法科大学院入試を独学で対策するには?おすすめの勉強開始時期や教材も解説

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法科大学院の入学試験は、法律知識と論理的思考力を求める難関試験です。

法律の基礎知識に加え、複雑な事例分析や法条文の解釈力が問われます。多くの受験生がチャレンジする中で、独学で対策するにはより一層の努力と計画性が必要です。

ここでは法科大学院試験の特徴と難易度について概観しつつ、独学での勉強法も解説します。


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法科大学院の受験対策は独学でもできる?

法科大学院の受験対策を独学で行うことは十分可能ですが、計画的な学習スケジュールの立案と自己管理が不可欠です。

法科の既習コースの勉強はいつから開始するべき?

法科大学院の入学試験対策を独学で進める場合、試験の半年前ごろの3月から着実に準備を始めることが大切です。

基礎的な法律知識の習得に3月と4月をあてた後は、問題集を使って知識の定着を図り、7月以降は過去問題の解答に重点を置くのが効果的でしょう。

国立大学を受験する場合は私立大学の試験終了後も、弱点の改善に取り組むことが合格へのカギとなります。一般的には1日3時間から5時間の勉強を継続し、6ヶ月にわたって合計550〜1000時間の学習時間を確保することが推奨されます。

未修の状態での受験では小論文が重要

独学で臨む際の鬼門が小論文試験です。法科大学院の入試では小論文が極めて重要で、特に慶應義塾大学法科大学院のように全体評価の6割を占めるケースもあります。

小論文のテーマは法律に限定されず、幅広い教養が問われるため、論理的思考力と文章力が試されます。

そのため事前の準備として受験経験者に自作の小論文を読んでもらうことも有効な対策です。

法科大学院を独学対策するメリット・デメリット

メリット

独学の最大のメリットは、予備校や通信講座にかかる費用を節約できる点にあります。予備校には約100万円、通信講座でも50万円近くかかりますが、独学ならば大きな費用を節約できます。

独学では、自分の生活リズムに合わせて勉強計画を立てることができるため、朝型・夜型を問わず最適な時間に集中して学習することが可能です。

また、予備校の固定されたカリキュラムにとらわれることなく、自分の学習スタイルや得意な方法に応じて勉強法をカスタマイズできるのも大きなメリットです。

自己管理の労力は必要ですが、独学ならではの柔軟性と主体性を活かすことで、法科大学院試験に成功することは十分可能でしょう。

デメリット

一方で、学習効率に個人差が出やすいのが独学の大きな課題です。

予備校などの組織的な学習スタイルなら専門家による効率的指導で知識のインプットが可能ですが、独学ではそうしたサポートを期待できません。

また、小論文などでは添削による指導が受けられないので、市販の膨大な教材の中から適切な学習資料を選び、その正確性を判断する能力が求められます。誤った情報に基づいて勉強すると時間と労力の浪費となってしまうでしょう。

加えて、独学には高い自己管理能力が必要不可欠です。学習計画の立案と実行、時間管理、モチベーションの維持には強い自律性が求められます。

予備校などの外発的動機付けがない中での自分自身との戦いは容易ではありません。さらに、学習上の疑問点を即座に解消できる相手がいない独学の環境下では、適切な学習方針を自ら見極めることが重要となります。

そのため「周りに小論文対策などを依頼できる人が特にいない場合」や「学習スケジュールの管理が苦手な人」は、独学は正直向いていないと言えます。

法科大学院に独学合格するための勉強法は?

法科大学院への独学合格を目指すなら、適切な学習教材の選択、効率の良い学習方法の確立、論文添削への積極的な取り組みが大切です。

法学部の授業や学習仲間を活用することも効果的です。

勉強のインプット面での工夫

独学で法科大学院の受験勉強に取り組む際、実務経験や生活で得た法知識は、法の実践的側面の理解を深め、条文や判例をより深く理解するのに役立ちます。そのためインプット時はその法律が実践でどのように役立つのか、という目的意識を持って学習することをおすすめします。

また、忘却曲線という名前を知っている人も多いと思いますが、教科書を複数回にわたって読み込むのは知識定着に効果的です。特に3周目からはかなりの効果が期待できるでしょう。

書籍やテキストの活用

独学での勉強では受験生コミュニティでおすすめされる教材は、効率的に対策する役に立ちます。各教科のおすすめ教材があり、これらを使うことで内容をスムーズに理解できるでしょう。

本記事の後半で紹介する教材も独学に大いに役立つはずです。

論文を添削をしてもらう

独学者が直面しやすい課題は論文添削者を見つけることです。

論文問題集だけでは自分特有の表現のクセに気づきにくいため、実際の試験では思うような評価を得られない可能性があります。

そのため、法科大学院受験者や先輩、SNSなどで添削してくれる人を見つけることをおすすめします。費用はかかりますが、専門家からのアドバイスは大きな価値があります。

大学の授業やゼミを活用する

法学部に在学する大学生の強みとしては、法学部の授業を通じて法律を学ぶ機会があることが挙げられます。

法科大学院の入試問題の作成と採点を行うのは最終的に法学部の教授であるため、法科大学院の受験対策において、予備校で学ぶよりも法学部の授業を受けることが合格への道を開くことができる場合もあります。

インプットすべき内容は基本的に予備校や法学部で学ぶ内容に変わりはありませんので、法学部の授業をインプットの場として活用することは特に良い対策法です。


科目別おすすめ書籍と勉強法

法科大学院の入試において、憲法、民法、刑法は中核をなす科目であり、これらの科目に対する適切な対策は合格への鍵となります。

民法

独学で法律を学ぶ際、民法の分量が多く、最も難関です。民法の範囲は広大で、総則から家族法まで全般をマスターする必要があります。具体的なペース設定(例:1日20ページ)をして知識を定着させ、試験までに3周読みこむことをおすすめします。

これらの実際の事例に即した法解釈がなされ、現行法との違いも明快に解説しているテキストが独学にはおすすめです。

憲法

憲法学習で最も大切なのは、人権と統治の二大領域を理解することです。『憲法 第八版』(芦部信喜著)は初学者から中級者まで幅広く対応しており、短答式試験対策としていかんなく効果を発揮します。この1冊を通じ基礎から応用まで効率よく学べるでしょう。

こちらの本は、初学者から中級者まで幅広いレベルの人に適している基本的な書籍です。特に、短答対策においては非常に効果が高いと言えます。

刑法

刑法学習には、総論と各論を網羅した判例も含めた解説書が推奨されます。共著の基本書シリーズは読みやすく偏りが少ないのが特徴で、独学に適しています。刑法の体系的理解には、こうした書籍を丁寧に学ぶことが効果的です。

民事訴訟法

民事訴訟法学習には「基礎からわかる民事訴訟法」がおすすめです。初学者でも図表を用いた丁寧な解説で基礎から応用まで扱える1冊です。まずは全体像をつかみ、繰り返し学習することで詳細な知識も身につきます。

一部の受験生は「重点講義民事訴訟法(上)(下)」を選ぶこともありますが、法科大学院入試のレベルに合わせて、「基礎からわかる民事訴訟法」に焦点を絞ることがおすすめです。

刑事訴訟法

刑事訴訟法では、法適用面を丁寧に解説し判例のポイントもわかりやすくまとめた呉明植先生のテキストが適切です。法科大学院入試レベルに合致しており、司法試験用参考書よりも扱いやすい内容といえます。

商法

商法学習には、総則・商行為法・手形小切手法・会社法の4領域を扱った最新情報を反映した書籍が適しています。抽象度が高く難解なイメージがあるかもしれませんが、まずは概要をざっと読み、その後詳細に進めるのがコツです。

平成30年の商法改正や最新の裁判例や文献を反映・更新されています。

行政法

行政法は行政規則を学ぶ抽象的な科目で、一朝一夕に完全理解できるものではありません。しかし適切な教材を使えば、法科大学院入試はもちろん予備試験や司法試験にも対応可能な知識が得られます。通読した後は、問題演習で重要ポイントを確認することをおすすめします。

そこで、この一冊をしっかりと学べば、法科大学院入試の要求水準はもちろん、予備試験や司法試験合格に必要な知識も習得できます。最初に一度通読し、その後問題演習などを通じて重要なポイントを振り返り確認することが大切です。


予備校を活用することで合格の可能性が飛躍的に上がる

独学での対策は自分自身で合格までの道筋を決める必要が出てくるため、特に法律初学者にとってその難易度は非常に高いです。

自力での対策が難しいと感じられた方は、予備校を活用して対策を進めていくことを推奨します。

予備校では、プロ講師が合格に最適なカリキュラムを整備してくれ、それぞれの勉強過程で最適な教材が提供されます。これにより、独学のケースと比べて合格までの可能性が飛躍的にアップするでしょう。

数ある法科大学院入試講座の中でも、特にアガルートの法科大学院入試講座​は多くの方におすすめできます

アガルートは2023年度の司法試験で641名もの合格者を輩出している実績のあるオンライン予備校であり、法科大学院入試に関する指導ノウハウも蓄積されています。

また、コストも伊藤塾などの予備校と比べて圧倒的に安いので、アガルートを受講することで極めてコスパよく法科大学院の入試対策を進めることができるでしょう。


法科大学院を目指す際の注意点

入試までの期間を有効に活用するためには

学部1・2年生で受験勉強を開始しないのであれば、長期インターンシップなどを通じて企業法務などに関わる経験を積むことがおすすめです。

法曹界では、座学中心の学習を経験してきた人が多いため、法律知識以外にも多様な人生経験を持つことは、他の法曹と差別化を図るための重要な要素となり得ます。これらの経験は、将来のキャリアの成功に向けた大きな貢献をもたらすでしょう。

マインド面での備えも重要

法科大学院試験を独学で乗り越えるには、集中して勉強を続けることが必要ですが、その過程でモチベーションの維持が難しいと感じることがあるかもしれません。法科大学院試験対策は集中力が必要ですが、勉強の継続のためには健全なマインドセットが欠かせません。

友人と切磋琢磨し合ったり、適度な息抜きを取ることがモチベーションと学習効率の維持につながり、精神的なバランスの保持にも役立ちます。

予備試験組とは違う強みを持とう

法曹界において、大学在籍中の予備試験や司法試験合格、そして大手法律事務所での勤務がエリートとされる風潮があります。

このような環境では、独学で法科大学院を目指す人たちは、学部生時代から予備校や通信講座に頼る人たちに比べて出遅れていると感じることがあるかもしれません。しかし、法律知識と合格速度だけで自分を判断してはいけません。

インターンシップ、ビジネス経験、サークル活動、幅広い教養は、独自の強みに変えることができます。

これらの経験は視野を広げ、法科大学院試験勉強を続ける自信につながります。そこでの経験をもとに、予備校の出身者とはまた違う法曹を目指すのも良いでしょう。

法科大学院入試の独学対策法まとめ 

ここでは法科大学院入試の各科目別おすすめの勉強法と参考書をご紹介しました。適切な教材と効率的学習方法を駆使すれば、決して容易ではありませんが独学合格も可能です。

本記事を参考に計画的に学習をすすめましょう。一歩一歩粘り強く進めて合格を掴み取ってください。