ITエンジニアの離職率はどれくらい高い?転職理由やブラック企業の特徴も解説
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近年、IT業界ではエンジニアの離職率が高いと言われています。
本記事では、実際の離職率と、転職の理由やブラック企業の特徴について掘り下げていきます。IT業界の労働環境とキャリア形成の実態に迫りましょう。
IT業界の離職率の実態を紹介
IT業界の離職率は他業界と比較して決して高くありません。10人のうち1人程度が年間で職を離れる程度です。しかし、離職理由は人それぞれで、ブラック企業を離れるケースもあれば、スキルアップのためのキャリアチェンジもあります。
したがって、離職率の数値だけから業界全体を判断することはできません。全体の約3分の1が新卒3年目までに転職を経験すると言われているこの時代、第二新卒の離職率が高いのも、他業界と比較して異常な数字ということはありません。IT業界が必ずしもブラックであると一般化するのは難しいでしょう。
ブラックIT企業でエンジニアが離職する理由
多重下請け構造による格差があるから
IT業界は多種多様な業種から構成されており、その一部を占めるSES企業がエンジニアを派遣しています。SES企業の役割は、大手企業からシステム開発の依頼を受け、自社のエンジニアを提供することです。
しかし、大規模なシステム開発では人員が不足することが多く、下請け企業に業務を委託します。こうして発生する階層構造が、いわゆる多重下請け構造です。
この構造により、待遇に格差が生まれます。顧客から直接発注を受ける元請けSES企業は、比較的良好な労働環境になっていますが、派遣先の役割が下位になるほど待遇が劣化します。同じ業務内容でも、元請け企業のエンジニアに対する報酬と大きな開きがあるのです。
また、多重下請け構造は業務内容にも影響を及ぼします。元請け企業のエンジニアは設計や要件定義など上流工程に携わりますが、下請け企業ではコーディングやテストが主体となり、スキルアップに限界を感じる人もいます。
勤務時間が長すぎるから
ITシステムエンジニアリングサービス業界では、クライアントの厳しい納期要求に応えるため、多くの企業が長時間労働や休日出勤を強いられています。特に下請け企業ほど、予期せぬ変更対応が求められ、残業が常態化しがちです。
さらに、一部企業では固定残業制を採用しており、月々の給与に一定時間の残業代が含まれています。この場合、残業が前提となっているため、長時間働かざるを得ないといえるでしょう。
転職を検討する際は、求人の給与額に固定残業代が含まれているかを確認し、自分の働き方に合っているかを慎重に判断する必要があります。
人材需要が高いため転職に困りにくいから
IT業界は急速に成長しており、経験豊富な技術者が不足しているため、未経験者でも積極的に採用されています。しかし、業界の実情が期待と異なるため、従業員の離職につながります。
特にシステムエンジニアリングサービス(SES)は、大規模システム開発を行う必要があり、厳しいセキュリティルールや多様な人員派遣などから、労働環境が厳しい傾向にあります。このため、IT業界の働き方改革が求められる中、SESはむしろ逆行していると感じられ、業界のイメージとのギャップから離職を考える人も少なくありません。
一方で、IT業界では即戦力となる人材が常に求められており、一定の経験を持つエンジニアにとっては転職先が見つかりやすい業界です。独学やSESを経験した後にWeb業界へ進出したり、1年から3年の経験があればフリーランスで仕事を見つけることも可能です。
突発的なトラブルに対応するのがきついから
一般企業では定時制が基本ですが、IT企業のエンジニアは防災のため24時間監視が義務付けられており、勤務シフトが不規則で予測困難な状況が常態化しています。特にインフラエンジニアは、夜勤や緊急出勤が頻繁に発生するため、大きな負担を強いられています。このような労働体制は、多くの労働者にとって過酷であり、ストレスの原因にもなりかねません。
長時間労働や過酷な勤務環境は、ブラックIT企業を離れるエンジニアの大きな要因の一つです。健全な労働環境を実現するには、このような勤務体制の改善が求められます。
平均勤続年数が短いIT企業の特徴
若手が特に重要視される
IT業界では、新しい視点や最先端の知識を持つ若手社員が重視されています。若手社員の存在は、年功序列的な古い体制を打破し、新しい風潮を生み出すことにつながります。そのため、20代から30代の若手社員が中心となり、課題解決力やアイデアを重んじる風潮が業界全体に広がっています。
この結果、平均勤続年数が短くなるのは自然な流れと言えるでしょう。IT業界の環境は変化が激しく、企業のビジョンや方向性も変わりやすいため、若手の採用が重視されます。結果、彼らの活躍の場が広がっています。
したがって、若手社員が多い企業では、平均勤続年数が短くなるのは業界の特性上避けられない現象と捉えられています。
事業を積極的に拡大している
IT業界では、企業の成長に伴い、積極的な事業拡大と新規事業への挑戦が見られます。その結果、様々な背景を持つ新入社員が次々と採用されるため、企業全体の平均勤続年数は短くなる傾向にあります。
平均勤続年数が短いということは、その企業が活発に成長していることの表れにもなります。成長過程にあるIT企業にとって、新たな人材の確保は持続的な事業拡大に不可欠なのです。
職種や仕事内容が変わらない
ITエンジニアの業務は、設計、保守、監視等様々な過程に分かれています。
しかし、一部の企業では業務を特定の範疇に限定することがあります。例えば、ある企業では監視業務のみ、別の企業では保守業務のみをエンジニアに任せるなどです。このような理由から、エンジニアが特定の業務に慣れすぎてしまうと、仕事の内容が変わらずスキルアップができないため、退職率が上がる傾向にあります。
監視業務のみを担当する企業では、日々の作業が単調になりがちです。設計や構築など別の業務に携わりたくても、キャリアパスがないケースが多く見受けられます。そのため、新しい挑戦をしたいエンジニアは他社へ転職するしかありません。
キャリアパスが用意されていても、十分な知識やスキルがあっても評価されず、上流工程を任されないこともあります。積極的に知識を深めても活かせない場合、新天地で挑戦することを選ぶかもしれません。
転職者や新入社員へのフォローが薄い
新入社員は社会人生活に戸惑いを感じることが少なくありません。初めての業界や業務に新鮮な刺激を覚えながらも、何から取り組めばよいのか分からず困惑することもあります。さらに、上司や先輩から適切な指導や説明がなされないと、未経験者は不安を強く抱くことになります。
具体的な業務の進め方や取り組むべき箇所について説明がなかったり、質問しても自力で解決するよう言われたりすると、そのような企業はサポート体制が不十分であることがうかがえます。また、中途採用の社員でも、新しい職場で十分なサポートがなければ、ストレスが高まってしまいます。
このような状況下では、自己解決に頼らざるを得ず、なかなか解決策が見つからない場合は精神的負担が大きくなり、最悪の場合は退職に至ることもあります。
平均勤続年数が長いIT企業の特徴
企業が長い歴史を持っている
長い歴史を持つ企業は、確かな信頼性と強固な基盤を備えており、雇用も安定していると考えられます。このような企業は、様々な困難を乗り越え、進化を続けてきたことを物語っています。豊富な経験と深い洞察力を持つこれらの企業は、従業員にとって自身のスキルを磨く絶好の機会を提供します。
そのため、従業員は長期的にキャリアを重ねることを選択しがちです。自身の技術や知識を高め、企業と共に成長するために長年勤めることに価値を感じるからです。
このように、企業の長い歴史が従業員の長期勤続につながり、経験豊富な人材が集まることで、企業全体としての更なる発展が期待できるのです。
比較的に経営が安定している
平均勤続年数の長さは経営基盤が安定していることの表れです。景気の影響を受けやすい経済活動の中で、リストラなどを避け続けているのは、経営が安定していることを物語っています。従業員の定着率の高さは、企業の経営が安定しており、従業員に安心感を与えていることを示しています。
長期的に見れば、このような安定性は企業の持続的成長に欠かせず、従業員に安定した雇用を約束する証となるのです。
ホワイトで従業員が働きやすく、福利厚生が整っている
平均勤続年数が長い企業は、従業員の働きやすさを重視し、手厚い福利厚生制度を整えています。産休・育休制度や資格取得支援など、従業員がキャリアを継続しやすい環境を整備することで、職場環境の改善と人材の定着化を図っています。
結果的に、働きやすく安心感のある職場を提供することで、長期勤続を実現し、企業の地位を維持しているのです。
年収が高い
私たちが働く最大の理由の一つは生活のための収入を得ることにあります。十分な収入があれば、生活の安定が図れるだけでなく、欲しいものを購入したり、趣味や旅行を楽しむなど、より豊かな生活を送ることができます。そのため、自然と給与の高い会社を望むようになります。高給与の環境では、社員の離職率が低く抑えられる可能性があります。
また、高給与は社員への経済的な還元であり、企業が社員の福利厚生や長期的な雇用を重視していることの表れでもあります。したがって、収入が高い企業は社員のためを考えた決定や行動をしていると言えるでしょう。
離職率が高いIT企業に入らないための対策
就職四季報や有価証券報告書をチェックする
転職・就職活動において、企業を適切に評価するためには、客観的なデータを活用することが重要です。就職四季報では、各社の平均年収、残業時間、離職率などの情報が公開されているので、企業の実態を把握するのに役立ちます。
また、上場企業の場合は、有価証券報告書から企業の業績や従業員の平均年収などを確認できます。これらの情報を活用することで、企業の競争力や将来性を冷静に判断することができます。事前調査には手間がかかりますが、後々のキャリアに影響するため、しっかりと行うことで納得のいく就職が実現できるでしょう。
IT転職エージェントを活用する
IT転職・就活エージェントは、専属のコンサルタントが適切な企業をあなたに合わせて紹介してくれる素晴らしいサービスです。ブラック企業を避け、将来性のある優良IT企業への道筋を示してくれます。サービスに登録すれば、あとは良いオファーを待つだけで、効率的に転職活動ができます。
忙しい社会人や学生でも、時間を無駄にすることなく有望な企業にアプローチできるのが魅力です。登録は簡単で5分ほどで済み、しかも無料なので、転職や就職を考えている方は、ぜひこの機会を活用してみてはいかがでしょうか。
口コミや評判サイトを見る
離職率の高いIT企業を避けるための判断材料として、口コミや評判サイトが有効です。こういったサイトには、現役従業員や元従業員の生の声が集まっており、会社の雰囲気、待遇、実際の業務内容、人間関係などを知ることができます。
企業が発信する情報だけでなく、実際に働く社員が感じている本当の企業文化や、業種によって異なる働き方の実態を垣間見ることができます。これらの情報は、入社すべきIT企業かどうかを見極める上で重要な要素となります。
ただし、口コミ情報は参考にすぎず、すべてが正確とは限りません。口コミで見た情報をうのみにせずに企業を選んでいくべきです。
離職率を改善するために企業ができる取り組み
採用する人材像を明確にしておく
離職率を改善するためには、企業が求める人材像を明確に定め、部署内で共有することが重要です。具体的な採用基準を設けることで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。求められるスキルや働き方、チームの雰囲気に合った人材を採用することが理想的です。
特に変化の激しいIT業界では、新入社員や若手のスピーディな成長が組織の業務効率化につながります。しかし、適性や相性が合わない人材を採用すると、チーム全体のパフォーマンスが低下し、採用された人材自身の満足度も下がり、ついには離職に至る恐れがあります。
そのため、求める人材像を明確にし、部署内で共有することは、チームワークと生産性の向上、そして離職率の低下につながります。このプロセスには時間と労力がかかりますが、長期的な視点から見れば、十分に投資する価値があります。
従業員のコミュニケーションの場を増やす
従業員同士の交流を深めることは、会社全体の絆を強めるうえで非常に重要です。これまでは社員旅行や懇親会が交流の場として活用されてきましたが、休日の使用や上司との関係を気にする点などから一部の社員から不評がありました。
近年、良いワークライフバランスを求める従業員が増え、副業を認める企業も出てきています。一方で、企業側はフィットネスジムなどの施設を割安で利用できる福利厚生を提供しています。従業員同士のつながりを深めることで、互いへの理解と協力が生まれ、組織全体の力が高まるのです。
新入社員と中途社員のフォローを手厚くする
IT業界では人材の入れ替わりが激しく、即戦力として活躍できる人材が求められがちですが、それが新入社員に大きなプレッシャーとなり、モチベーションの低下を招く恐れがあります。
そのため、企業は定期的な面談やサポートを行い、上司と部下のコミュニケーションを促進する風通しの良い環境づくりに努める必要があります。そうすることで、社員一人ひとりが前向きな姿勢を持てるようになり、多角的な視点からのアドバイスによってモチベーションの維持・向上や離職率の改善が期待できます。
従業員の評価基準を改める
企業が社員の離職率を改善するためには、一人ひとりの能力や特性に合わせた適切な評価制度を構築することが重要です。定期的なストレスチェックや個別面談を通じて、社員の本音や要望を把握し、評価基準の見直しを行うことで、社員一人ひとりのモチベーションと意欲を高めることができます。
また、振り返りの機会を設けることで、進捗状況を確認しながら、個別の目標設定と適切な評価を行うことが求められます。こうした取り組みにより、社員が自身の成長と貢献を実感できるようになれば、リテンション向上やパフォーマンス向上につながり、結果的に離職率の改善が期待できます。
離職率の低いホワイトIT企業ランキング
順位 | 会社名 | 新卒離職率 |
1 | 電通国際情報サービス | 0.00% |
2 | インフォコム | 0.00% |
3 | サイバネットシステム | 0.00% |
4 | エクサ | 2.60% |
5 | 中電シーティーアイ | 2.70% |
6 | ソニーグループ | 3.50% |
7 | 日本電信電話 | 4.60% |
8 | 日本情報通信 | 4.80% |
9 | トレンドマイクロ | 5.00% |
10 | オージス総研 | 5.40% |
11 | ブレインパッド | 5.60% |
12 | ウイングアーク1st | 5.60% |
13 | 伊藤忠テクノソリューションズ | 5.80% |
14 | エクシオグループ | 5.90% |
15 | NEC | 6.40% |
16 | 日立ソリューションズ | 6.90% |
17 | SCSK | 7.00% |
18 | 日立システムズ | 7.00% |
19 | NECネッツエスアイ | 7.30% |
20 | 兼松エレクトロニクス | 7.40% |
近年の新卒者の早期離職が課題となる中、一部のIT企業では新入社員の定着率が非常に高いことがわかります。これらの企業は、丁寧な教育体制やスキルアップの機会、働きやすい環境を整備することで、入社時の期待と乖離が少なく、長期勤続を実現しています。ランキング上位企業の多くが新卒3年以内の離職率5%以下と驚異的な数字を示しており、最下位でも12%と低水準にとどまっています。
このことから、優れた人材育成と働き方改革に注力するIT企業ほど、社員の定着率が高く、企業の成長にも好影響を与えていることがうかがえます。
【独自調査】IT業界のリモートワーク事情
IT業界におけるリモートワークの活用状況を年代別に調査したところ、20代から40代を中心に高い導入率を示していることが明らかになりました。
特に40代では週5日以上のリモート勤務が30.9%と最も高く、柔軟な働き方が定着しています。
30代では週3日のハイブリッド型が29.2%と主流となっており、オフィスワークとリモートワークのバランスを重視する傾向が見られます。
20代においては、週5日以上が26.7%を占める一方で、週3日以下の柔軟な勤務形態も採用されており、多様な働き方が実践されています。
一方、50代以上ではリモートワークを活用していない割合が60%を超え、従来型の勤務形態が依然として主流となっています。この世代間のギャップは、デジタル技術への適応度や業務内容の違いを反映していると考えられます。
【独自調査】IT業界における女性エンジニアの実態?
IT業界における女性エンジニアの割合は、依然として低い水準にあることが調査で明らかになりました。
特に注目すべきは、女性エンジニアの比率が20~40%の企業が32.4%と最も多く、0~20%の企業も29.6%を占めており、業界全体の女性比率の低さが浮き彫りとなっています。
また、40~60%の企業は18.3%にとどまり、男女比のバランスが取れている企業は限定的です。
さらに、80~100%の女性エンジニアが在籍する企業はわずか1.4%で、業界における女性の参画は著しく少ない状況です。
IT業界の離職率まとめ
ITエンジニアは過重労働やスキル不足感から離職率が高い現状があります。
一方、ブラック企業といわれる職場では、適切な評価がなされず、過酷な労働条件が課されたり、社員への配慮が欠けているケースが多いようです。
長期的にエンジニアとして活躍するには、自分自身を肯定的に捉え、スキルアップに励むことに加え、働く環境を慎重に選ぶ必要があるでしょう。
項目 | 詳細 |
調査名 | IT業界への転職経験者が対象の当社独自調査 |
対象者 | IT業界で働いた経験がある方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年10月19日~10月26日 |
回答数 | 71 |