行政書士は簡単に合格できる?難易度や偏差値の実態を調査!

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行政書士試験について、しばしば耳にするのが「簡単に合格できる」という噂です。しかし、この試験が本当に簡単なのかという問いに対しては、一概には答えられません。

試験内容の広範囲にわたる知識、法律用語の理解、さらには実務に関わる具体的な応用力が求められるこの試験は、多くの受験生にとって確かな挑戦となっています。

この記事では、行政書士試験の実際の難易度や、合格に向けての適切な勉強方法について探っていきます。


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行政書士試験は簡単?

行政書士試験は簡単なのか


昔は簡単すぎることで有名だった

昔の行政書士試験は、「当てずっぽうで答えても受かる」と言われるほど、選択式や穴埋め問題が中心で、非常に簡単であるというイメージが広がりました。多くの人が今もその時のイメージを持ち続け、行政書士試験は少しの勉強で誰でも合格できる、と捉えがちです。

また、公務員は一定期間の勤務を経て、試験なしで行政書士資格を取得できる制度もあり、これが「誰でも受かる」という誤解を強める原因となっているようです。

行政書士には試験免除制度が存在する

行政書士資格には、特定の条件を満たせば試験免除となる制度が存在します。

この制度は、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士などの他の専門職資格を持つ人や、国家もしくは地方公務員が一定期間、行政事務に携わった経験がある場合に適用されます。具体的には、中卒者の場合20年以上、それ以外の場合は17年以上の行政事務経験が免除条件となります。

そのため、「誰でも取得できる簡単な資格である」というイメージを持っている人もいるのかもしれません。

誰でも挑戦できる

行政書士試験は、受験資格に制限がないため、幅広い人々に挑戦の機会を提供しています。学歴、職歴、年齢、国籍を問わず、誰もが受験することが可能です。

受験資格がないために、比較的取り組みやすい試験であるという印象に繋がり、試験のハードルが低いと感じられる要因の一つとなっています。

絶対評価だから対策しやすい

行政書士試験が多くの受験生にとって対策しやすいとされる主な理由は、試験が絶対評価で行われることにあります。絶対評価とは、合格基準点が事前に設定されており、その点数を超えれば誰でも合格することができるシステムです。

明確な合格ラインのおかげで、受験生は目標に向かって具体的な学習計画を立てやすくなります。他の試験で見られる相対評価は、合格率や合格者数に基づいて合格基準が決まるため、年度によって難易度が変わりがちですが、行政書士試験ではそのような不確定要素が少ないため、安定した準備が可能です。

他士業の試験よりも易しい

行政書士は、通称「八士業」と呼ばれる専門職の一つであり、その中でいえば試験の難易度は比較的低いとされています。八士業には、行政書士の他に司法書士、社会保険労務士、弁護士などが含まれ、これらの専門家は、職務上住民票や戸籍謄本の請求が可能な権限を有しています。

行政書士試験は、このグループ内でも、そして独立開業を目指す他の専門職の試験、例えば公認会計士や中小企業診断士などと比較しても、相対的に易しい部類に入ります。

行政書士は馬鹿にされていた

行政書士は、かつて「代書屋」と呼ばれ、免許の更新など官公庁に提出する書類の作成や代筆を主な業務として行ってきました。この職業は、以前は高等教育を受けられず、公的書類の作成が難しいとされた人々のサポートが必要だった社会背景から生まれました。

しかし、高校や大学の進学率が向上するにつれ、自分で書ける書類を有料で依頼することへの批判的な視線が強まりました。また、一部からは、「教育を受ける機会がなかった人々を利用している」との声もありました。

さらに、行政書士の業務は、一般的にブルーカラー層を相手にするものであるため、高収入を望める職種とは見なされず、「稼げない資格」として軽視されることも少なくありませんでした。

行政書士試験は本当は難しい

行政書士試験は本当は難しい


合格率はわずか10~14%

過去5年間のデータを基に行政書士試験の難易度を検討すると、合格率は10%から14%の間となっており、これは他の士業試験と比較しても低い水準に位置しています。つまり、実際には高いレベルの知識と理解を要求される難しい試験であるのです。多くの受験生が挑戦するものの、厳しい合格基準により合格できるのはわずかな割合に限られるのが実情です。

年度

合格率

2023年

13.98%

2022年

12.13%

2021年

11.18%

2020年

10.72%

2019年

11.48%

2018年

12.70%

試験範囲が広くなった

時代が経つにつれ、行政制度はより複雑なものとなり、行政不服審査法などの新しい法律が次々と導入されました。そのため、行政書士試験の出題範囲の拡大にも影響を及ぼし、現代の受験生は昔の受験生に比べてはるかに広範な知識を身につけなければならなくなっています

難化した試験

2000年と2006年に実施された行政書士試験では大幅な変化がありました。これらの変革を通じて、「理解力、思考力等の法律的素養」を重視し、多肢選択問題の導入や記述式問題の拡充が図られました。

記述式問題では、40字程度の回答を要求されるなど、以前に比べて格段に難しさが増しています。このような変更は、現在の行政書士試験が単なる知識の暗記ではなく、深い法律的理解と適用能力を要求する高度な試験へと進化していることを示しています。

多様な出題形式

行政書士試験は、その科目の多様性に加えて、出題形式の幅広さも特徴的です。具体的には、法令等の科目では、5肢択一式、多肢選択式、記述式の問題が出題され、一方で一般知識等の科目では択一式の問題が主になります。

この多様な出題形式に対応するためには、受験生は形式ごとの適切な対策を施す必要があります。特に法令等科目の記述式問題では、40字程度の簡潔な解答が求められるため、法令に対する深い理解に加え、効果的に情報を凝縮し表現する文章力も重要となります。

科目ごとに異なる基準点

行政書士試験では、合格を決定するために科目ごとに異なる基準点が設定されています。

各科目の基準点は以下の通りです。

科目

点数

法令等科目

122点以上/244点

一般知識等の科目

24点以上/56点

試験全体では、300点満点中180点以上を取ることが合格の条件となっていますが、各科目の基準点を突破しなければ合計で180点取れていても不合格となってしまいます。

科目別合格はない

行政書士試験では、税理士試験など一部の他の資格試験に見られるような科目別合格の制度が設けられていません。そのため、受験者が一回の試験で全ての科目にわたって一定の理解度と得点力を示す必要があります。

受験者は法令等科目から一般知識等科目に至るまで、広範囲に亘る知識と技能をバランスよく習得し、試験全体で高いパフォーマンスを発揮することが求められます。

法律の知識が必要

行政書士試験では、「行政書士の業務に関し必要な法令等」の科目が大きな比重を占めており、出題数及び配点も高く設定されています。

試験に合格するためには、法律に関する深い知識が不可欠です。受験生は、行政手続きや法律文書の作成など行政書士の業務に直結する法律の理解を深めることが求められます。

司法書士とのダブル受験が増加

司法書士試験の平均的な合格率は約5%と、例年約12.0%の合格率である行政書士試験に比べて格段に低く、難易度が高いとされています。かつては、司法書士試験合格者が行政書士試験を受けることは、プライドの問題から考えられないことでした。

しかし、最近はメディアの影響で行政書士試験への関心が高まり、法律知識を持った優秀な司法書士が行政書士試験に挑戦するケースが増えています。また、弁護士資格の取得が難しくなったことから、資格予備校が保険として行政書士試験の受験を勧めるケースも見られます。

何年も挑戦する人も

行政書士試験が「誰でも受かる」とされることがあるものの、実際には多くの受験者が合格するために数年間の長期間にわたって努力を重ねたり、3回以上受験してようやく合格の喜びを手にするケースが少なくありません

行政書士試験の難易度は決して低くなく、継続的な勉強と深い理解が要求される厳しい試験であることがわかります。


行政書士は独学合格は可能?

行政書士は独学合格可能


独学合格している人も少なからずいる

行政書士試験は、その難易度の高さから独学での合格には約800時間の学習が必要とされます。弁護士や公認会計士の資格試験と比較すると、独学で合格することは比較的現実的な選択肢となっています。

実際に、仕事や育児といった日常の責務を持ちながらも、限られた時間を効率的に使い、独学で学習を続けることで行政書士試験に合格する人もいます。適切な学習計画と強い意志があれば、独学でも行政書士試験の合格は十分に可能であることを示しています。

闇雲な勉強法では合格できないので注意

行政書士試験の合格を目指すにあたって、計画的かつ効果的な学習方法の選択が極めて重要です。特に独学での準備を進める際には、闇雲な勉強法ではなく、計画性のあるアプローチが求められます。

「民法・行政法の範囲から始める」ことで、試験で要求される法律知識の基礎をしっかりと築くことができます。また、「記述式問題の対策は選択問題が終わってから」に取り組むことで、知識の定着を確認しつつ、より高度な応用力を養うことが可能となります。

さらに、「基礎的なテキストを何週も繰り返し読み込み、深く理解する」ことが、独学において重要な要素となります。

スキマ時間の活用が肝要

行政書士試験の独学合格には、日常のスキマ時間の活用が非常に重要です。通勤や移動時など、普段見過ごしがちな時間を学習に充てることで、効率的に勉強を進めることが可能です。

通信教材やテキスト、問題集を積極的に活用し、これらを携帯しいつでも取り出せるようにしておくことで、短い時間でも学習を進めることができます。

通信講座で合格を目指す人が多い

行政書士試験の準備において、多くの受験者が通信講座の利用を選択しています。これは、自宅でテキストに沿って効率的に学習ができ、対面式の資格スクールに比べてコストを抑えることができるからです。

また、多くの通信講座ではスマートフォンアプリを利用した学習サポートを提供しており、移動時間などのスキマ時間を活用して効率的に学習することが可能です。

ただし、学習進度の管理やモチベーションの維持は自己責任となるため、計画的なスケジュール管理をする必要があります。テキストや資料を有効活用し、資金や時間の無駄遣いを避けるためにも、自己管理能力を高めることが重要です。

行政書士はいつから勉強し始める?

勉強時間は800時間

行政書士試験に合格するためには、一般的に800時間の勉強時間が必要とされています。

この目安を半年で達成しようとする場合、毎日約4時間の勉強が必要になりますが、これはフルタイムで働いている人にとっては実現が難しい場合が多いです。

そのため、仕事やその他の日常生活を続けながら行政書士試験の合格を目指す場合、実質的には少なくとも1年間でこの勉強時間を確保することが望ましく、この場合、1日に2時間の学習となります。

もし勉強に専念できる状況にある場合でも、試験の6ヶ月前から勉強を開始することが真安です。

社会人はまず勉強時間の確保から

行政書士試験は受験資格の制限がないため、幅広い背景を持つ方々が挑戦します。これには社会人、学生、家事や育児に忙しい方々も含まれます。

その中でも、特に社会人が直面する大きな挑戦の一つが、限られた時間の中での勉強時間の確保です。日々の業務に追われる中で、効果的に勉強時間を見つけ出し、継続的に確保することは容易ではありません。

これを実現するには、個々の生活パターンに応じた柔軟なスケジュール管理と、強固な意志が必要になります。勉強期間が長引く可能性があるため、仕事と私生活のバランスを保ちながら、持続可能な勉強環境を構築することが重要です。


行政書士試験の効率的な勉強法

行政書士試験の合格には、効率的な学習が欠かせません。現代では様々な学習リソースが利用可能で、資格スクールや通信講座を始め、独学にも対応した多様な教材があります。これらのオプションから最適なものを選ぶことで、自分のライフスタイルや学習スタイルに合わせて、効果的に学習を進めることができます。

注力する科目を見極める

行政書士試験の合格に向けては、出題範囲の広さを考慮しつつも、特に注力すべき科目を見極めることが重要です。全範囲を均等にカバーするよりも、合格ラインである得点率6割を意識して戦略的に学習する必要があります。

特に、法令科目の中では、行政法と民法が全出題の約7割を占めており、これらの分野に集中的に取り組むことが効果的です。これに対して、出題割合が比較的低い科目に過剰な時間を割くことは効率的ではありません。

法令科目は行政法・民法に注力する

行政書士試験の法令科目における勉強では、行政法と民法に注力することにあります。これら二科目は、法令科目全体の得点配分において極めて大きなウェイトを占めています。

具体的には、行政法が112点、民法が76点の配点となっており、これらだけで法令科目の約77%、さらには試験全体においても約63%を占めています。

このため、行政法と民法の深い理解と得点力の向上は、合格への重要な鍵となります。一方で、憲法、商法、基礎法学については、基本問題を確実に得点源とする程度の対策を心掛け、主要二科目の学習に集中することがおすすめです。

一般知識科目は基準点を

一般知識科目で高得点を狙うには、広範囲にわたる知識を要することから多大な学習時間が必要となります。

効率的な学習戦略としては、この科目で満点を目指すよりも、必要な合格基準点(24点/56点満点)を確保することがおすすめされます。

過去問を解く

過去問を通じて学習することにより、試験の形式や頻出の問題パターンを把握することができます。これは、試験で何が求められているのか、どのようなアプローチで問題に臨むべきかを理解するのに役立ちます。

また、自身の知識の定着度をチェックし、不足している部分を明らかにするのにも適しています。さらに、過去問を解く過程で、試験時間内に問題を解く速度や精度を向上させる練習にもなります。

過去5年から10年分の過去問を網羅的に繰り返し解くことで、試験の傾向を深く理解し、必要な知識を確実に身につけることができるでしょう。

模試を受ける

模擬試験を受験することで、実際の試験環境に近い条件下で自己の能力を試すことができ、特に時間管理のスキルを養う絶好の機会となります。試験の流れや圧迫感を体験し、自宅での勉強では得られない貴重なフィードバックを得ることが可能です。

さらに、自身の弱点を特定し、試験までの残りの期間で何に重点を置いて勉強すべきかの指針を立てることができます

多くの資格スクールでは、行政書士試験に特化した模擬試験を提供しており、これらに参加することで、試験に対する具体的な準備を進めることができるでしょう。模擬試験のスケジュールを事前にチェックし、学習計画に組み込むことをお勧めします。

資格取得後のキャリアは?

行政書士試験を合格した後のキャリアは、実際に取り組む仕事の内容や働き方によって大きく異なります。一般に行政書士は、書類作成や手続きの代行などを行う専門職であり、独立開業を選ぶ人も多いです。

行政書士資格を取得すること自体は他の専門職資格に比べて容易と見られがちですが、資格を生かしたキャリアを築くには、その後の努力と戦略が重要になります。

想定年収

行政書士としての平均的な年収は400万円から600万円程度とされていますが、実際には個々の行政書士によって大きな差があります。行政書士試験を合格したからといって、自動的に多くの仕事が舞い込んでくるわけではなく、収入を増やすためには積極的な人脈作りや専門知識の習得が不可欠です。

例えば、支部の懇親会への参加や専門分野の勉強会に出席することで、有益な情報や新たなクライアントを獲得する機会を見出すことができます。

行政書士が取り扱える案件は多岐に渡り、それぞれの業務内容や報酬にも幅があるため、年収は様々な要因によって変動します。高い収入を目指すなら、成功している行政書士から実際の経験談を聞くなどして、その戦略や業務の取り組み方を学ぶことがおすすめです。

独立後に廃業する場合も

行政書士試験に合格し、独立開業することは大きな一歩ですが、その後の営業活動や実務経験の積み重ねが上手くいかず、廃業に至るケースも少なくありません。新規クライアントの獲得や、継続的な仕事の確保に苦労することが、この職業の厳しい現実の一面です。

このような状況を避け、持続可能な開業を維持するためには、独立後も実務に関する学びを継続し、同業者との交流を通じて情報交換やネットワーキングを行うことが非常に重要です。実際の業務に直結する知識やスキルの向上、他の行政書士との協力関係の構築は、ビジネスの成功に不可欠な要素です。

書類作成だけが行政書士の仕事ではない

行政書士の主な業務は書類作成ですが、それだけでなく他にも業務は存在しており、その範囲は非常に幅広く多岐にわたります。

例えば、相続専門行政書士という遺言書の作成だけでなく相続に関する手続き等を行う行政書士であったり、中小企業専門行政書士という中小企業の経営や法務、また事業承継や資金調達におけるコンサルティング業務までも行う行政書士なども現在では増えてきています。

このように行政書士は様々な状況においても必要とされる役割であるため、自分の行動次第では自分に合った環境で行政書士としての任を全うすることができるでしょう。

行政書士は簡単なのかまとめ 

​行政書士試験は、試験範囲が広くなったり、出題方式が豊富になったことから、過去に比べて難易度が上がっています。

しかし、予備校や通信講座を活用したり、人によっては独学を選んだりなど、自分に合った効率的な学習方法を選べば合格は十分に可能です。合格を目指して頑張ってください!