IT業界はやめとけと言われる理由は?エンジニアや情報系の転職が辛い原因を解説

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IT業界は未来への期待が高い一方で、働き方に対する懸念の声も上がっています。本記事ではIT業界における働き方の課題や、エンジニアなどの情報系職種の転職が困難となる理由について具体的に探っていきます。

IT業界やITエンジニアがやめとけと言われる理由は?

IT業界やITエンジニアが避けられる原因は何なのでしょうか。ここではその理由を5つご紹介します。

多重下請け構造に問題があるから

ITシステム開発においては、多重下請け構造が深刻な問題となっています。プロジェクトが上流工程と下流工程に分かれ、下層の企業は主に下流工程を担当することが多いです。 

そのため下流工程のエンジニアは課題解決のための技術力は磨けても、上流工程を経験する機会が少なく、幅広い視野や統括力を身につけにくい状況があります。

このような構造ではエンジニアのスキルアップやキャリア形成が阻害されてしまうため、改善が求められています。

労働時間が長く給料が低いから

現代社会では、長時間労働と低賃金が避けられない課題となっています。これは中小企業、特に下請け企業で顕著に見られる問題です。

その原因は、収益の配分が公平でないことにあります。大手企業は高い利益を上げる一方で、下請け企業には僅かな利益しか渡りません。つまり、上流企業が過剰な利益を独占し、その影響が下流企業へと連鎖するのです。

結果として中小企業の収入が減少し、生き残りをかけた経営を強いられます。従業員の賃金が抑えられ、長時間労働を余儀なくされる悪循環に陥っているのが実情です。

AIに業務を代替される可能性があるから

AIの技術進化により、特にITの分野では機械的な作業がAIに置き換えられる可能性が高くなっています。プログラミングやテストなどの下流工程はパターン化された作業が多いため、AIによる自動化が進みやすい一方で、要件定義や設計など上流工程では人間ならではの概念理解力や抽象思考力が必要とされます。

したがって、ITエンジニアとしてAIに代替されるリスクを減らすには上流工程を担当できるスキルを身につけることが重要です。AIの発展は下流工程の自動化を促進しますが、上流工程の人的貢献を不可欠とするため、新たなビジネスチャンスをもたらすと考えられます。

離職率が高いから

厚生労働省が令和4年に実施した賃金構造基本統計調査では、情報通信業の離職率は11.9%ということが判明しました。

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

IT業界の離職率は全産業平均を下回っていますが、業界特有の転職市場の活発さやスキルアップを求めて優れた企業に移籍する動きがあります。

このような機動性の高さが離職率が低い要因とされています。IT業界の離職率を単に数値だけで判断するのではなく、業界の働き方や機動性を踏まえた上で理解することが重要です。

若者が多く、40代や50代まで勤め上げるのが難しそうだから

IT業界は平均年齢が40.2歳と他産業と比べて最も若く、男性は平均41.5歳、女性は平均36.8歳と男女ともに最も若い平均年齢となっています。一方で、全産業の正社員・正職員の平均年齢は42.6歳で、男性43.5歳、女性40.8歳となっています。

IT業界の若さは同業界の成長と変容を反映していますが、若者が多いため40代や50代まで勤め上げるのが難しいとの意見もあります。

しかし、この動きは業界が活力ある若者や新しい技術・発想に対応できる体制を維持していることの証明でもあり、年齢に縛られない働き方を選ぶ人も増えています。

IT業界は発展途上でまだまだ新しい風を吹き込む余地があることを示しています。新しい技術や発想は年齢を超えた活躍の機会を生み出し、業界自体の進化にも貢献するでしょう。

IT業界で働くメリット

上記ではIT業界やITエンジニアが避けられている理由をご紹介しましたが、IT業界で働くことのメリットは何なのでしょうか。

業界全体が熱い

現代は経済環境の変化が激しく、企業の長期的な存続を確実に予測することは困難です。とりわけIT業界は変化のスピードが速く、人気のサービスや最新技術が次々と入れ替わります。しかし一方で、IT業界には未来への可能性とビジネスチャンスが豊富に含まれています。

ITは金融や不動産、物流などの分野で積極的に活用され、徐々に浸透しています。さらに、AIやIoT、ブロックチェーン、ビッグデータ、フィンテックなどの新技術が次々と登場し、各産業に大きな影響を与えています。

これらの新技術の出現によりIT業界の市場拡大が見込まれ、業界全体が活況を呈しています。進行中の新技術革命は経済全体に大きな変化をもたらし、新たなビジネスチャンスを生み出し続けるでしょう。

したがって、IT業界の現在の活況は、今後の経済動向を示す重要な指標となっています。

働き方が自由

IT業界は柔軟な働き方を可能にしており、ワークライフバランスを大切にする人々にとっておすすめです。リモートワークが可能なため、自分のライフスタイルに合わせて働く場所や時間を決められます。

出産や育児などの人生の大きなイベントを控えている人でも、仕事と家庭生活の両立がしやすくなっています。

専門スキルが身に付き、市場価値が高くなる

プログラミングやITに関する知識・スキルを身に付けると、自分自身の市場価値を高め、様々な業界での活躍の機会を広げてくれます。ITスキルは汎用性が高く、特定の企業や業界に限定されることがないため、幅広い分野で活用できるスキルとなっています。

IT業界を中心に、プログラミング能力や関連知識を持つ人材への需要は今後も高まっていくと予想されます。業界を問わず通用するITスキルを身に付けることで、自身のキャリアパスの可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。

起業や独立におすすすめ

IT業界では、他の業界と比べて独立志向の人材が多く存在します。その理由は、ITスキルを持つ人材の市場価値が高く、組織に頼らずに個人の力で働き続けることができるためです。Webマーケティングやプログラミングなどのスキルを身につけて、フリーランスとして活躍する人が多数います。

一方他の多くの業界では、作業が分業化されており個人で仕事を進めるスキルを身につけるのが難しい場合があります。しかし、IT業界では個人の力で働く力を培うことができます。

そのため、将来的に独立を目指す人にとっては、IT業界でのスキル習得は理想的と言えるでしょう。

IT業界に向いている人の特徴

IT業界には向き不向きがあります。自身のスキルや適性と照らし合わせて就職・転職しましょう。

知識をアップデートできる人

IT業界は日々進化を続けており、新しいテクノロジーが次々と登場しています。そのため、最新の知識とスキルを身に付けることが重要となります。固定概念にとらわれず、柔軟に新しいものを吸収し続ける姿勢が求められます。

自己啓発の意欲を持ち、常に学びを続ける人でないとこの業界では活躍できません。

IT業界の発展には、知識をアップデートし続ける人材の存在が不可欠なのです。

物事を論理的に考えられる人

論理的思考力は、さまざまな情報や課題から本質を見抜き、段階を踏んで解決策を導き出す能力です。このスキルはIT分野で特に重視されています。ITには常に新しい創造と円滑な機能が求められるため、論理的に物事を考えて推理し、システムを構築する力が欠かせないからです。

論理的思考力が重要視されるのはIT分野だけではありません。実際、ビジネス全般でも大きな価値があります。企業の利益最大化策やコスト削減策を立案するためにも、この力は不可欠です。

そのため、幅広い分野でキャリアを積みたい人にとって、論理的思考力を養うことは大変効果的です。日頃から物事をどう捉え、どう整理するかを意識的にトレーニングすれば、自身のキャリアの幅が広がるでしょう。

主体性や積極性を持ってる人

IT業界では主体性と積極性が常に求められています。この業界では絶えず新しい課題に直面し、解決策を見出す必要があります。未知の問題に立ち向かい、自力で対処できる人こそが真の主体性を発揮しているのです。

加えて、新しいスキルを積極的に身につけようとする姿勢も重要です。テクノロジーは日々進化しているため、学び続ける意欲のない人は取り残されてしまうでしょう。

自立した問題解決能力と向上心があれば、IT業界はもちろん、どの分野でも成功を収められるはずです。

人とのコミュニケーションが好きな人

IT業界では一人で黙々と作業をするイメージが強いかもしれませんが、実際には多くのチームプロジェクトが行われており、コミュニケーション能力が非常に重要です。特に、上流工程に関わる場合は人と接する機会が増えていくことでしょう。

プロジェクトの役割分担や期限の管理など、チームメンバーとのスムーズな調整が必要不可欠です。また、クライアントとの適切な交渉力や対応力も欠かせません。

業務の内容を問わず、誰とでもしっかりとコミュニケーションが取れる人は、職場やプロジェクト現場で重宝されます。

IT業界に向いていない人の特徴

IT業界は年収が高いと思い込んでいる人

IT業界への憧れから、一部の人は高年収を期待しがちですが、実際にはエンジニアの年収には個人差があります。優秀な技術力と専門知識を持ち、革新的なプロジェクトに携われば高収入を得られる可能性があります。一方で、下請け企業の場合は平均以下の年収となることもあります。

さらに、多くのプロジェクトは高い緊張感と厳しいスケジュールを要求され、長時間労働や休日出勤が珍しくありません。

そのため、報酬が業務内容に見合わないと感じることもあります。

IT業界に入る際は、年収だけでなく自身のスキルや将来像、働き方を慎重に検討することが重要です。業界の実情と自身の立ち位置を理解することで、長期的な満足につなげていきましょう。

勉強をするのが苦手な人

IT業界では日進月歩の変化を経験し、常に新しいスキルを身に付ける必要があります。勉強が苦手な人にとっては、この状況は大変な挑戦となります。

これらの経験を通じて、自己成長と自信を得ることができるのです。

IT業界で成功するには、挑戦と失敗を経験しながら学び続けることが欠かせません。最終的には、そのプロセス自体が報酬となり、勉強する楽しさとやりがいを実感できるでしょう。

変化が苦手な人

人間には変化を恐れる傾向があり、慣れ親しんだ環境や方法から離れることに不安を覚え、新しいことにチャレンジするのを避けがちです。

しかし、そうした消極的な姿勢では時代の変化に取り残されてしまいます。スキルを磨き続け、柔軟に適応することが成功への鍵となります。

人とのコミュニケーションが苦手な人

IT業界では、技術力だけでなくコミュニケーション能力も非常に重要です。プロジェクトを成功させるためには、チームで協力し合って顧客の要望を理解し、分かりやすく説明する力が求められます。

特にアジャイル開発のような開発方法では、スムーズな進行のために素早い意思決定やフィードバックが不可欠で、コミュニケーション能力が欠かせなくなってきます。

コミュニケーション力に課題があれば、業務効率の低下だけでなくキャリア形成にも影響を及ぼしかねません。

IT業界への就職・転職がおすすめの理由

多くの企業が業務のDX化に取り組んでいるから

独立行政法人情報処理推進機構が発表した『デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書』によると、企業のDX化は1年単位で急速に進んでいる様子が伺えます。

現代のビジネス環境では、企業がデジタル変革(DX)に積極的に取り組んでいます。その背景には、生産性向上や新たなビジネスチャンスの創出といった可能性が期待されているためです。

独立行政法人情報処理推進機構『デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書』

一方、大企業においてもDX化は着実に進んでおり、約8割の企業がすでに取り組みを開始しています。また、DX推進企業やデジタル事業に取り組む企業は、全体の約6割に上ります。

こうした状況は、エンジニアの需要をさらに高め、テクノロジー専門職の活躍の場を広げることにつながります。中小から大企業までの企業全体がDX化に取り組むことで、組織全体のデジタル化が進み、革新的な事業展開につながることが期待されています。

IT人材は特に中小企業で不足しており需要が高いから

IT技術の進化が加速する中で、中小企業においてもデジタル化の推進が重要な課題となっています。

しかし、資金や人材が限られる中小企業にとって、最先端の技術導入や人材育成は容易ではありません。一方で中小企業はフラットな組織体制により、一度意思決定が行われれば迅速かつ柔軟な対応が可能です。そのため、IT人材の確保が急務となっています。

IT人材には高い技術力と新たなビジネスチャンスを創出する能力が期待されており、中小企業の機動力と相まって、企業活動の効率化や新規事業の立ち上げにつながります。

このようなIT人材不足の解消には、教育体制の充実や良好な労働環境の整備、外部リソースの活用など総合的な対策が求められています。

スキル次第で年収アップが可能

IT業界への転職は未経験者にとって大きな挑戦ですが、スキルを磨きその価値を証明すれば、転職の成功のみならず年収アップも実現できます。求められるスキルを習得し、資格取得を通じて客観的に証明することが重要です。

「応用情報技術者」「ITストラテジスト」「プロジェクトマネージャー」などの資格を取得すれば、技術力だけでなく幅広い知識と視野を持つことが示せます。

また資格取得は自己啓発の姿勢を表すものでもあり、日々進化するIT業界において極めて重要です。未経験からの道のりは困難かもしれませんが、スキルアップとその証明を通じて、希望の転職と年収アップを手に入れられるでしょう。

未経験からIT業界への転職を成功させるには

スキルを取得し、自己分析をする

自分の強みや長所を正しく把握することは、キャリアプランを立てる上で非常に重要です。

しかし自分を過剰に評価したり、逆に過小評価しないために客観的な視点を持つことが不可欠です。

他者の目線から自分を見つめ直し、求められるスキルと自分の持つスキルを常に比較する姿勢が求められます。自分自身を深く理解することで適切な自己分析ができ、キャリア形成に役立つでしょう。

転職の軸を決め、理由を明確にする

転職は人生の大きな岐路であり、その目的は人それぞれ異なります。年収アップや待遇改善を望む人もいれば、ワークライフバランスの改善を求める人、自身のスキルアップを目指す人もいます。このように、転職の目的によって注目すべき条件は変わってきます。

転職理由は、新しい職種や企業を選ぶ際の評価基準となります。特にミスマッチを防ぐためには、初期段階で自分が何を軸に転職活動を進めるのかを明確にしておくことが重要です。

理想の働き方を実現するためにも、きちんとした転職の軸を設定しましょう。転職理由の明確化は、適職探しの指針となるのです。

企業や業界について調べる

転職活動を円滑に進めるためには、企業や業界の研究が欠かせません。そこでは自分の価値観や働き方に合った企業を見つけられるだけでなく、業界全体の動向や将来性を理解することができます。

組織文化や福利厚生、ビジネスモデル、市場環境などの様々な角度から企業や業界を分析することで、志望動機を明確にし自身にマッチした転職先を見極められるのです。

企業や業界研究は適切な自己PRにもつながり、効率的な転職活動を可能にする重要な行程です。

転職エージェントを活用する

転職は人生の大きな決断の一つのため不安を感じる方も多いでしょう。しかし転職エージェントを活用すれば、そんな不安を払拭することができます。転職エージェントは無料で利用でき、熟練のキャリアアドバイザーがあなたの長所や適性を見極めた上で、最適な求人を提案してくれます。

一人で探すより、はるかに効率的に希望の職場が見つかる可能性が高くなるでしょう。また、面接対策や書類添削のサポートも受けられるため、準備も万全に進められます。

IT業界への転職は辞めておくべき理由まとめ

IT業界への転職は簡単なことではありません。新しい技術の習得には、時間と継続的な学習が必要で、競争も激しく大変な努力が求められます。

また、ストレスやプレッシャーに耐える心理的な強さも欠かせません。一方で、スタートアップ企業の場合は安定性に欠けるリスクがあり、大手企業では激しいペースに適応しなければならず、ストレスの原因にもなりかねません。

しかし、自己啓発の意識と自己管理能力を備えていれば、転職はスキルアップの良い機会となります。変革は困難を伴いますが、経験を糧にして自らを成長させることができることでしょう。