税理士に向いている人・向いていない人は?性格や文系・理系の適正についても解説
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税理士は高い専門性と責任が求められる職業であり、「自分に向いているだろうか」「文系出身だが対応できるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は税理士に必要な資質は、一般的に考えられている「几帳面さ」や「数字への強さ」だけではありません。コミュニケーション能力や知的好奇心も重要な要素となります。
本記事では、税理士に向いている人・向いていない人の特徴を、性格や適性の観点から具体的に解説します。
税理士に向いている人の性格や適正を紹介
税理士は企業や個人の税務を適切に処理する職業で、国家の申告納税制度を円滑に進めるための役割も担っています。
このような職務を遂行するには、特定の性格や適正が求められます。
以下では、税理士に向いている人の性格や適正を紹介していきます。
着実に任務をこなせる人
税理士は専門的な知識と技術だけでなく、地道な作業を着実にこなす性格も重要です。
一見格好良い仕事に見える税理士は、実際は細かい経理作業や決算業務を行う必要があります。税理士試験は国家資格の中でも難関とされ、合格までには堅実な努力と忍耐力が欠かせません。
合格後の仕事でも、最新情報のチェックや会計データの分析、期日厳守の決算書作成など地味ながらも組織の会計を支える大切な役割があります。
対人スキルに長けた人
税理士として成功するためには、対人スキルも欠かせません。
中小企業の会計事務所で働く場合、日々のスムーズな業務遂行には上司や同僚とのコミュニケーションが重要になります。
また、税務業務はチームで行われることが多いためメンバー間の協調性と意思疎通が不可欠です。
さらに、事務所内の人間関係のみならず、クライアントとの良好な関係を構築することにも高度な対人スキルを要します。
ビジネス運営に関心を抱く人
また、企業経営や業績に深い興味を持つことも重要です。
単なる数値管理だけでなく、経営者の視点に立って経営全体を深く理解し適切なアドバイスができることが求められます。
経済や産業動向に関心を持ち、主体的に学び続ける姿勢が不可欠となるのです。
法規制について積極的に学習できる人
税理士は法的な規制への関心が高い人にも向いている職業です。
税理士試験は広範囲で複雑な問題が出題されるため、法律や規則の基礎知識だけでなく幅広い知識と深い理解力が必要とされます。
また、抽象的な概念を具体化して自分なりに理解し、新しい知識を吸収することへの積極性が重要です。
法規制のなかでも税法は常に変更されるため、学習を怠らず最新の情報に更新し続ける必要があるというわけです。
知識欲が旺盛な人
さらに、税制改正や経済情勢の変化に伴って常に知識を更新し続ける必要があります。
長く活躍するためには、絶えず学び続ける強い意欲が不可欠です。
そのため学ぶことに喜びを感じあらゆる課題に対して自ら考え抜く力のある人こそが、税理士にふさわしいといえるでしょう。
高い道徳感と公正さを持つ人
さらに、高い道徳観と公正さも求められます。
税理士の業務は自ら監視し結果を公表する必要があるため、自己管理能力が重視されます。また、税務の専門家として誇りを持って業務に取り組む心構えも不可欠です。
信頼を得るためには、クライアントに対して行動原則を明確に示しつつ賄賂や脱税への協力などの不正な提案を断り、誠実性を保つことがとても重要になってくるからです。
定量分析と論理的アプローチが得意な人
数値データから重要な情報を見抜き、そこから適切な提案や行動を導き出す能力も求められます。
税務申告書や財務報告書の作成といった主な業務は、納税者や企業の複雑な金融活動を理解し、税金の規定に照らして論理的に判断を下す必要があります。
さらに、不正行為の早期発見や迅速な対応が求められるため、制限された時間内でデータ分析を行える力も重要となります。
税理士に向いていない人の性格や適正は?
税理士は細かい数字の作業に正確さが求められる専門職です。
以下では、税理士に向いていない人の性格や適正を紹介していきます。
即時の結果を求める傾向がある人
税理士の仕事は資格取得から実務まで忍耐力が不可欠です。
膨大な知識を身につけるためには、地道な努力と時間をかける必要があります。また、業務においても細かい規定を理解し丁寧に対応することが求められます。
そのため、すぐに結果が欲しい性格の人には税理士は向いていない可能性があります。
対人スキルに課題を感じる人
顧客の需要を理解し、適切な説明を通じて信頼関係を築くことも重要です。
クライアントの代理として税務署や金融機関と交渉することがあるため、対人スキルは欠かせません。また、チーム業務においてもコミュニケーション能力が求められます。
つまり、対人関係が苦手な人には税理士は向いていない可能性があるということです。
定量的情報の処理に難しさを感じる人
さらに、税理士の仕事には数値に対する正確性と細かい作業が求められます。
決算書作成などの業務では計画性と神経を注ぐ必要があるため、数字を扱うのが苦手な人や大ざっぱな性格の人は適していないかもしれません。
つまり、数字に強く丁寧で細かいことまで気を配れる性格が重要となります。
税理士に向いているのは文系・理系どちら?
税理士の仕事には会計や税法に関する専門知識が求められるため、大学では経済学や商学、経営学さらには法学などの分野を学ぶ文系出身者が多いのが実情です。
しかし、税理士業務には計算能力も必要不可欠であり、理系出身者も有利な面があります。
税理士に向いているのは、文系・理系を問わず、自身の長所を活かした専門知識と計算能力を兼ね備えた人材であるということです。
男性・女性の場合
税理士の男女比は長らく男性が圧倒的に多数を占めてきましたが、近年では徐々に女性の割合が高まってきています。
女性自身が専門職を目指す意欲が乏しかったことも影響していたと考えられますが、近年では働き方の柔軟性から税理士を目指す女性が増加しています。
出産や育児などのライフステージの変化があっても、仕事を続けられるメリットがあるためです。
税理士に必要な知識
税理士になるには試験に受かるだけでなく、あらゆる専門性の高い知識を蓄える必要があります。
財務会計と課税実務の知識
税理士業務を円滑に遂行するには、会計と税務の専門知識が不可欠です。
これらの知識は税理士業務の中核を成しており、試験で得た知識だけでは現場での活躍には不十分だからです。
会計処理や税務申告には様々な業務があるので、税理士は臨機応変に最適なアドバイスをクライアントに提供する必要があります。
そのため、財務会計と課税実務の知識はクライアントを適切にサポートするための重要なツールであるのです。
税務法規の知識
税理士業務を適切に遂行するためには、税務関連法規はもちろんのこと、会社法や契約法、労働法などの多岐にわたる法規の深い理解が不可欠です。
経済社会は常に変動しており、法規もその変化に対応して改正されていきます。それらを熟知することで、顧客の税務や財務上の課題を的確かつ迅速に解決することができます。
具体的には、課税対象や優遇措置、所得計算方法等の把握が求められます。また、法人の法的地位や責任、契約の締結と履行、雇用関係、金融機関の規制など、幅広い分野の法的知識が必要とされます。
加えて、毎年行われる税制改正の内容を確実に把握して顧客への情報提供を行い、利益・不利益を考慮した対策案を提示することが求められます。
ビジネス運営の知識
税理士の業務は単なる会計処理や税務申告にとどまらず、経営者に対するアドバイザーになることも含まれます。
企業の財務状況を深く理解したうえで経営判断の選択肢を提示し、アドバイスを行うことが求められます。そのためには、数字を読み解く高度な計数感覚と経営に関する熟知した知識が欠かせません。
特に事業承継やM&Aにおいては、事業や経営資源の適切な価値評価能力が必要となり、会計・財務だけでなく、業界動向やビジネスモデルを熟知しておくことも大切です。
税理士に必要なスキル
続いては、税理士として円滑に仕事を進める際に必要となるスキルを説明します。
データ解釈と問題解決スキル
税理士には企業の経営状況を正確に把握し、収益性・生産性・安定性などの経営指標を適切に解釈する力が求められるので、決算書を読み解く能力が不可欠です。
さらに、顧客の事業運営上の課題を多角的な視点から分析し、最適な解決策を見出すことが重要です。
個人事業主の法人化時期の判断では、単に利益の目安だけでなく売上高や利益額に加え、所得控除の活用可能性や事業以外の所得の有無など様々な要素を総合的に検討する必要があります。
効果的な解決策の構築と提示スキル
また、クライアントとの良好な人間関係を構築し、ビジネスパートナーとしての役割も果たす必要があります。
クライアントの問題を積極的に発見し、具体的な解決策を提案するスキルが求められるのです。
単なる忠告やアドバイスにとどまらず、信頼関係を築きクライアントの考えに影響を与える力が必要とされます。
クライアントの立場に立った理解と対応スキル
クライアントの立場を理解し適切に対応することが求められますが、クライアントの事業や悩みは様々で、目的や思いも多岐にわたります。
そのため、税理士として最適な提案をするためにはクライアントの真の意図を的確に読み取り、深く共感する能力が求められます。
クライアントの立場を考慮しながら、その利益となるアドバイスを提供できる者が良い税理士であるといえるでしょう。
顧客獲得と関係維持のスキル
税理士には、顧客を獲得し長期的な関係を築く能力も必要です。
積極的な人脈作りが欠かせず、交流会など参加して自身のサービスをアピールすることが大切です。
また、既存の顧客に他への紹介を依頼して新たなビジネスチャンスを見つけることもおすすめします。税理士の中には飛び込み営業を避ける人もいますが、自ら顧客を開拓する力は開業には必須です。
多言語でのコミュニケーションスキル
税理士業務は、クライアントとのコミュニケーションが欠かせません。
帳簿や伝票に違法となる可能性のある会計処理が見つかった場合、税理士としては修正を指導する責任があります。しかし、このような指導はクライアントにとって厳しいと感じてしまうこともあります。
そのため、事実を伝えるだけでなく相手の立場や感情に配慮しながら適切に伝える能力が求められます。
税理士の仕事内容
ここでは、税理士資格を持つ者のみが行うことができる3つの主な業務を紹介します。
税務相談
税理士は納税者の疑問や不明点を解消して適切な納税を支援しています。
個人から法人まで、さまざまな納税関連の質問に対して専門的な視点からアドバイスを行い、潜在的な問題を早期に発見できるよう努めています。
具体的には所得税や法人税、消費税の申告方法の指導に加え、節税策の提案や税務調査への対応などを行っています。
また、税理士の活動範囲は国内の税法のみならず、税制改正や国際取引に伴う税務問題にまで及びます。
税務書類作成
税務書類の作成では、確定申告書や決算書などの税務申告に必要な文書を作成します。
所得税だけでなく、法人税や消費税、相続税などさまざまな税目の申告書や添付書類の作成が含まれ、正確な会計情報に基づいた適切な計算と記入が求められます。
また、税制の優遇措置なども考慮して法を遵守しながら最善な申告を目指す必要があります。近年は電子申告への対応も重要な業務となっています。
税務代理
税理士は、個人から法人に及ぶ様々な納税者のために所得税や法人税、相続税などの税務申告を代理する役割も担っています。
専門知識と経験を活かした正確な申告を支援することで、納税者の負担を大きく軽減しています。
また、税制を熟知しているため納税者の状況に合わせた節税対策も提案できます。
税理士の労働環境
以下では、税理士の労働環境について閑散期や繁忙期の様子を含めて解説します。
割に合わない?税理士の労働時間
税理士の仕事は一般的なビジネス従事者と同じような労働スタイルが標準とされていますが、実際には個人や事務所によって大きな違いがあります。
土日や祝日の対応が求められる職種であり、特に繁忙期には長時間労働が避けられない状況にあります。
一方で、通常期においては残業時間が比較的少ない事務所も多数存在しています。
税理士の閑散期
税理士の業務には閑散期があり、6月から10月までが比較的落ち着いた時期となります。
一見、仕事がない時期と思われがちですが、実はスタッフが有給休暇を取得してスキルアップに励む貴重な機会でもあるのです。
さらに、8月に実施される税理士試験に向けて6月から本格的な試験勉強に入るため、この時期は税理士受験生にとって大切な時期となるのです。
事務所も受験生をサポートしやすく、試験休暇制度を設けるなどして受験生を後押ししています。
税理士の繁忙期
税理士の仕事量は顧客の種類や専門分野によって異なるため、忙しい時期も同様に変わります。
個人事業主がメインの税理士事務所は、所得税確定申告の時期である2月から3月が最も忙しくなります。
個人事業主や中小企業から年末調整や法定調書作成、償却資産税申告などの依頼を受ける場合もあり、11月から翌年3月まで長期間にわたって忙しい時期が続きます。
大企業がメインの税理士事務所は個人事業主の顧客が少ないため、2月から3月の所得税確定申告の時期は必ずしも忙しくありません。むしろ、3月決算の企業の決算申告が集中する5月頃が最も忙しい時期となります。
税理士の将来性
近年はデジタル化の進行や中小企業数の減少により、従来の税理士業務であるデータ入力や税務申告代行は減少傾向にあります。
しかし、これは税理士の将来性がなくなったわけではなく、ニーズの変化に対応しているからです。
経営者は、単に申告を代行するだけでなく財務状況を詳しく把握して適切にアドバイスできる税理士を求めています。つまり、コンサルティングに近いサービスを提供する税理士が重要視されています。
ただし、コンサルティング業務は簡単ではないため、それぞれの特性や強みを活かした働き方が求められるのです。
税理士のイメージは?
次に、税理士がよく持たれているイメージについて解説していきます。
賢そう・真面目そうなイメージ
税理士はまず、法令遵守と納税者の権利擁護を重視する誠実さから、信頼や尊敬を集めるとともに責任感の強いイメージを持たれています。
また、絶えず進行する税制改正に対応するために常に最新の知識を身に付けることが必要とされ、そうした努力が顧客の利益を守る姿勢として評価されています。
こうした特性から、税理士は広く「賢明で真面目」という印象を持たれているのです。
性格悪い・いい加減なイメージも
税理士は顧客の利益を最大限に尊重した税務対策を提案しています。
しかし一部の税理士はグレーゾーンの節税策を勧めたり、違法な手段さえ示唆したりするなど、本来の役割から逸脱することがあります。また、自身の報酬を優先した過剰な請求を行う者もいます。
さらには、基本的な知識やスキルが不足しているために、申告ミスや期限超過などの問題を引き起こす事例もあります。
このような一部の税理士の不適切な行動が業界全体の評価を下げ、社会から否定的な眼差しを受けることにつながっているのです。
税理士になるには
ここでは、税理士になるための手順を解説していきます。
資格ない人でもなれるか
税理士は資格を持たない人でも、税理士試験に合格して実務経験を積むことで登録が可能な職業です。
まずは国家試験である税理士試験に合格することで、税に関する専門知識を身につけることができます。その後は税理士事務所などで2年以上の実務経験を積み、日常業務に必要なスキルを養います。
これらの要件を満たせば、日本税理士会連合会に登録して正式に税理士として業務を開始できます。
一方で、弁護士や公認会計士などの資格を持つ者は一定の税法知識が認められているため、税理士試験が免除される場合があります。
税理士試験の受験資格
税理士試験のうち、簿記論・財務諸表論の試験は学歴や年齢に関係なく誰でも受験できます。
一方、税法科目の試験は特定の受験資格が求められます。具体的には、社会科学系の大学・短大卒業者、社会科学関連科目の単位修得者、簿記検定1級・上級合格者、会計実務経験者などが受験資格を有しています。
税理士試験の概要
また、厳しい競争率と高い難易度で知られており合格率は平均約17%にとどまります。毎年約27,000人が受験しますが、5科目全てに合格できるのはわずか585人ほどです。
この試験では5科目全てに合格する必要がありますが、一度に合格する必要はありません。多くの受験者は数年かけて合格を目指しています。
5科目の内訳は、会計学の簿記論と財務諸表論の2科目と、法人税、所得税、消費税などの税法から選択する3科目からなり、所得税か法人税のいずれかは必須となります。
大学院で修士号を取得した場合は一部免除が認められ、試験の負担が軽減されます。
合格発表は例年12月中旬に行われます。
税理士の求人や転職はエージェントに相談するのがおすすめ
税理士の就職や転職を検討する際は、エージェントに相談することが大切です。
経験豊富なエージェントは業界動向や企業の特徴を熟知しており、あなたの経験やスキル、志向性に合った求人情報を提供してくれます。
さらに、履歴書の作成からインタビューの準備まで、就職活動全般にわたってサポートしてくれます。
また、エージェントを通して非公開求人に関する情報を得られることもあるので、キャリアアップの可能性が広がります。
以下では、税理士の求人を探す際に使うべきエージェントをいくつか紹介していきます。
MS-Japan
MS-Japanは利用者の希望条件や適性に合わせて最適な職場環境を提案しています。
キャリアアドバイザーが一人ひとりの希望を丁寧に伺い、理想的な転職先を紹介しています。
また、豊富な業界知識とネットワークを活かし、大手事務所から個人事務所まで幅広い求人情報を提供し、履歴書の添削から面接対策にわたる総合的な就職サポートも行っています。
未経験者から経験者まで、それぞれのニーズに合わせたきめ細かいサポートを受けられます。
ビズリーチ
ビズリーチは特に税理士を目指す人にとっておすすめであり、業界をリードする転職サイトとして税理士関連の求人情報が充実しています。
会員になればヘッドハンターや企業からスカウトされる機会が増え、キャリアアップのための柔軟性が高まります。
また、AIを活用したマッチング機能を活用すれば自分のスキルや経験に合った求人を効率的に探すことができます。
さらに、業界の最新動向や年収データなどのキャリア選択に役立つ情報も提供しています。
ヒュープロ
ヒュープロは豊富な求人情報と長年の実績を持つ専門サービスで、正確なキャリアアドバイスを行っています。
大手法人から地域密着型の事務所まで、幅広い求人の中から最適な職場を探すことができます。
また、経験豊富なアドバイザーによる履歴書作成や面接対策などの全面的なサポートに加え、業界動向や求人情報も提供しています。
税理士向いてる人まとめ
ここまで税理士に向いている人と向いていない人の特徴や、税理士に求められる条件について詳しく解説してきました。
税理士を志すことは容易ではありませんが、たくさんのやりがいを感じられる職業です。税理士への就職や転職を考えている方は、本記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。