重度訪問介護はきつい?やめとけと言われる理由や求人選びのコツを解説
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重度訪問介護の仕事に興味はあるものの、「きつい」「やめとけ」という声を耳にして躊躇していませんか?
確かに、長時間の1対1対応や医療的ケア、夜勤の可能性など、一般的な介護職とは異なる特殊な業務内容が求められます。
しかし、適切な職場選びと心構えがあれば、やりがいを持って長く続けられる仕事です。この記事では、「きつい」と言われる具体的な理由を解説するとともに、未経験でも安心して働ける職場の見つけ方や、長く続けるためのコツをご紹介します。
重度訪問介護ってどんな仕事?
重度訪問介護は、重度の障害がある方々が自宅で安心して生活できるよう支援するサービスです。
このサービスでは、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、入浴や排せつの介助、調理や洗濯など、日常生活全般をサポートします。
利用者は慣れ親しんだ環境で生活を続けながら、24時間体制で必要な介護を受けられるという利点があります。
重度訪問介護は24時間体制
重度訪問介護では、重度の障害を持ち、特別な介護が必要な方々を24時間体制でサポートします。
この仕事は、正社員はもちろん、パートや単発など、柔軟な働き方が可能です。
日中は食事の準備や外出時の支援、夜間は入浴介助など、利用者の生活リズムに合わせてサポートします。
また、家族と同居している場合には、夜間の対応が少なくなるなど、業務内容は個々の状況に応じて異なります。
重度訪問介護ヘルパーの1日の仕事内容は?
重度の要介護者の自宅を訪問し、食事や入浴、排せつの介助、移動のサポートなど、日常生活全般を支える専門職が重度訪問介護ヘルパーです。
利用者一人ひとりの状況に合わせて柔軟に対応しながら、自立を支援することが求められます。
また、身体的な介護だけでなく、利用者や家族の気持ちに寄り添い、精神的なケアも重要な役割となります。
ここでは、重度訪問介護ヘルパーの1日の仕事内容についてご紹介します。
着替えや身だしなみを整えるお手伝い
重度訪問介護ヘルパーは、利用者の方々が快適で尊厳のある生活を送れるよう、着替えや身だしなみのお手伝いをしています。
朝の洗顔から始まり、希望に沿ったスキンケアや頭髪のお手入れを行います。
さらに、季節や予定に合わせた適切な服装を選び、着脱のサポートまで行うことで、利用者一人ひとりに合った生活スタイルを大切にしています。
食事の用意・介助・片付け
重度訪問介護ヘルパーは、利用者の生活を支えるために、食事の準備、介助、後片付けまでを一貫して行います。
特に自力で食事をとることが難しい利用者には、専門知識と技術を活かして適切な支援が求められます。
また、噛む力や飲み込む力、体調に配慮し、安全で楽しい食事を提供します。食事時の雰囲気作りにも気を配り、利用者と共に楽しい時間を過ごすことを心がけることが重要です。
歯磨きなどの口腔ケア
口腔ケアとは、口の中を清潔に保つためのケアで、適切な歯磨きなどが含まれます。
これは単に口臭予防や清潔さを保つだけでなく、利用者が1日を快適に始められるよう、また食事などの日常生活を円滑に送れるよう支援する重要な役割を担っています。
口腔ケアと歯磨きのサポートを行うことで、利用者が安心して食事を楽しめる環境を提供します。
排泄介助
排泄介助は、重度訪問介護ヘルパーの日常業務の中で欠かせない重要な役割を担っています。
利用者一人ひとりのニーズに合わせて、トイレの介助からおむつ交換まで適切なサポートを提供することで、利用者が自立した生活を送れるよう支援します。
利用者の状況を的確に見極め、必要な支援の程度を判断する能力が求められますが、ヘルパーの適切な排泄介助は、生活の質の向上に大きく貢献しています。
痰の吸引
重度訪問介護ヘルパーの重要な仕事の一つに、利用者の呼吸を助ける「痰の吸引」があります。
自力で痰を排出できない方のために、吸引器を使って丁寧に痰を取り除きます。
利用者の呼吸状態を見極め、適切なタイミングで吸引を行うことが求められます。
適切な吸引を怠ると、呼吸困難や肺炎などのリスクがあるため、ガイドラインに沿って慎重に作業を進め、利用者の健康管理に努めています。
移動のサポート
重度の介護を必要とする方々の日常生活を支えるために、介護ヘルパーは移動や体位変換の手助けを行っています。
ベッドから起きる際や、トイレへ行く時など、安全に移動できるよう介助します。
また、寝返りをうつときなども、適切な方法で体位を変えるサポートをします。
利用者一人ひとりの状況を踏まえ、思いに寄り添いながら介入することで、可能な限り自立した生活が送れるよう配慮しています。
家事や買い物の代行
重度の障害や高齢により、自力での行動が困難な方々の日常生活を支えるため、重度訪問介護ヘルパーは家事代行や買い物代行などの重要な役割を担っています。
ヘルパーがクライアントからの依頼を受け、指定の店で必要な食材や日用品の買い物を代わりに行うことで、クライアントは生活に欠かせない物品を手に入れることができ、自由な生活を送れるようになります。
また、掃除や洗濯などの家事もヘルパーが代行することで、クライアントの生活の質が向上します。
入浴のサポート
入浴は、介護において重要な場面の一つです。
重度の障害がある利用者にとっては、一般的な入浴方法では対応が難しいこともあり、ヘルパーは、利用者一人ひとりの状態を丁寧に見極め、安全で快適な入浴をサポートしています。
具体的には、入浴前の準備から、入浴中の安全確保、そして入浴後の体調管理まで、細やかな配慮が求められます。
重度訪問介護の対象者
政府の定義では、重度訪問介護の対象者を「重度の肢体不自由者または重度の知的障害もしくは精神障害により、行動上著しい困難を有する者であって、常時介護を要する障がい者」としています。
具体的には、『 二肢以上の麻痺があり、障害者支援区分の認定調査項目で、歩行・移乗・排尿・排便の全てに「支援が不要」以外が認定されている』、『 障害者支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である 』これらのどちらかに該当する必要があります。
筋ジストロフィーやALS、脳性麻痺など、難病を抱える人で、強度の行動障害がある方がこれに該当します。
訪問介護と違って二時間ルールがない
重度訪問介護は、一般的な訪問介護よりもさらに手厚く、幅広い支援を提供する介護サービスです。このサービスは、全面的かつ柔軟な介護を必要とする人々のために設けられています。
しかし、重度訪問介護の場合は、計画の枠を超えて、利用者の日常生活で発生する様々なニーズに対応した介護を行うことができます。
例えば、一般的な訪問介護で適用されている、サービス提供間隔を2時間以上空ける「2時間ルール」が重度訪問介護では適用されません。
重度訪問介護が大変だと言われる理由
重度訪問介護の仕事内容は多岐にわたり、介護者にとっても高い専門性や忍耐力が求められるため、きついと感じられることが度々あります。
ここでは、重度訪問介護が大変だと言われる理由をご紹介します。
利用者さんの指示に応えるのが難しい
重度の介護を必要とする方々を対応するには、介護スタッフに高度な技術と忍耐力が求められます。
利用者が理想とする介助と、実際に行う介助の間にずれがあることで、スタッフがストレスを感じることも多いようです。
しかし、利用者が不安を感じることにも理由があります。例えば、自分では体位変換が難しいため、わずかな違いで痛みに耐えることになったり、コップの位置や移乗の手順が違うと恐怖を感じることもあるからです。
8時間や12時間といった長時間の勤務がきつい
重度訪問介護は、利用者の生活リズムに合わせて必要な支援を適切なタイミングで行うことが求められます。
そのため、1日8時間から12時間という長時間の勤務が求められ、訪問介護と比べて勤務時間が大幅に長くなります。
短時間勤務に慣れていた介護職員は、この長時間労働に大きなストレスを感じがちです。
また、人々の生活を支えるという重責と柔軟な対応を求められることで、体力的な面だけでなく心への負担も少なくありません。
24時間対応のシフトがきつい
24時間体制の支援は、訪問介護ヘルパーにとって大きな負担となることがあります。
利用者の一日の生活リズムに合わせ、早朝から深夜まで交代制で勤務するため、不規則な労働時間が避けられません。
身体介助だけでなく、家事や外出の付き添いなど幅広い支援が求められるため、休憩時間もほとんど取れず、長時間勤務になることも多いようです。
技術的に難しい介護スキルが求められる
重度の障害者への介護は、通常の身体介助技術だけでは十分に対応できない高度なスキルと細やかな配慮が必要です。
利用者の中には内臓機能が弱っている方も多く、優しくかつ確実な介助が欠かせません。そのため、豊富な経験と熟練した技術が求められます。
そのため、「同行支援」制度では、ベテラン職員が新人と共に利用者宅を訪問し、支援を行います。これにより、安心して重度介護に取り組めるようになります。
命に関わる医療ケアは精神的に特にきつい
介護現場では医療的ケアが求められることが多く、喀痰吸引や経管栄養などの対応が必要です。
これらは研修で習得できますが、些細なミスが命に関わる事態を招く可能性があるため、細心の注意が必要です。日々の業務にも常に危険が潜んでおり、介護職員は大きな責任とストレスを感じがちです。
特に、命に関わるケアや利用者の苦痛を目の当たりにすることは、大きな心理的負担となります。
全てを1人で対応するのは責任が重すぎる
訪問介護士は、利用者の家を一人で訪れ、介護全般を一手に引き受けます。
施設介護とは違い、他の職員の助けを借りることができないことが特徴です。
そのため、介護サービスの提供、家族への相談対応、トラブル対処、緊急時の判断と対応など、広範囲の責任を一人で担わなければならず、その重圧は計り知れません。
重度訪問介護がきついと感じたらするべきこと5選
重度訪問介護は、利用者の日常生活を支える重要な役割を担っているため、時には肉体的にも精神的にも大きな負担を感じることがあります。
しかし、適切な対応を取ることで、無理なく仕事を続けることができるようになります。
ここでは、重度訪問介護の仕事がきついと感じたときに、どのように対処すれば良いのかについて具体的な方法を5つご紹介します。
メリハリのある介護を意識してみる
訪問介護では、つい何でも手伝ってしまいがちですが、それが必ずしも最善とは限りません。利用者自身ができることは見守りながら支援することが大切です。
例えば、利用者が食事や着替えなどの日常動作を自分で行う時間を設けることが重要です。
この時間を見守りに充てることで、介護者も仕事の合間に短い休憩を取ることができ、次の仕事に向けて気持ちを切り替えることができます。
一人で抱え込まずに誰かに相談してみる
重度訪問介護の仕事は一人で行うことが多く、訪問先によって独自のルールや配慮が必要になる場合があり分からないことや困ったことが起きる場合もあるでしょう。
その際、一人で抱え込もうとすると、ストレスがたまるだけでなく、介護の質も低下してしまう恐れがあるため、誰かに相談することがおすすめです。
そのため、同じ利用者を担当する他のヘルパーからアドバイスを求めることは、介護職を気持ちよく続けるために効果的な方法でしょう。
利用者さんの変更をお願いする
介護職は人と人との深い繋がりが特に求められる仕事です。
そのため、相性の問題やセクハラなどの問題が生じると、適切なケアを提供することが難しくなります。
そのような場合は、我慢するのではなく、自分の立場を守るため、担当者の変更を事業所に求めることが必要です。これは仕事上の適切な対応であり、心身の健康を守るための手段なのです。
訪問介護士は人材不足のため、担当を変えても仕事が途切れる心配はほとんどありません。
他の事業所で働くことを検討してみる
仕事の負荷が大きすぎる、移動が大変である、給与に不満があるなどの悩みがある場合、新しい職場を探すことも選択肢の一つです。各事業所の運営方針は様々で、それが介護者の働きやすさに影響します。
例えば、一人で訪問介護をすることが難しいと感じる方は、複数のスタッフで連携しながら働ける事業所に移るのが良いでしょう。
中でも給与面に不満がある場合は、事業所の規模や加算など、収入に影響する要素を確認することをおすすめします。
解決が難しい場合は転職も視野に入れてみる
現在の厳しい職場環境に満足できないのであれば、転職をすることで、理想とする働きやすい環境を見つけられる可能性があります。
新しい職場では、やりがいを感じながら活力を持って働けるかもしれません。
さらに、待遇面の改善や、スキルアップ、キャリアアップのチャンスも期待できます。
ここでは、主な転職パターンを4つご紹介します。
障害者施設などの入居型施設に転職する
訪問介護は、主に単独での業務が中心であり、先輩からの指導を受ける機会が限られているため、介護技術の向上が難しい環境です。
また、利用者の体調変化や突発的なトラブルにも一人で対応しなければならず、大きなプレッシャーがかかります。
そのため、一部の介護職員は、複数の職員がチームで介護にあたり、学べる環境が整っている入居施設への転職を検討することがあります。
生活相談員やケアマネージャーなどの他職種に転職する
重度訪問介護の厳しさに悩みながらも、介護職で働きたいと考えている方には、他の介護関連職種への転職を検討することがいいかもしれません。
生活相談員やケアマネージャーなど、これまでの経験とスキルを活かせる職種もあり、新たな働き方に出会えるチャンスがあります。
介護職で培ったノウハウは、他職種でも十分に役立ち、個々の能力に合った良好な労働環境を実現できます。
福祉・医療などの介護経験が活かせる他業種に転職する
介護業界以外で、介護経験を活かせる仕事に就きたい方は、福祉や医療分野への挑戦を考えてみてはいかがでしょうか。
児童福祉施設や障害者支援施設、医療機関など、介護経験が役立つ分野は多岐にわたります。
それぞれの分野で興味関心の赴くところを見つけ、新たな挑戦に踏み出してみましょう。
介護業界と関係のない新たな職種に転職する
介護の現場で重労働がきつい方や、新たな分野で自分の可能性を広げたいと考えている方には、介護業界とは全く異なる職種への転職を検討することをおすすめします。
確かに未経験の職種でスキルを身につけるのは大変な道のりかもしれません。
しかし、新しい仕事に魅力を感じ、挑戦してみたいと思うのであれば、新たな職種への転職は有効な選択肢の一つと言えるでしょう。
介護職の転職なら転職エージェントの利用がおすすめ
介護業界では、給与や労働環境に不満を持つ人も多く、転職を考える人も少なくありません。転職を検討中の方には、転職エージェントの利用がおすすめです。
転職エージェントを利用すれば、介護職の転職に精通した専門家が、経験やスキル、希望条件に合った求人を紹介してくれるため、転職活動をスムーズに進めることができます。
また、エージェントが独自に持つ非公開求人を紹介してくれることもあり、自分で探すよりも、転職の機会が広がるでしょう。
さらに、履歴書の作成支援や面接対策のアドバイスなど、転職活動全般をサポートしてくれる点も便利です。
重度訪問介護の給料は高い?
重度訪問介護は、身体的・精神的に大きなサポートが必要な利用者を支える重要な仕事ですが、その対価や収入がどうなのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、介護業界の現状や重度訪問介護の報酬体系を踏まえながら、収益性について詳しく見ていきます。
平均給与は約370万円ほど
重度訪問介護の従事者の平均年収は約366万円だと言われています。
この金額は介護業界全体の給与水準に近いものの、厳しい労働条件を考えると、十分な報酬とは言えないと感じる人も多いようです。
重度訪問介護では、利用者の身体的・精神的なケアを一人で担当することが多く、長時間労働や夜勤、緊急対応なども日常的に求められるため、仕事の負担はかなり大きいです。
このような厳しい労働環境にもかかわらず、平均年収が370万円程度では、報酬が足りないと感じる人がいるのも無理はないでしょう。
他の介護業務に比べて報酬が低い
介護サービスの中でも、重度訪問介護は報酬が低く設定されています。
訪問介護サービスと比較すると、同じ時間帯のサービスでも報酬単位が約半分以下となっていることが多いようです。
そのため、同じ時間をかけても重度訪問介護の方が報酬が低くなり、介護職員にとって負担が大きくなる要因となっています。
報酬の差はサービスの内容や地域によって異なりますが、重度訪問介護の報酬水準が低いことが現状に影響を与えていると言えます。
単価が低い理由
重度訪問介護は、障害のある方々の生活を支える重要なサービスですが、その報酬単価が低いことが長年の課題となっています。
では、なぜ重度訪問介護の単価が低く抑えられているのでしょうか。
その背景には、複雑な要因が絡み合っていますが、主に以下の3点が挙げられます。
長時間利用が前提で実働と見守りサービスが区別されないから
障害者の方に必要な介護サービスには、長時間にわたる重度訪問介護と、短時間の居宅介護があります。
重度訪問介護は24時間体制で、身体介助、家事支援、見守りなどを一体的に提供します。
一方、居宅介護は具体的な支援項目ごとに区別され、短時間で集中的なサービスを行います。このため、重度訪問介護は長時間にわたるサービスのため単価が比較的低く設定されています。
報酬が全て従業者に入るわけではないから
重度訪問介護サービスの料金は、国や自治体によって1時間あたり約1850円と定められています。
しかし、この金額がすべて従業員の給与に充てられるわけではありません。
この料金から、事業所の運営経費や事務職員の給与も賄う必要があるため、結果的に介護職員の給与に充てられる金額は限られてしまいます。
重度訪問介護の仕事を続けるメリット
重度訪問介護は、身体的・精神的に大きなサポートを必要とする利用者の日常生活を支える重要な仕事です。
そのため、時には大変な側面もありますが、この仕事を続けることには様々なメリットがあります。
やりがいを強く感じられる
重度訪問介護の仕事の魅力は、利用者一人ひとりのニーズやペースに合わせたきめ細かいサービスを提供できることです。
施設介護と違い、訪問介護では利用者の生活の場で支援を行うため、細かな変化を把握しやすく、より丁寧なケアが可能になります。
訪問介護の大きな魅力は、利用者の喜びや感謝の言葉に直接触れられることです。自分の努力が利用者の笑顔につながる瞬間は、何物にも代えがたい達成感を味わえます。
障害福祉への理解が深まる
重度訪問介護の専門職として日々の仕事を通じて、障害のある方々の生活に直に触れることができます。
そうした経験を重ねることで、障害福祉に関する深い理解が自然と身につきます。利用者の生活の中に存在する困難や悩みを一緒に乗り越えていくプロセスで、様々な障害の実態や社会的課題を肌で感じ取ることができるのです。
視覚障害、聴覚障害、身体障害、知的障害など、障害の種類や程度に応じた適切な支援のあり方や、社会とのつながり方など、実践を通して学べる経験値は計り知れません。
介護スキルがアップする
重度訪問介護の業務に従事することによる利点は介護の専門スキルが向上することです。
具体的には、歩行、移乗、排尿、排便といった日常生活の基本動作に関する高度な技術を身につけることができます。
さらに、一般のヘルパーよりも高い専門性が求められ、食事介助や移乗介護だけでなく、医療ケアやリハビリテーションにも対応できる幅広い知識が必要となります。
働き方を自分で選べる
訪問介護の仕事は、働き方の柔軟性が魅力の一つです。正社員からパート、登録ヘルパーまで、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選べます。
スケジューリングも担当者自身でコントロールできるので、家庭や子育てとの両立がしやすく、プライベートの時間管理がしやすいのです。
また、収入面でもシフトの調整が可能なので、経済的な事情に合わせて柔軟に対応できます。
重度訪問介護の求人選びで失敗しないためのポイント5選
重度訪問介護の仕事は、利用者の生活を支える重要な役割を担っているため、職場選びが非常に重要です。
自分に合った職場を選ばないと、仕事内容や環境に不満を感じてしまうこともあるでしょう。
そこで、満足のいく職場を見つけ、長く働くために考慮すべき重要なポイントについて、詳しく解説していきます。
待遇改善を図っている事業所であるか?
訪問介護の仕事は体力的にも精神的にも大きな負担がかかりますが、そうした負担に見合う待遇が得られないことも少なくありません。
そこで職場を選ぶ際は、従業員の待遇改善に熱心な施設かどうかを重視しましょう。具体的には、加算取得の有無や独自の待遇改善策の有無を確認することが大切です。
給与や福利厚生だけでなく、互いに切磋琢磨できる環境や資格取得支援などの成長の機会があるかどうかも重要です。
ヘルパーの教育制度が整っているか
求人先を選ぶ際は、従業員の教育制度が充実しているかどうかが重要なポイントになります。特に介護業界では、介護資格の取得が必須ですが、研修や資格取得には高額な費用がかかります。
そこで、資格取得費用の一部を会社が補助してくれる制度があれば、経済的な負担を軽減できます。
求人情報から教育サポートの内容を確認し、自分に必要な教育制度が整っている施設を選ぶことをおすすめします。
将来的な給与アップが見込めるか
自身の成長に伴い給与が伸びることは、介護業界で長期的にキャリアを積む上で非常に重要です。
仕事への情熱や組織への信頼を維持するためには、スキル向上や質の高いサービスが適切に評価され、それに見合った報酬が必要です。一方、長年勤めても給与が変わらない職場では、モチベーションを失う可能性があります。
そのため、努力と実績が給与に反映され、キャリアアップが期待できる職場を選ぶことが大切です。
十分な従業員数が確保されているか
重度訪問介護の求人を選ぶ際に重要なポイントの一つとして、事業所が適切な人員体制を整えているかどうかがあります。
地域によっては、サービスが不足している場所もあり、利用者の需要に対してスタッフが足りない事業所も存在します。そうした職場では、従業員一人ひとりの負担が過重となり、過労やストレスの問題が生じがちです。
一方、十分なスタッフを確保している事業所では、業務負担が適切に分散されているだけでなく、互いに助け合う余裕が生まれます。
交通費が支給されるか
訪問介護の仕事では、利用者の家を自分で訪問する必要があります。そのため、移動手段や交通費の扱いは重要なポイントになります。
職場によっては交通費が全額支給されることもありますが、自己負担になる場合も少なくありません。訪問先が遠ければ遠いほど、自己負担の額が大きくなる可能性があります。
そのため、求人を選ぶときは、交通費の支給状況をしっかり確認し、できるだけ経済的な負担が少ない職場を選ぶのが賢明でしょう。
交通費の扱いは実質的な収入にも影響するので、慎重に検討する必要があります。
重度訪問介護が向いている人の特徴
重度訪問介護は、利用者の日常生活を支える重要な仕事ですが、身体的・精神的な負担も伴います。
介護職には特定の資質や能力が求められるため、どのような人が向いているかを知ることは重要なポイントです。
コミュニケーションが上手に取れる人
重度訪問介護では、利用者一人ひとりの状況に合わせた細やかな対応が不可欠となります。
そのためには、日々のコミュニケーションを通じて利用者の思いを汲み取ることや、一緒に生活を見直しながら改善点を探っていく姿勢が求められます。
利用者一人ひとりに寄り添った介護を実現するには、確かなコミュニケーション力が介護者に求められます。
普段から気が利くと言われる人
重度訪問介護は、利用者からの要望に応えるだけでなく、日常生活全般に気を配ることが求められます。
単に指示を待つのではなく、利用者の状況を深く理解し、自発的に必要な支援を行う姿勢が重要です。
例えば、トイレ掃除の依頼があれば、清潔な環境を整備するだけでなく、利用者が心地よく使用できるよう、必要な物品の補充にも気を配れるのが理想的です。
一対一での対応が自分に合っていると感じる人
重度訪問介護が施設介護と大きく異なる点は、一対一で長期にわたり利用者と関わることです。
そのため、利用者一人ひとりの身体的・精神的状況を理解し、適切な介護を提供するには、コミュニケーション能力や柔軟性、そして創造性が求められます。
こうした人間関係を築ける方は、自分の全力を尽くして介護に取り組むことができ、介護を通じて自己成長も実現できるでしょう。
重度訪問介護で働くための条件
重度訪問介護従業者として働くためには、特定の資格を持っていることが必要です。
まず、居宅介護従業者の資格要件を満たす者、もしくは重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程・追加課程・統合課程)を修了した者でなければなりません。
特に、重度の障害者に対して支援加算を算定する場合は、追加課程または統合課程の修了者であることが求められます
居宅介護従業者の資格
居宅介護従業者の資格には以下の資格が含まれます。
資格名 | 内容および要件 | 備考 |
---|
介護福祉士 | 国家資格。介護に関する専門知識と技術を持ち、利用者の生活を支援する。実務経験や指定の学校での教育が必要。 | 高い専門性が求められ、キャリアアップに有利。 |
看護師 | 国家資格。病院や施設などで医療やケアを行う。大学、専門学校などでの教育と国家試験の合格が必要。 | 医療分野で幅広く活躍。医師の指示のもとで治療行為も行う。 |
准看護師 | 都道府県が認定する資格。看護師のサポートを行い、医療やケアを提供する。都道府県知事が行う試験に合格する必要がある。 | 看護師に比べて活動範囲が制限されるが、医療現場で重要な役割を果たす。 |
実務者研修修了者 | 介護福祉士の資格取得を目指すために必要な研修を修了した者。実践的な介護スキルを学び、医療ケアも習得。 | 介護福祉士資格取得には必須。 |
介護職員基礎研修修了者 | 2013年まで実施されていた研修で、介護職員としての基本的な知識や技術を修得した者。 | 2013年に初任者研修に移行。 |
居宅介護従業者養成研修(訪問介護員養成研修)1級課程修了者 | 訪問介護員として働くための最高レベルの研修。高度な介護技術や知識を持つ。 | 2012年に実務者研修に移行。 |
居宅介護職員初任者研修(介護職員初任者研修)修了者 | 介護職員としての最初のステップとして行われる研修。基本的な介護スキルと知識を学ぶ。 | 以前の「訪問介護員養成研修2級」に相当。 |
障害者居宅介護従業者基礎研修(訪問介護員養成研修3級課程)修了者 | 障害者を対象とした居宅介護のための基礎的な知識や技術を修得するための研修。 | 現在は初任者研修に統合。 |
介護福祉士、看護師、准看護師は国家資格や都道府県認定の資格で、介護や医療に関する専門知識と技術が求められます。
その他の資格(実務者研修修了者や初任者研修修了者など)は、介護職の基本的なスキルを習得するための研修を終えた者という意味です。
重度訪問介護従業者養成研修
訪問介護の現場で即戦力となる人材を育成するため、厚生労働省から指定された各都道府県の指定機関が、「重度訪問介護従業者養成研修」を実施しています。
この研修は、未資格者でも受講が可能で、多様な方々が訪問介護業界への入門の機会を得られます。
研修内容は、基礎課程、追加課程、統合課程の3つに分かれており、それぞれ異なる視点から介護に関する知識や技術を習得できます。
この研修を修了することで、未資格者でも重度訪問介護従業者として働くことが可能になります。
基礎課程
重度訪問介護を提供するためには、適切な知識と技術を身につける必要があります。そのために、基礎課程の修了が義務付けられています。
以下は、基礎課程の科目や時間を表にまとめたものです。
区分 | 科目 | 時間 |
---|
講義 | 重度の肢体不自由者の地域生活等に関する講義 | 2時間 |
講義 | 基礎的な介護技術に関する講義 | 1時間 |
実習 | 基礎的な介護と重度の肢体不自由者とのコミュニケーション技術に関する実習 | 5時間 |
実習 | 外出時の介護技術に関する実習 | 2時間 |
合計 | 10時間 |
この基礎課程では、介護の倫理観を深め、必要な知識と技能を習得します。
こうした素養を身につけることで、重度の障害がある利用者に適切なサービスを提供することができるようになります。
追加課程
介護の現場では、利用者一人ひとりの状況に合わせた適切な支援が求められます。
そのため、重度訪問介護従事者養成研修では、通常の講義に加え、実際に利用者宅を訪問し、現場での対応を体験する「追加課程」が設けられています。
以下は、追加課程の科目や時間を表にまとめたものです。
区分 | 科目 | 時間 |
---|
講義 | 医療的ケアを必要とする重度訪問介護利用者の障害及び支援に関する講義 | 4時間 |
講義 | コミュニケーションの技術に関する講義 | 2時間 |
講義 | 緊急時の対応及び危険防止に関する講義 | 1時間 |
実習 | 重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習 | 3時間 |
合計 | 10時間 |
講義では、医療的ケアを必要とする重度訪問介護利用者への支援、コミュニケーション技術、緊急時対応を学びます(計7時間)。
実習では、現場での重度肢体不自由者の介護技術を習得します(3時間)。合計で10時間の研修です。
追加課程は、一般的な介護の知識・技能を一歩進め、より専門的な支援が求められる場面に対応できるようになるための研修といえるでしょう。
統合課程
重度訪問介護従業者養成研修には、基礎課程や追加課程の内容を踏まえながら、喀痰吸引や経管栄養など、医療的なケアを含む具体的な実務スキルを学ぶ「統合課程」があります。
以下は、統合課程の科目や時間を表にまとめたものです。
区分 | 科目 | 時間 |
---|---|---|
講義 | 重度の肢体不自由者の地域生活等に関する講義 | 2時間 |
講義 | 基礎的な介護技術に関する講義 | 1時間 |
講義 | コミュニケーションの技術に関する講義 | 2時間 |
講義 | 喀痰吸引を必要とする重度障害者の障害と支援に関する講義・緊急時の対応及び危険防止に関する講義① | 3時間 |
講義 | 喀痰吸引を必要とする重度障害者の障害と支援に関する講義・緊急時の対応及び危険防止に関する講義② | 3時間 |
演習 | 喀痰吸引等に関する演習 | 1時間 |
実習 | 基礎的な介護と重度の肢体不自由者とのコミュニケーションの技術に関する実習 | 3時間 |
実習 | 外出時の介護技術に関する実習 | 2時間 |
実習 | 重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習 | 3.5時間 |
合計 | 20.5時間 |
この統合課程は20.5時間と最も長い時間を要しますが、その分、障害支援区分4~6の重度の身体障害を持つ方への介護業務が可能になります。
高度な知識とスキルが求められるケースにも対応できるようになるため、統合課程を受講することで、訪問介護従業者としてより幅広いニーズに応え、質の高いサービスを提供することができるようになります。
重度訪問介護についてのよくある質問
重度訪問介護に関する理解は、介護者や利用者、その家族にとって非常に重要です。
しかし、このサービスに関しては、制度や提供方法、受けられるケアの内容など、多くの質問や不明点があるでしょう。
ここでは、重度訪問介護についてのよくある質問に対する回答をまとめ、皆様の疑問解消に役立てたいと思います。
重度訪問介護でできないことは?
重度訪問介護は、利用者本人の在宅生活を支援するためのサービスです。
外出時の家事や通勤時の移動介護、家族の介護や家事は含まれません。
サービスの範囲は、利用者本人の在宅生活に必要な支援全般に限られます。
見守りとは何をする?
訪問介護には、身体的・精神的なケアだけでなく、利用者さんの日々の生活を見守り、安全を確保することも重要な役割の一つです。
身体的な制約があり自由に動けない方の安全を守るため、タイミング良く介入できるよう気を配ります。
また、精神的な障害を持つ方に対しても、危険な行動を未然に防ぐための見守りや、異常行動への対応が求められます。
居宅介護との違いは?
介護が必要な方へのサポートには、「居宅介護」と「重度訪問介護」の2つのサービスがあります。
「居宅介護」は、主に身体介護を中心とした支援で、一定の時間内でのサポートとなります。
一方、「重度訪問介護」は、日常生活全般にわたる総合的な支援を長時間にわたって提供するサービスです。重度の介護が必要な方には、柔軟に対応できる「重度訪問介護」が適しています。
重度訪問看護きついまとめ
本記事では、重度訪問介護の現場で働く方々の仕事内容を詳しく掘り下げ、その実情について紹介しました。
重度訪問介護は、重度の障害を持つ方々の日常生活を支える非常に重要な役割を担っていますが、その業務内容には多くの専門知識や技術が求められ、時に大変な負担がかかることがあります。
また、「きつい」と言われることが多いこの仕事について、その理由を具体的に解説し、そうした課題に対する対処法もご紹介しました。
これらの情報を通じて、重度訪問介護の実態や働く上での心構え、そして業務の改善策について理解を深めていただければ幸いです。