中小企業診断士は簿記何級レベル?財務会計と簿記の関係や資格の活かし方も解説

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中小企業診断士を目指す人や既に簿記資格を持つ人にとって、中小企業診断士に求められる簿記の知識レベルは重要な関心事です。業務で役立てるためにも、財務会計と簿記の関係を理解することは効果的でしょう。

そこでここでは中小企業診断士に求められる簿記レベルや財務会計との関連性、そして両資格の活用方法について詳しく解説します。

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中小企業診断士と簿記の関係は?

中小企業の経営改善に携わる中小企業診断士には、財務会計や管理会計などの幅広い知識が求められます。簿記試験で学ぶ内容は、中小企業診断士試験の出題範囲と重なる部分が多いため、簿記の理解があれば中小企業診断士試験に有利になります。

逆に、簿記の勉強を通じて、中小企業診断士に必要な知識を一部身につけることもできます。このように、中小企業診断士と簿記は密接な関係にあり、両者を理解することで中小企業の経営改善に対する洞察力が深まります。

中小企業診断士試験

中小企業診断士の資格取得は、非常に難易度が高く、合格するためには膨大な学習時間と努力が必要とされています。資格取得のための中小企業診断士試験は、第1次試験と第2次試験の2段階からなり、全体の合格率は約4〜8%と極めて厳しいものです。

また、合格するまでに必要な勉強時間は1000時間ほどであり、取得には1年ほどの学習期間が求められる難関資格となっています。

中小企業診断士試験の中には「財務・会計」の科目が設けられており、ここで簿記の知識が活躍することになります。というのも簿記の理解は、企業の経済状況を把握し、適切な診断を行うための基礎となるため、中小企業診断士にとって欠かせない知識の1つなのです。

簿記試験

簿記試験は、企業の財務状況を記録することに関する技能を測る試験で、日商簿記、全経簿記、全商簿記の3種類があります。なかでも日商簿記は最も認知度が高く、多くの人が受験しています。そのため単に「簿記」と言うときは基本的には「日商簿記」のことを指します。

簿記の難易度は級によって異なり、3級の合格率は40%前後、2級は20%前後、1級は10%前後と、上級になるほど合格率が下がります。

また、必要な学習時間も3級で約100時間、2級で300時間、1級で600時間程度と、級が上がるごとに長くなります。

中小企業診断士と簿記はどっちが難しい?

資格取得の難易度という点では、中小企業診断士の方が簿記よりも高いです。中小企業診断士は簿記に関連する知識以外にも幅広い経営知識と実務経験が求められ、一次試験と二次試験の2段階の試験に合格する必要があるからです。

一方、簿記は1級になるとかなり高難度になりますが、それでも中小企業診断士と比べると範囲が限られている分取得は簡単になります。2級や3級であれば、比べるべくもないでしょう。

このように、試験範囲の広さや要求される知識のレベルを考えると、中小企業診断士の方が簿記よりも明らかに難易度が高いと言えるでしょう。

中小企業診断士の財務会計の簿記のレベル

中小企業診断士の財務会計の簿記のレベル

簿記3級と中小企業診断士

簿記3級は、商業簿記の基礎知識を身につけるための資格試験であり、経理業務に携わる社会人にとって必須のスキルを養うことができます。

中小企業診断士の財務会計では、簿記3級よりも高度な専門知識が求められます。しかし、簿記3級はその入門として重要な役割を果たします。つまり、簿記3級は中小企業診断士を目指す人にとって、その道のりの第一歩となるのです。

簿記2級と中小企業診断士

簿記2級は経営管理に役立つ知識レベルとして、より高度な商業簿記・工業簿記の修得を目的とした資格です。中小企業診断士試験の財務・会計分野では、簿記2級の出題範囲と同様の内容が扱われ、財務会計と簿記2級のレベルはかなり近しくなっています

そのため、簿記2級を持っておくと財務会計の勉強はかなり楽になるでしょう。また、中小企業診断士の主要業務である企業の財務状況や会計情報の把握においても、簿記2級の知識が活かせます。

このように簿記2級は中小企業診断士の扱う内容を補完し、資格取得や職務遂行に大きく貢献する資格です。

簿記1級と中小企業診断士

簿記1級は高度な会計知識が必要とされる難関資格です。上場企業の経理業務を完全に理解し、経営者の視点から会計管理ができる水準が求められます。

しかし、そこまでの高度な会計知識が中小企業診断士試験に必須というわけではありません。中小企業診断士試験では、細かな経理業務よりも企業を診断する視点からの知識と技術が主に問われます。つまり、財務会計と比べると簿記1級の方がかなりレベルが高いということです。

したがって、中小企業診断士を目指す方は、簿記1級の取得を優先する必要はなく、中小企業診断士の試験対策に時間と力を集中する方がより効果的です。簿記1級は高度な会計知識を身につけるための資格ですが、中小企業診断士を目指す方にとっては最優先事項ではありません

中小企業診断士の財務会計の難易度と勉強法

中小企業診断士試験の「財務・会計」の科目では、経営資源の一つである「資金」に関する深い理解が必要とされます。経営コンサルティングにおいて、数値に基づく経営診断は不可欠であり、そのため財務・会計のスキルが重視されています。

財務・会計は、アカウンティング(会計)とファイナンス(財務)の2つの大きな分野に分かれます。さらに、アカウンティングには、企業の外部向け情報を扱う財務会計と、内部意思決定に役立つ情報を提供する管理会計があります。ファイナンスでは、資金調達や投資に関する知識が求められます。

財務会計の難易度・勉強時間

科目

勉強時間

財務・会計

200時間

経済学・経済政策

160時間

企業経営理論

120時間

経営法務

120時間

経営情報システム

100時間

運営管理

100時間

中小企業経営・政策

70時間

中小企業診断士試験の中でも、財務・会計は最も難易度の高い科目と言われています。

企業の健全性や成長性、リスクを評価するための重要な手段である財務・会計を的確に理解するには、会計の基礎から応用まで幅広く深く学ぶ必要があり、また法制度の変更にも常に対応していく必要があります。

そのため、他の科目と比べて財務・会計の勉強には最も多くの時間を要します。特に初学者の場合は、他の科目の2倍以上の勉強時間が必要となることもあります。

財務会計の勉強法

財務・会計の試験では、1次試験でも2次試験でも計算問題を確実に解くことが最も重要です。

中小企業診断士の試験では、計算問題が頻繁に出題されるため、計算が苦手な受験生にとっては不合格につながる可能性があるのです。

特に2次試験の「事例Ⅳ(財務・会計)」では、計算問題が重要なポイントとなります。この計算問題を確実に解けるようになれば、計算が苦手な受験生との差をつけることができ、結果的に2次試験の合格につながります。

そのため、戦略としては「経営分析」「損益分岐点分析」「キャッシュフロー計算書」「投資評価」などの計算問題に注力することが大切です。これらのテーマは1次試験と2次試験の両方で出題されやすく、対策の中心となるべき項目です。

中小企業診断士の試験に活かせる簿記の知識とは?

中小企業診断士の1次試験で有効な簿記の知識

中小企業診断士の一次試験は、①経済学・経済政策、②財務・会計、③企業経営理論、④運営管理、⑤経営法務、⑥経営情報システム、⑦中小企業経営・政策の7科目です。

このうち、簿記の知識が活かせる科目は「財務・会計」です。試験内容としては、簿記の基礎知識、会計帳簿、一通りの決算処理についてです。簿記に必要な財務諸表の読み取りや分析する力が中小企業診断士の試験問題にかなり役立ちます。

中小企業診断士の2次試験で有効な簿記の知識

中小企業診断士の二次試験は、①組織・人事、②マーケティング・流通、③生産・技術、④財務・会計の4科目です。

このうち、簿記の知識が活かせる科目は「財務・会計」です。一次試験と全く同じ科目があるのはこの「財務・会計」のみで、それだけ中小企業診断士の資格試験においても重要な科目であることがわかると思います。

そのため、この「財務・会計」の知識を簿記で身に着けていることで、中小企業診断士の資格取得に大きなアドバンテージになることは間違いありません。

中小企業診断士の勉強に簿記はいらないってほんと?

中小企業診断士になるためには、簿記の勉強は必須ではありません。ただし、簿記の知識があれば、中小企業診断士試験の学習がスムーズに進むでしょう

簿記の資格を持っていると、現場での対応力が高まるというメリットもあります。一方で、診断士試験は簿記以外にも法律、マネジメント、経済など幅広い分野の知識が求められます。そのため、簿記に偏った学習よりも、各分野の基礎教養を均等に身につけることが効率的です。

そのため中小企業診断士試験のために、新たに簿記を学び始めることは推奨しません

簿記資格は免除制度の対象ではない

中小企業診断士試験を効率的に合格するには、免除制度の活用と簿記資格の取得が有効な戦略です。免除制度では、特定の資格保持者は一部試験科目が免除されますが、残念ながら簿記資格は免除対象外です。

しかし、試験では簿記2級程度の知識が必要とされるため、簿記2級の取得は試験対策に役立ちます。免除可能な科目と自力で勉強が必要な科目をしっかり把握し、効率的に合格を目指しましょう。

簿記と中小企業診断士の範囲の重複は多くない

先述のように、中小企業診断士試験では財務会計の科目において一部の簿記知識が求められます。したがって、簿記の知識があれば試験に有利に働くことは事実です。

しかし、簿記の範囲が全て中小企業診断士試験で求められるわけではありません。実際に重複している部分は全体の1部分です。そのため中小企業診断士合格までの効率的なルートを考えると、わざわざ簿記資格を経てから診断士試験に挑戦するのは無駄が多いと言えます。

このように、試験対策のみを考えれば、両資格の取得は必須ではありません。

ただし、中小企業診断士としての専門性を高めるという目的であれば、簿記と診断士の双方の資格を持つことには価値があるでしょう

中小企業診断士と簿記のダブルライセンスの相性は?

中小企業診断士と簿記の資格は相性がよく、相互に役立つものです。中小企業診断士は、企業の財務分析からビジネスの課題を見つけるため、簿記の知識が財務諸表を正しく理解する上で欠かせません。

また、中小企業診断士試験でも簿記に関する出題があり、簿記の理解が試験対策にもなります。さらに、両資格を持つことで経営コンサルタントとしての専門性が高まり、財務面での課題解決力が増すため、集客力の向上にもつながります。

現代の経営環境では財務面の課題が多く、中小企業の経営改善を支援する上で、中小企業診断士と簿記のダブルライセンスは大きな価値があると言えます。

中小企業診断士と簿記どちらから取得するべき?

簿記と中小企業診断士のダブルライセンス取得を目指す際、多くの人が悩むのは、どちらから勉強を始めるべきかということです。

おすすめは、まず「簿記2級」から取り組むことです。中小企業診断士試験には、「財務・会計」の分野で出題される問題は「簿記2級」のレベルに相当するためです。簿記の知識があれば、中小企業診断士試験に有利に取り組めます。

そのため、簿記2級の勉強を先に済ませておけば、その知識を活かして中小企業診断士試験の準備に集中でき、合格の可能性も高まります。

中小企業診断士と簿記1級どっちがおすすめ?

経営コンサルティングや会計分野で活躍したい方は、中小企業診断士と簿記1級のどちらの資格を取得すべきか悩むことがあるでしょう。結論から言えば、キャリア展開の可能性が広がるのは中小企業診断士資格でしょう。

中小企業診断士は、企業経営全般に関する幅広い知識が身につく国家資格です。そのため、経営管理職、経理職、経営企画職、財務職など、さまざまな職種で活躍できます。さらには、経営コンサルタントとしてのキャリアも視野に入れられます。

一方、簿記1級は会計の専門知識を深める資格です。将来的に税理士や公認会計士を目指す方に適しています。

両資格とも難易度が高い試験ですが、多岐にわたる分野で活用できる中小企業診断士の方が、長期的にみてキャリアアップのメリットが大きいと言えます。

社労士や税理士とのダブルライセンスも人気

中小企業診断士の資格を持つことで、企業経営の様々な側面に関わることができます。しかし、他の専門資格を取得することで、より深い知識と視野を得られ、企業への提案の質を高められます。

特に社会保険労務士、税理士、ファイナンシャルプランナーの資格が相性が良いでしょう。社労士資格により人事労務分野の専門知識が深まり、税理士資格で税制の詳細を学べます。FPの資格を持てば財務や資金管理の専門性が身につきます。

こうした専門性を併せ持つことで、サービスの幅が広がり、具体的な解決策を提示できるようになります。専門性の高さは企業からの信頼を勝ち取る重要な要素であり、収入アップにも繋がります。

中小企業診断士として更なるスキルアップを目指す方には、こうした専門資格の取得がおすすめです。

中小企業診断士資格を取得するメリット

論理的思考力を強化できる

中小企業診断士の資格取得を通して、論理的思考力を身につけることができます。この能力は、ビジネスシーンでの意思決定や問題解決に役立ちます。

経営者や管理職は日々さまざまな問題に直面しますが、論理的思考力を活用することで、本質を見極め、最適な解決策を導き出すことができます。また、人間関係においても有用で、話の論点を明確にすることで円滑なコミュニケーションが可能になります。

中小企業診断士の学習は、複雑で曖昧な事象を整理し、分析する力、そして論理的に考え、結論を導く力、さらにはそれを適切に伝える表現力を養うことができます。このように、論理的思考力は現代社会で必要不可欠なスキルであり、一生役立つ能力といえます。

幅広い人脈を形成できる

中小企業診断士の資格取得過程では、様々な経歴を持つ受験生が学び合い、幅広い人脈を築くことができます。合格後も、中小企業診断協会や研究会に参加することで、そのネットワークはさらに広がっていきます。

こうした豊かな人的ネットワークこそが、中小企業診断士の大きな強みとなります。彼らはその人脈を活用し、企業と専門家や行政機関をつなぐ架け橋の役割を果たしています。また、企業内部においても、部署間の溝を埋め、俯瞰的な視点から全体を見渡す存在として活躍できます。

中小企業診断士の資格は、知識を深めるだけでなく人とのつながりを広げ、新たな可能性を切り拓く重要な機会ともなるのです。

経営者側の目線が身に付く

中小企業診断士の資格取得は、経営者目線を身につけるための大きな機会となります。これは一見些細なことに思えるかもしれませんが、実はその影響は本質的に大きいのです。

従来の個別業務からは見えなかった会社全体を俯瞰する視点を獲得できるため、自社とどう向き合い、組織や事業をどう運営すべきかを学ぶことができます。

さらにこの経営者視点を持つことで、組織やキャリアの将来像を描くビジョンを立てやすくなります。将来のビジネス環境を見据え、自社や自身の進路を具体的に描くことができ、目標達成に向けた戦略立案が可能になるのです。

中小企業診断士と簿記の関係まとめ

ここでは診断士に求められる簿記能力の水準や、財務会計との深い関わりについて説明しました。中小企業診断士には財務会計や管理会計の知識が求められ、簿記の理解が試験対策や業務に有利です。

診断士試験には簿記の知識が活かされ、特に「財務・会計」の科目では簿記2級程度の理解が必要です。簿記3級や2級を取得することで試験準備がスムーズになり、企業の財務状況の把握にも役立ちます。

また、両資格を持つことで専門性が高まり、経営改善や財務面での課題解決力が向上し、経営コンサルタントとしての評価も高まることでしょう。