弁護士の年収や給料は?弁護士事務所の初任給や独立後の平均年収まで解説

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弁護士という仕事を目指す人にとって、年収や給料、そして初任給の情報は重要です。この記事では、弁護士の年収について、弁護士の種類別に詳しく説明します。また、法曹三者や三大国家資格の間での比較や年収アップの方法まで見ていきます。

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弁護士の年収

弁護士に向けて勉強する人

弁護士の収入は、弁護士を目指す学生や現役の弁護士にとって大きな関心事でしょう。一般的に弁護士は高収入と思われがちですが、司法制度改革により年収が下がったという印象もあります。

実際の弁護士の年収は、経験年数や雇用形態によって異なるため、開業弁護士と勤務弁護士、企業内弁護士の年収を比較して見ていきます。

開業弁護士の年収

まずは開業弁護士の収入について見てみましょう。開業弁護士の所得は、個人差が大きく、平均的には1,000万円から1,500万円程度とされていますが、中には300万円以下の弁護士もいれば、1億円以上稼ぐ弁護士もいます。

また、長時間労働に従事する「セルフブラック」の弁護士も少なくありません。したがって、収入の平均値だけでなく、ワークライフバランス、仕事への満足度、ストレスの度合いなども考慮し、自分にとって理想的な収入を設定することが大切です。

特に独立開業を目指す場合は、収入格差が大きい法律業界の実情を踏まえ、自身のスキルや営業力を見極めた上で判断する必要があります。

勤務弁護士の年収

弁護士の年収は、勤務地域や所属する法律事務所の規模によって大きく変わります。都市部の方が地方よりも給与が高く、大手法律事務所の方が中堅や個人事務所よりも高い傾向があります。さらに、個人で案件を受任することで、追加の収入を得ることも可能です。

一般的な勤務弁護士の平均年収は728万円(賃金構造基本統計-令和4年)ですが、大手法律事務所の支店長や代表者、役員クラスの弁護士は1,000万円を超える可能性があります。また、個人での案件受任が認められている事務所に所属する弁護士は、取り扱う案件によってはさらに収入を増やすこともできます。

以下では勤務地域や法律事務所の規模による勤務弁護士の年収を比較します。

東京の大手弁護士事務所の場合

東京の著名な弁護士事務所では、弁護士の収入が非常に高額になることが特徴です。新人弁護士でも年収は1,000万円を超え、経験を積むにつれて確実に増えていきます。パートナーに昇進すれば、年収が3,000万円を超えることもあります。

東京の中堅やそれ以下の弁護士事務所の場合

東京の中堅弁護士事務所の給与は実に多様です。中には初年度から700万円以上の高額な給与を支払う事務所もあれば、300万円程度の初任給にとどまる事務所もあります。

大手事務所と比べると給与面で劣っているかもしれませんが、中堅事務所には独自の魅力もあります。例えば、大手事務所では経験できないような実務経験を積めたり、自分の関心分野に特化した業務に従事できる可能性があるといった点が挙げられます。したがって、勤務先を決める際は、規模や給与だけでなく、自分が何を重視するかを見極める必要があります。

東京以外の都会の事務所の場合

地方都市の弁護士事務所における年収は、事務所の規模や業務内容によって大きな差があります。渉外業務を扱う事務所の弁護士は専門性が高いため、高額な給与を得る傾向にあります。

一般的な事務所では、年収は500万円から700万円程度が多数を占めており、所在地の都市の規模はあまり影響していません。ただし、中には300万円ほどで弁護士を雇用する事務所も存在します。

個人事件が多い勤務弁護士

個人事件を多く手がける勤務弁護士の中には給与額を上回る収入を得ている人もいます。彼らの収入は、事務所への売上高の払い込み割合と必要経費の負担割合によって変動します。なぜなら、事務所に個人事件の売上を入れるということはその分収入が減るということだからです。

このような点を考慮しても、個人事件の案件を多数担当する勤務弁護士の中には、独立開業や東京の大手法律事務所勤務の弁護士と比べても高収入を実現している人もいます。

企業内弁護士(インハウスローヤー)の年収

企業の経営には、法令遵守や法的リスク管理が重要となるため、企業内に弁護士を雇用し、法務やコンプライアンスを担当させる例が近年増えています。このようにして雇用される企業内弁護士は一般企業の会社員であるため、年収500万円~700万円未満と750万円~1000万円未満を合わせて50%以上と、一般の弁護士や独立系の弁護士に比べ、低い水準となっています。

しかし、収入の変動が少なく、安定した収入が見込めることや、生活と仕事のバランスをとりやすいことから、定期的で安定した収入やワークライフバランスの実現を望む弁護士にとって魅力的な選択肢となっています。

国際弁護士の年収

国際弁護士は、海外での法律案件を多く手掛ける弁護士のことを指します。その活動範囲が広範にわたるため、明確な定義づけが難しくなっています。海外の法律事務所で働くことが多いため、その国の弁護士資格を取得することが重要な鍵となります。

例えば最も人気のあるアメリカのニューヨーク州の弁護士の場合、初任給が3000万円ほどと大変高額になっていますが、資格取得には費用も多くかかる上、競争も激しいため簡単な道のりではありません。

それでも、国際弁護士を目指す人は多くいます。それには金銭的な見返りだけでなく、国境を越えて活躍できる魅力が大きな動機となっていると考えられます。

弁護士の年収データ

高級取りの弁護士

弁護士の平均年収

日本弁護士連合会の最新の調査によると、弁護士の平均年収は2,558万円、中央値は1,437万円、所得の平均値は1,191万円、中央値は700万円となっています。弁護士の収入は個人差が大きく、経験年数や専門分野によって大きく変動します。

過去の日弁連と法務省、最高裁による調査では、一年目の弁護士の収入は543万円、所得は317万円でしたが、経験を重ねるにつれて増加し、12年目で収入が2,076万円、所得が884万円に達しています。しかし、13年目以降は収入と所得が微減する傾向にあり、現在の平均年収は10~15年目の弁護士を中心に800~900万円程度、収入は概ね2,000万円前後と推測されます。

また、別の調査機関による2017年の職業別平均年収ランキングでは、弁護士が1,029万円で5位に入っており、医師、パイロット、大学教授、公認会計士が弁護士を超える平均年収となっています。

男女別の弁護士の年収

令和4年の調査では男性弁護士の平均年収が約730万円、女性弁護士の平均年収が約726万円とほとんど差は見られませんでした。平成30年には数百万円の開きがあったため、近年はパートナー弁護士など重要なポストに就く女性弁護士が増加していることが年収の差の解消につながっていると考えられます。

地域別の弁護士の年収

弁護士の年収は就業地域によって大きく異なります。東京都は人口や企業が集中しているため、弁護士に対する需要が高く、収入も高い傾向にあります。全国の弁護士の約半数が東京で働いており、大手事務所の年収は1,200万円から1,500万円程度です。

一方、地方都市では収入が低くなる傾向があり、福岡の小規模事務所では500万円から700万円程度となっています。ただし、弁護士の収入は取り扱う業務によっても変動するため、地域間の収入格差が生じる要因となっています。

弁護士の初任給

弁護士という職業は、初任給が高額な一方で、その道のりは決して平たんではありません。

弁護士の初任給は平均して約500~550万円と、新卒の大学卒業者の平均初任給約275万円、大学院卒業者の平均初任給約320万円を大きく上回っています。同年代と比べると経済的にはスタートから有利な立場にあると言えるでしょう。

しかし、弁護士に途を開くためには、法科大学院への進学、そして極めて難関な司法試験に合格しなければなりません。このような厳しい関門を越えるまでには多くの年月を要するため、初任給を得られるのは同年代より遅くなる場合が多いのが実情です。

年齢や経験による弁護士の年収の差

弁護士の収入は、一般的には年齢が上がるにつれて高くなる傾向にあります。しかし近年、その傾向に変化が見られます。

30代の弁護士の年収が以前より下がっているデータがあり、全体的に収入格差が広がっている状況です。年収の多寡は、年齢よりも所属する法律事務所の規模による影響が大きくなってきました。中でも30代の中堅弁護士にこうした傾向が顕著に表れています。

一方で、着実に年収を伸ばしている弁護士には共通の特徴があります。それは、様々な業務で実績を重ね、長年勤務することで多くのクライアントを抱えているということです。特に大手法律事務所では、大企業を中心とした顧問契約を多数結んでおり、中には年収が数千万円に上る弁護士もいます。

また、年収1,000万円以上の高収入層を見ると、年齢層が広く分散していることがわかります。つまり、若手でも高収入を得ているケースがあるのです。この背景には、四大法律事務所など大手事務所でキャリアを重ね、高収入を実現している弁護士がいることが考えられます。

安定した高収入を望むならば、大手法律事務所への転職を果たし、長期的な顧客との信頼関係を構築することが重要なポイントになるでしょう。

また、経験年数別の平均・中央所得を見ると、10年目頃までは大きく増加する傾向にあります。10年目以降は平均所得が1,500万円を超え、中央値も1,000万円になるなど、経験年数の増加によって高収入が期待できると言えます。

弁護士の年収はそこまで高くない?

悩む弁護士

以前は高級取りの代表格であった弁護士の年収が下がってきていると言われる原因として、弁護士の年収に大きな格差があり給与水準が低い弁護士が増えている現状があります。

ここでは、給与の低い弁護士が増加している主な理由を二つ見ていきます。

司法制度改革による弁護士数の増加

1999年に始まった司法制度改革を経て、2004年に法科大学院制度が導入され、2006年からは新しい形式の司法試験が実施されるようになりました。この改革により、司法試験の合格者数が大幅に増加し、弁護士の数も15年足らずで倍増しました。

弁護士の数の増加によって弁護士市場は供給過多になり、特に法律事務所への就職は困難となっています。制度改革などにより弁護士の供給は増えたものの、需要は伸び悩んだ結果、競争が激化する中で、弁護士の収入は下落傾向にあります。

訴訟件数の推移

司法制度改革により弁護士数は増加したものの、訴訟件数は大きな変化を見せていません。過払い金請求のような一時的な需要を除けば、訴訟件数はほぼ横ばいが続いています。

一方で過払い金返還訴訟を手がけていた弁護士たちは新しい分野に参入し、弁護士同士の顧客獲得競争が激しくなっています。民事訴訟件数についても、経済的な問題や情報の不足などによって増加は見られず、弁護士の供給が需要を大きく上回り、営業力や実績のない弁護士は高い収入を得ることが難しくなっているのが現実です。

四大法律事務所の年収や特徴を解説

ここでは、日本の法律事務所の中でも特に大手として知られる四大法律事務所の弁護士の年収やそれぞれの事務所の特徴を見ていきます。

四大法律事務所の弁護士の年収

四大法律事務所では、一年目の弁護士の年収がすでに1,000万円を超えており、一般の法律事務所の新人弁護士の年収を大きく上回っています。さらにパートナー弁護士にまで昇進すれば、年収は1億円以上に達するとも言われます。

この高い給与水準は、業界内でも四大法律事務所が突出していることを物語っています。実際、令和4年の統計では、法務従事者全体の平均年収は約971万円ですが、四大法律事務所の年収では一年目の弁護士がすでにこれを上回っています。ただし、こうした高年収は魅力的である一方、四大法律事務所は激しい競争のある厳しい現場であることも事実です。

パートナー

大手法律事務所の最高位である「パートナー」は、事務所の経営に関与し、重要な意思決定を行う役割を持ち、収益の一部を分配される立場にあるため、高額な報酬を得ることができます。

パートナーの年収は1億円に迫る水準にあり、上限がないため、実力次第では数億円単位の報酬を得ることも可能です。このように、高い専門性と経験を持つパートナーは重要な役割を果たし、高い年収を実現できると言えます。

アソシエイト

法律事務所で働く弁護士は、入所後はまず「ジュニアアソシエイト」として経験を積み始めます。数年の実務経験を経て、「シニアアソシエイト」へと昇進していきます。アソシエイトの仕事は、パートナー弁護士から指示を受けて働くことであり、直接の顧客開拓は行いません。

経験年数や担当案件によって変動しますが、シニアアソシエイトの年収は平均で1,600万円から3,000万円程度、ジュニアアソシエイトは1,100万円から1,500万円程度です。

パラリーガル・弁護士秘書

法律事務所に所属して弁護士業務を支える専門職として、パラリーガルと弁護士秘書がいます。パラリーガルは弁護士の補助業務を担い、調査や書類作成などで弁護士をサポートしています。パラリーガルの年収は平均して400万円から600万円程度です。

一方、弁護士秘書は事務作業全般や弁護士のスケジュール管理、リサーチなど幅広い業務を行い、事務所運営を円滑にしています。弁護士秘書の年収は概ね300万円から500万円となっています。このようにパラリーガルと弁護士秘書は、弁護士業務の効率化と質の高いリーガルサービスの提供に欠かせない存在となっています。

四大法律事務所の特徴

日本を代表する大手の法律事務所は四大法律事務所と呼ばれ、西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所があります。それぞれ独自の特色を持ち、弁護士数も500人を超える大規模な事務所です。

主な業務は企業法務全般にわたり、M&A、コンプライアンス対策、金融・不動産関連など、専門分野に応じた高度な法的サービスを提供しています。以下ではこれらの企業の特徴を詳しく見ていきます。(データは2024年5月現在)

西村あさひ法律事務所


西村あさひ法律事務所

弁護士数

926人

拠点

東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、北京、上海、ヤンゴン、バンコク、ホーチミン、ハノイ、シンガポール、ドバイ、フランクフルト、デュッセルドルフ、ニューヨーク、台北、(ジャカルタ)、(クアラルンプール)、(マニラ)

得意とする領域
西村あさひ法律事務所は、危機管理チームに定評がある他、日本最大の弁護士数を活かして大型M&A案件に多くの実績があります。また、倒産や事業再生といった分野でも著名な弁護士が多く所属していることで知られています。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所


アンダーソン・毛利・友常法律事務所

弁護士数

697人

拠点

東京、大阪、名古屋、北京、上海、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ロンドン、ブリュッセル、(香港)、(ジャカルタ)

得意とする領域

アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、英米圏からのインバウンド、アジア圏へのアウトバウンド両面で強みを持ち、クロスボーダー案件や国際金融取引に多くの実績を有する法律事務所です。こうした国際性の高さから、特に海外企業からの評価が高い事務所として知られています。

長島・大野・常松法律事務所


長島・大野・常松法律事務所

弁護士数

599人

拠点

東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ、上海

得意とする領域

長島・大野・常松法律事務所は、ニューヨークやシンガポールのオフィスといった幅広い海外拠点を活かして大型案件に取り組んでいます。特に、金融や銀行、キャピタルマーケットなどの分野では、合併以前の常松簗瀬関根法律事務所のノウハウを活用し、多くの実績を積み上げています。

森・濱田松本法律事務所


森・濱田松本法律事務所

弁護士数

756人

拠点

東京、大阪、名古屋、福岡、高松、札幌、北京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ、上海、ヤンゴン、(マニラ)

得意とする領域

森・濱田松本法律事務所は紛争・争訟分野を得意とし、「訴訟の森」として知られます。また、日本初の案件に取り組むことで企業法務の判例形成に貢献してもいます。さらに、金融、キャピタルマーケット、M&Aでも高評価を受けており、受賞歴も多いです。

四大法律事務所に入所するためには

四大法律事務所への入所は極めて高い競争率となっており、困難であると言わざるを得ません。実際に、日弁連に登録している弁護士が45,800人ほどであるのに対して四大法律事務所に所属する弁護士は3000人ほどと、弁護士全体の約6%しか在籍していません。

新人弁護士として入所するには、法科大学院や司法試験での優秀な成績が求められます。一方、中途入所を目指す場合は、特定分野での専門知識と経験が重視されます。現職で難易度の高い仕事に取り組み、実績を積むことが重要だと言えます。

弁護士として収入アップする方法とは?

弁護士は独立開業することによっても収入を増やすことはできますが、勤務弁護士の場合は、所属する組織から高い評価を得ることが重要となります。組織にとって欠かせない専門性や能力を身につけ、利益向上に貢献することが結果的には給与の上昇にもつながると言えそうです。

独立開業する

弁護士として独立開業することは、自身のスキルと経験を最大限に活かすための有力な選択肢です。自らの事務所を構え、取り扱う案件や法律分野を自由に選択できるため、能力と労力に応じた報酬を得ることが可能になります。

しかし一方で、開業にはリスクが伴うため、事前に十分な計画を立て、投資額や事業計画、ターゲット層を明確にする必要があります。また、利益が出るまでの期間やクライアント獲得への労力も見積もっておく必要があります。

独立開業は収入アップの大きな機会ではありますが、経験と実力だけでなく、慎重な準備とリスク評価が欠かせないという一面もあります。

条件がより良い職場への転職

収入を増やすための有効な手段として、より良い条件の法律事務所への転職が挙げられます。特に弁護士の場合、大手や外資系の事務所は給与が高い傾向にあり、大規模で難易度の高い案件に携われることで、年収アップにつながる可能性が高くなります。

ただし、そうした事務所への転職には、専門性の深化と事前の企業リサーチが必要不可欠であり、弁護士の転職を強みとしている転職エージェントを利用するのが賢明であると言えます。

専門性を高める

弁護士の収入アップの有効な手段の一つは、特定の法律分野や業界に特化し、そのスペシャリストとしての地位を確立することです。

企業法務や労働法、知的財産権といった特定の領域で専門的な知識やスキルを培うことで、業界内で高い評価を受け、結果的に高い収入につながると考えられます。また、メジャーな分野だけでなく、先駆者と呼べる存在が少ない領域で独自性を高めるといった方法も有効であると言えるでしょう。

個人での受注を増やす

弁護士は個人での受注を増やすことで収入を上げることができます。まず、受注する案件数の増加により、稼働時間が長くなり、直接的な収入アップが期待できます。さらに、高収益案件の受注や時間単価の引き上げを図ることで、より効率的に高い報酬を得ることが可能になります。

個人での受注を増やすためには、専門性と信頼性を高めることが不可欠です。弁護士としての活動を通じて経験を積み専門性を高めていくことはもちろん重要ですが、他にもマーケティングや交渉の技術によってクライアントに対してその専門性や過去の実績を的確に伝える能力も必要になります。

勤務地を変える

弁護士の年収は地域による差が大きいのが実情です。東京のように人口が集中し、経済が発展した都市では、企業法務や知的財産権、訴訟など、法的ニーズも高くなる傾向があるため、弁護士の仕事も増加し、収入が高まると考えられます。

そのため、収入をアップしたいのであれば、仕事の機会が多い都市部への移住を考えることも一つの手段であると言えます。

国際弁護士になる

国際弁護士とは、国際的な法務案件に対応する能力や経験を持つ弁護士のことです。国際弁護士になることで、海外からの仕事を請け負えるため、対応できる顧客や案件の層が広がり、それに伴って収入も増加すると考えられます。

ただし、自国の法律だけでなく他国の法制度についても深く理解する必要がある他、高い語学力、特に英語力は必須となります。さらに、海外顧客を多く獲得するには、海外での積極的なネットワーキングが欠かせないため、国際弁護士として活躍することは簡単ではありません。

弁護士と他の職業の年収を比較

法曹三者間での年収の比較

弁護士、検察官、裁判官は法律を専門とする職業ですが、その役割や責任、収入は大きく異なります。弁護士の収入は個人の経験や専門分野によって大きく変わり、経験豊富な弁護士は高収入を得ることもある一方、検察官と裁判官は国家公務員で、収入は比較的安定しています。

検察官の年収

検察官の年収は経歴と役職によって大きく変動します。新任検事では620万円程度ですが、経験を積むごとに増えていき、ベテラン検事の年収は2,070万円前後になります。検事総長に至れば2,930万円と、一般的な公務員を大きく上回る高額年収となります。

一方で、さらなる収入アップを目指し、検察官としての長年の経験を活かして弁護士に転身するいわゆる「ヤメ検」も存在します。

裁判官の年収

裁判官の年収は、キャリアの初期段階から経験を重ねるごとに順調に上昇していきます。最初は判事補や簡裁判事として約280万円程度の年収ですが、判事に任官すれば年収は約620万円となります。さらにキャリアを重ねることで、上位の裁判官になれば年収は1,000万円を超えるレベルにまで達することができます。

一方で、検察官同様に、裁判官としての経験を活かして弁護士に転身する「ヤメ判」として、自らの能力でさらなる収入を目指すことも可能です。

三者の比較

以上のように、裁判官や検察官はどちらも経験を積むことで年収が上がっていく職業であり、10年目では平均して1,000万円を目指せる職業であると言えます。一方、裁判官と検察官は公務員であり法律によって給与体系が定められているため、大幅な年収アップや若いうちからの高収入実現は難しいのも事実です。

これらと比較すると、民間の仕事である弁護士は、自分のスキルによって最初から高収入を狙うことが十分可能な職業であると言えます。実際、大手法律事務所では初任給が1,000万円に達することもあるなど、実力が年収に大きく影響します。ただし、裁判官や検察官と違い、法律などで給与が保障されていないため、平均的な年収を大きく下回るリスクもあります。

このように、安定した給与や昇給を目指す人には公務員である裁判官や検察官、逆に自分の実力を発揮し、高い給与の実現を早くから目指したい人には弁護士がおすすめできると言えます。

三大国家資格間での年収の比較

弁護士、公認会計士、医師という日本における三大国家資格は、困難な資格取得過程と高度な専門知識を要する職業であり、社会への貢献度やその希少性から年収も高いことが知られています。

以下では公認会計士と医師の年収をそれぞれ確認し、弁護士の年収と比較していきます。

公認会計士の年収

厚生労働省の調査では、公認会計士の平均年収は747万円と報告されていますが、これは税理士とあわせた数値であり、公認会計士のみに限れば、年収はさらに高い水準にあると考えられます。

企業の経営アドバイザーなど幅広い業務で活躍する公認会計士への需要は高まっており、本記事でも紹介したように全体の年収が減少傾向にある弁護士とは対照的に、年収の推移も年々上昇傾向にあります。

医師の年収

医師はトップクラスの年収で知られます。勤務形態、経験年数、診療科によって変動しますが、平均年収は1,436万円(厚生労働省、賃金構造基本統計調査)です。開業医の中には3,000万円以上の高額収入者もいます。

医師国家試験は最難関の試験として知られ、同様に最難関として知られる司法試験と比較されることも多いですが、扱う内容が全く異なるため一概に比較することはできません。ただ、年収という側面で見ると、平均的には医師の方が弁護士を数百万円上回っています。

弁護士に向いてる人・向いていない人

弁護士に向いているのはどのような人?

弁護士には、自発性と行動力、営業力、思いやりの心、論理的な分析力など多くの力が求められます。特に、自ら道を切り開き、依頼者の問題解決に向けて主体的に行動できる人材が適していると言えるでしょう。

開業している弁護士はもちろん、勤務弁護士として事務所内で評価を受けるためにも、積極性が非常に重要であると言えます。

弁護士に向いていないのはどのような人?

逆に、受動的で指示通りの行動しかできない人、コミュニケーション能力や文書作成能力に課題のある人、体力的に厳しい環境に耐えられない人には、弁護士の職業は向いていないと言えます。

弁護士として高い評価を受け成功するためには、クライアントと適切なコミュニケーションを取り、自ら行動して問題解決に挑むことが不可欠なのです。

弁護士の職業における年収以外のやりがいとは

多くの人と関わることができる

弁護士は、様々な立場や背景を持つ人々と日々接することになり、そのダイナミックな人間関係から人間性を磨き、多角的な視野を養うことができます。

また、民事から刑事、企業から個人の問題まで幅広い分野に渡る問題解決に取り組むため、他の専門家や業界関係者とも密接に連携する機会があり、いざという時に役にたつ人脈を広げていくこともできると言えます。

複雑な問題を解決する面白さ

弁護士の仕事は、クライアントの複雑な問題や事件を解決するプロセスが最大の醍醐味とな言えます。事実関係を整理し、適切な法律や判例を適用するのには非常に高い論理性が求められます。

また、裁判や交渉では、相手の意図を読み取り、的確な戦略を立てる動的な思考力が求められます。最終的な勝利を掴むまでの過程は、調査、分析、予測、戦略立案といった頭脳を使った戦いであり、そうした点に惹かれる人も多いと思われます。

働き方の柔軟性が高い

弁護士は柔軟な働き方ができることも魅力的な職業です。一度資格を取得すれば、独立して自身の事務所を開業し、得意分野や興味のある分野に特化した業務に専念することも可能です。これにより、自身の興味やスキルを最大限に生かしたキャリア形成が実現できるでしょう。

独立すれば、自分のペースで事務所を運営できるため、テレワークなどの柔軟な働き方も可能であり、固定的な勤務時間がないため、ライフスタイルや家庭の事情に合わせて働き方を調整することができます。

弁護士の年収まとめ

ここでは弁護士の給与や収入について、データや他分野との比較を交えながら詳しく説明しました。また、弁護士を志す上で気になるであろう四大法律事務所の実情や、年収の高さだけにとどまらない弁護士という職業のやりがいも紹介しました。

本記事を読んでくださった方々が、弁護士としての理想のキャリアや年収を実現されることを願っています。