設の運営費を算出する際の基準であり、子どもの人数などを元に決められています。

しかし、保育士の専門性や経験、スキルなどが反映されづらい仕組みとなっているため、保育士の適正な評価と待遇改善につながりにくいのが実情です。

保育士の処遇を改善するためには、公定価格の算出方法を見直し、保育士の実際の職務内容やスキルを適切に評価できる新しい制度への移行が必要不可欠となっています。

今後の保育園の年収推移

今後の保育園の年収推移

処遇改善等加算Ⅰ

保育士の待遇改善と保育の質の向上を目指す制度「処遇改善等加算Ⅰ」が2015年に施行されました。この制度では、保育士一人ひとりの経験年数や研修受講などのスキルアップに応じて加算率が変動します。保育士のスキルや経験が豊富になれば、その分待遇が向上するよう設計されています。

加算内容は「基礎分」と「キャリアパス要件分」と「賃金改善要件分」の3つに分かれています。この制度を通じて、保育士の働きやすさと適正な賃金の実現、そして希少な人材の確保が期待されています。

基礎分

保育士の処遇改善を図るための「処遇改善等加算Ⅰ」には、保育士の平均経験年数に応じて給与を増額する「基礎分」があります。初年度は2%の加算となり、翌年から1年ごとに1%ずつ加算率が上がっていきます。

このシステムにより、保育士の経験値に応じて処遇が年々改善されていきます。ただし、加算率は10年経験で12%が上限となります。この「基礎分」の制度は、保育士の定着を促し、保育の質の維持・向上につながることが期待されています。

キャリアパス要件分

保育士のキャリア形成を支援するための制度である「キャリアパス要件分」は、保育園における研修の実施、職務内容の明確化、賃金体系の見直し、役職設定など、保育士の専門性とスキルの向上を図る取り組みを行う施設に対する支援策です。

この制度は、保育士のキャリアアップに真剣に取り組む施設を評価し、一定の条件を満たせば加算されます。

しかし、条件を満たせない場合は「賃金改善要件分」から2%の減額となるため、保育園の経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、「キャリアパス要件分」の適用条件には細心の注意を払う必要があります。

賃金改善要件分

保育士の待遇改善を真剣に取り組む保育施設を支援するため、「賃金改善要件分」という制度が設けられています。この制度は、平均勤続年数が11年未満の施設には6%、11年以上の施設には7%の追加賃金を支給するものです。

長期的な視野に立って保育士を育成し、キャリアをサポートする施設への助成を具体化しています。

賃金改善要件分は、単に給与を増やすだけでなく、保育士一人ひとりが可能性を追求し、職務に対する満足感を得られるような、より良い職場環境の構築を目指した制度なのです。

処遇改善等加算Ⅱ

保育士の処遇改善と職場環境の向上を目的とした「処遇改善加算Ⅱ」という施策が導入されました。以前は、保育士の役職が園長と主任のみに限られていたため、経験やスキルが十分に評価されない状況がありました。

そこで、新たに3つの職位が設けられ、研修を受講し一定の基準を満たすと昇給できる仕組みが整備されました。

専門リーダー

保育園では、7年以上の経験を持ち、4分野以上の専門研修を修了した保育士が、「専門リーダー」として発令されることがあります。専門リーダーは、保育園に専門的な知識や技術を提供し、業務改善や職員教育に貢献します。その役割を果たすことで、月額4万円の処遇改善を受けられます。

この制度は、保育の質の向上と、保育士と子どもの関係性を深めるための支援として位置づけられており、今後ますます重要となってくるでしょう。

職務分野別リーダー

保育園では、経験豊富な保育士の中から「職務分野別リーダー」が任命されています。この役職は、3年以上の経験を持ち、6つの専門分野の研修を修了した保育士にのみ与えられる特別な地位です。

6つの専門分野とは、「乳児保育」「障がい児保育」「幼児保育」「食育・アレルギー」「保護者支援・子育て支援」「保健衛生・安全対策」で、それぞれ15時間以上の研修を受講する必要があります。さらに、「マネジメント研修」と「保育実践研修」を通して、リーダーシップと専門性を高めていきます。

「職務分野別リーダー」に任命されると月額5,000円の処遇改善が約束されます。この制度は、保育士のスキルアップとキャリア形成を支援し、より質の高い保育サービスの提供を目指すとともに、職員のモチベーション向上にも貢献しています。

副主任

保育園では、職責が上がるほど高い専門性と経験が求められます。その中でも注目される役職が「副主任」です。副主任になるには、7年以上の実務経験が必要とされ、この期間は園運営や子供のケアに関する深い知識と経験を積む十分な年数と考えられています。

さらに、「職務分野別リーダー」としての経験も求められます。加えて、専門知識やマネジメント能力を証明するため、3つ以上の分野で専門研修を修了していることが条件になります。

副主任に就任し、これらの条件を満たすと、月額4万円の処遇改善を受けられる制度があります。このように、副主任は保育園の運営を支え、質の向上に大きく貢献する重要な役割を担っているのです。

保育士が保育園選びに失敗しない方法

給料と労働時間のバランス

保育士の仕事を選ぶ際には、給与と労働時間のバランスを慎重に見極める必要があります。高額な給与を得られる職場では長時間労働や少ない休暇日数を伴う場合があり、自分に合っているかどうか検討しなければなりません。

一方で、プライベートの時間を大切にしたい人は、給与を多少控えめにしてでも時間的な余裕のある職場を選ぶことが賢明でしょう。

また勤務時間の形態も重要で、固定勤務かシフト制かによって、実際の勤務時間帯が変わります。自分のライフスタイルに合った勤務形態を提供している保育園を見つけることが肝心です。

福利厚生の充実度

保育園は、保育士の生活を支援し働きやすい環境を整備するために、給与以外にも様々な福利厚生制度を設けています。

例えば、生活費の一部を補助したり、健康診断を支援したり、育児や介護のための休暇制度を設けたりしています。

保育の現場では、作業に必要なエプロンの貸与や予防接種の費用負担など、保育業務をサポートする特別な福利厚生もあります。

保育園の規模感

保育園選びでは、園の規模が重要な要素となります。園の規模とは、園に在籍する子供の数のことです。現在の園の規模が、あなたの期待や働きやすさに適しているでしょうか。

保育園の規模はさまざまで、20人以下の小規模な園から300人以上の大規模な園まであります。

子供の数は、園の雰囲気や保育士の業務量に大きく影響します。一人一人の子供とじっくり関わりたい保育士には小規模な園が、にぎやかな環境で多くの子供と関わりたい保育士には大規模な園が適していると言えるでしょう。

保育理念や教育方針

保育園で働く際には、自身の価値観と園の教育方針が合致しているかが重要です。保育園によって教育理念は様々で、自然環境を活かした自由な子育てを重視する園や、保護者と協力しながら子育てする園、特定の教育理論に基づく園などがあります。

自分の考え方と園の方針が合わない場合、ストレスの原因となる可能性があります。

そのため、求人の際には園のホームページなどで教育方針をよく確認し、自身の価値観と合致するかどうかを慎重に検討することが大切です。

保育士の転職はエージェントの活用がおすすめ

保育士の方で転職を検討されている方は、転職エージェントを活用するのがおすすめです。エージェントは一人ひとりの希望やスキル、経験を丁寧に聞き取り、最適な求人を提案してくれます。

保育士の場合、勤務時間、給与、保育方針、施設の雰囲気など、重視するポイントは多岐にわたります。エージェントはそれらの条件を踏まえ、ベストマッチの求人情報を提供してくれます。

加えて、面接対策や履歴書作成のアドバイスなど、転職活動をサポートしてくれます。さらに非公開求人情報にもアクセスできる可能性があり、良条件の求人を見つけられるチャンスが広がります。

このように転職エージェントは保育士の転職を全面的にバックアップしてくれる存在です。

まとめ

本記事では、保育士の平均年収や給与アップの方法、良い保育園を選ぶポイントについて詳しく解説しました。

平均年収は地域や施設によって異なり、給与アップには資格取得や経験年数が影響します。

保育園選びでは、保育の質、職員の待遇、園の評判を重視することが大切です。この記事がみなさまの一助となれば幸いです。