薬剤師の仕事内容とは?薬局でどんな仕事をしているのかわかりやすく解説
更新
私たち一人ひとりの健康をサポートする大切な存在が、薬剤師です。しかし、薬剤師の具体的な役割は、あまり知られていないのが現状です。
アトピーや風邪、様々な病気や症状に合わせて、最適な薬を選び、その服用方法を丁寧に説明することが、薬剤師の日々の業務です。
この記事では、薬剤師の重要な役割と、その専門性の高さについてお伝えしていきます。
そもそも薬剤師とは?
そもそも薬剤師は何する職業なのか、と考える人は少なくないと思います。薬剤師lとは、薬学の専門知識を持ち、薬の開発から患者への処方まで幅広く携わる重要な職業です。患者の健康と命に大きな影響を与えるため、高い責任感が求められます。
国家資格を取得し、厚生労働大臣から免許を得る必要があり、それにより適切な知識と能力が確認されます。
薬剤師は、適切な薬の提供だけでなく、予防や治療に関するアドバイスや薬歴管理なども行います。
薬剤師の仕事内容を紹介
薬剤師の役割は多岐にわたりますが、その基礎には専門知識と患者の健康と命を守る強い責任感があります。その中で多種多様の業務が存在するのが薬剤師の特徴です。
ここからは薬剤師の具体的な仕事内容について簡単にわかりやすく解説していきます。
服薬指導
薬剤師の重要な役割の1つである「服薬指導」とは、単に薬の飲み方を教えるだけではありません。薬の効能や作用、副作用、予防策などを患者やその家族、医療関係者に詳しく説明することです。
さらに、薬剤師は患者の服薬状況を把握し、指示通りに薬が服用されているかをチェックする責任があります。患者が安心して薬を服用できるよう、家族や医療関係者との連携が重要となります。
調剤業務
薬剤師の最も重要な業務は、医師から出された処方箋に従って、患者に必要な薬を適切に調合し提供する「調剤」です。薬の種類や量は医師の指示に基づかなければならず、薬剤師は指示を厳守しながら調剤を行う必要があります。
薬を勝手に変更するなどの行為は認められません。調剤後には、間違いがないか「調剤鑑査」を行い、安全性を確保します。このように、調剤業務には厳格なルールがある中で、患者の健康を守るための重要な仕事です。
薬物療法の管理
薬剤師の主な役割は、患者の治療を最適化することです。具体的には、患者の情報を把握し、処方箋に基づいて適切な薬剤を調剤して、病状に合った薬物療法を提供します。
このような薬剤師の業務は全て「薬剤服用歴(薬歴)」として記録され、担当薬剤師の名前とともに保管されます。薬歴は、患者の健康と安全を守り、適正な医療費の管理のために重要な役割を果たしています。また、これには法令により一定期間保管が義務付けられています。
医薬品の供給と管理
薬剤師は、医療現場でも一般の薬局でも、医薬品を適切に供給し管理する重要な役割を担っています。病院では、医師の処方箋に基づき、患者に必要な薬を提供することが薬剤師の重要な職務です。
一方、ドラッグストアなどでは、利用者の症状に合わせて適切な市販薬を選んだり、薬の使い方を説明したりすることが期待されています。医薬品の安全性を確保し、最大の効果を引き出すためには、薬剤師の役割が欠かせません。
医薬品情報の提供
薬剤師は、医療チームの一員として、医療従事者や患者に新しい医薬品情報や薬物療法に関する情報を提供する重要な役割を担っています。新薬の登場や治療ガイドラインの変更など、進化する医療情報を常に把握する必要があります。
また、患者や医療従事者からの質問や相談に対し、適切な情報提供やアドバイスを行います。そういった業務の中で、安全で効果的な薬物療法を支援しています。
薬剤師の仕事は医療現場だけでなく、一般の人々に向けた啓蒙活動にも及びます。学校での薬物乱用防止教室の開講や地域での啓蒙活動を通じて、地域社会の健康維持に貢献しています。
疑義照会
薬剤師には「疑義照会」という重要な役割があります。処方箋の内容をチェックし、疑問点や誤りがあれば医師に確認することで、患者さんの安全を守ります。
例えば、薬の種類や量、使用法などに疑問があれば、そのまま調剤を進めると問題が生じる可能性があります。
そのため、医師に問い合わせて正確な情報を得る必要があります。この疑義照会は薬剤師しか行えず、医療事故を未然に防ぐ重要な業務です。
薬剤師の主な職場
ドラッグストア
ドラッグストアは、薬剤師にとって重要な職場の一つです。ここでの薬剤師の主な役割は、処方箋が不要な一般用医薬品の販売だけではありません。来店客のニーズに耳を傾け、適切な薬を選び、副作用について説明します。そういった健康に関するアドバイスをすることもドラッグストア薬剤師には求められます。
一般用医薬品の中には、登録販売者が扱える製品もありますが、特に副作用のリスクが高い第1類医薬品は、専門性の高い薬剤師のみが販売できます。
また、一部のドラッグストアには調剤室も設置されており、そこでは薬剤師が調剤薬局と同様の調剤や服薬指導を行います。
調剤薬局
調剤薬局における薬剤師の役割は、単なる薬の調剤を超えて、患者中心のケアへと大きく進化しています。昔は処方箋に従った調剤が中心でしたが、現在では患者一人一人の状況を深く考慮しています。
処方された薬が適切かどうかを判断したり、他の薬との相互作用や重複を確認したりする役割が重視されています。
また、服薬指導や患者の質問に丁寧に答えることで、理解と安全を確保する重要な役割を担っています。
病院薬局
病院薬局は、薬剤師が患者の薬物療法に深く関わる場所です。主な役割は、医師の指示に基づいて適切な薬を調剤し、患者に使用方法を説明することです。
また、薬歴を確認しながら、患者の状態に合わせて最適な薬物療法を提案したり、副作用や相互作用をモニタリングしたりします。さらに、薬剤の在庫管理や品質管理も行います。
卸売販売会社
卸売販売会社は、薬剤師が医療機関や薬局に薬品を販売する場所です。ここで働く薬剤師は、患者に直接関わらないものの、重要な役割を担っています。
主な業務は、備蓄している薬品の管理です。残量や有効期限を把握し、円滑な供給体制を確保しています。また、病院や薬局からの問い合わせに対応し、適切な薬品提案や新薬情報の提供を行います。最新の知識と技術を活かし、医療機関をサポートすることが求められます。
製薬会社
製薬会社では、薬剤師が多岐にわたる職務を担っています。営業職のMR(医薬情報担当者)は、病院や薬局を訪れて自社製品の情報提供やプロモーション活動を行います。
一方、研究開発の薬剤師は、基礎研究から臨床試験まで一連の過程を管理し、新薬の創薬に取り組んでいます。最新の医学知識を活用し、新薬開発の中核的役割を果たしています。また、調剤や管理を担当する薬剤師は、質の高い医薬品供給を確保し、社会全体の医療に貢献しています。
学校
学校現場において、子供たちの健康と安全を守る重要な役割を担っているのが学校薬剤師です。日本では、大学を除く教育機関に薬剤師の配置が義務付けられています。
学校薬剤師は、プールの衛生管理や教室の環境チェックなどの環境衛生業務に加え、子供たちの健康相談や保健指導にも当たります。
一方で、学校薬剤師は必ずしも学校に常駐する必要はありません。多くの薬剤師が、調剤薬局や病院での本務の傍ら、学校薬剤師としての業務を兼務しているのが実情です。
この兼務体制により、薬剤師は様々な現場での経験を積むことができ、広い視野と高い専門性を身に付けることができます。
保健所
薬剤師の活躍の場は多岐にわたります。保健所では、調剤薬局や医薬品販売店の許認可や監査のほか、地域の公衆衛生のための啓発活動や検査業務などを担っています。
また、麻薬取締官や自衛隊の薬剤官、刑務所での健康管理の役割など、公共の場で専門性を発揮しています。こうした業務を通して、一般市民の生活と健康を守り、医薬品の適正使用と公衆衛生の維持に貢献しているのです。
薬剤師としての過ごし方
勤務日
薬剤師は、医療チームと密接に連携し、患者に寄り添いながら重要な役割を担っています。朝は、薬剤師全員で当日の業務分担を決め、麻薬や向精神薬の在庫確認など、適切な医療提供と法令遵守のための準備をします。
その後、病棟担当者は医療チームと協力しながら患者の薬剤管理や服薬指導を行い、薬局内担当者は調剤や注射薬の調整に従事します。昼休憩を挟んで午後も、病棟担当者は退院時の指導やカンファレンス参加、薬品管理を進めていく必要があります。
薬局内担当者は処方対応や持参薬の確認など、多岐にわたる業務に追われます。さらに退勤前には、翌日に向けた引き継ぎ作業を行います。
薬剤師の一日は、チームワークとコミュニケーション能力を駆使しながら、責任ある重要業務に従事する多忙な日々の連続です。
休日
薬剤師の休日は、勤務先によって異なります。
病院やドラッグストアでは365日営業しているため、固定の休日はなく、薬剤師自身が休日を決めることが一般的です。一方、薬局やクリニックでは、多くの場合、日曜祝日が固定の休日となっています。
このように、薬剤師の休日は勤務先の性質上、様々なパターンがあります。しかし、それぞれの職場で求められる役割を理解し、自分に合った生活スタイルを選べることがこの職種の魅力の一つとなっています。
薬剤師になるまでのステップを紹介
薬学部への進学
薬剤師になるためには、大学の薬学部で長期間にわたる勉強が必須です。薬学部では、前半3年間で化学や生物学など基礎科学の知識を身につけていきます。具体的には、人体の仕組みや病気の症状、薬の働きについて学びます。
後半3年間は、臨床に関する専門科目が中心となり、薬物治療や医薬品情報など実践的な知識を深めていきます。また、病院や薬局での実習を通して現場感覚を養うとともに、卒業研究で独自の視点を磨くことが求められます。
薬剤師国家試験の受験資格取得
薬剤師になるためには、6年間の薬学部課程を修了し、修士号を取得することが必須です。理論と実践の両面から専門知識と技術を身につける必要があります。
さらに、病院や薬局での実習を経験し、現場での経験を積まなければなりません。このように厳しい学習過程を乗り越えた者のみが、国家試験の受験資格を得られます。
薬剤師国家試験に合格
薬剤師になるためには、薬剤師国家試験への合格が必須です。国家試験では、基礎薬学から応用薬学、社会薬学まで多岐にわたる分野が出題されます。
薬理学や薬物動態学など基礎的な知識に加え、薬物治療や臨床における実践的な知識、さらには医薬品情報や法規制など社会的な視点も問われます。この難関を乗り越えることで、人々の健康を支える重要な役割を担うことができるのです。
薬剤師免許の取得
薬剤師になるためには、国家試験に合格し、免許を取得する必要があります。免許取得後、薬局、病院、製薬会社など、さまざまな分野で活躍できます。
しかし、一度免許を取得しただけでは十分ではありません。医療は常に進化しているため、専門資格の取得や継続的な学習により、スキルアップを図り続けることが求められます。薬剤師は、医療の進化に対応するため、常に学び続ける姿勢が重要になります。
転職エージェントを使って配属先を支援してもらおう
薬剤師として培ったスキルと経験を最大限に活かせる職場を見つけるには、転職エージェントを活用するのがおすすめです。
転職エージェントは、履歴書の作成支援や面接対策、転職活動のスケジュール管理など、転職活動全般をサポートしてくれます。さらに企業と交渉を行うことで、待遇面での条件改善も期待できます。
一般に公開されていない非公開求人情報も入手できるため、より良い選択肢から最適な職場を探すことができます。
薬剤師のやりがいとは?
給料がいい
薬剤師は高収入が期待できる職業であり、平均年収は全労働者平均を270万円以上上回っています。働く場所や企業によって初任給や昇給に違いがありますが、医療業界は経済状況の影響を受けにくいため、薬剤師の収入は安定しています。
高収入と収入の安定性が、薬剤師という仕事のやりがいにつながっているのではないでしょうか。
患者さんの健康管理に寄与できる
薬剤師は、患者一人ひとりの体質や生活習慣を理解し、適切な薬の選択と服薬指導を行うことで、患者の健康管理に大きく貢献することができます。服薬指導の際には、患者と対話を重ねながら信頼関係を築き、病状による不安を和らげることができます。
また、薬だけでなく生活習慣や食事についても指導を行うことで、細やかな対応が可能になり、患者から感謝の気持ちを得られます。特に在宅医療では、患者に最も近い存在として、家族からも感謝されることがあります。
このような働き方は、直接的に患者の役に立つことができるという実感を伴います。社会貢献やスキルアップにもつながるため、薬剤師としての大きな職業的やりがいとなります。
医薬品の発展と改良に携われる
薬剤師は医薬品の専門家として、患者の健康維持・向上に重要な役割を果たしています。服薬指導などから得られる患者の病状や体調の変化に関する情報は貴重で、それらを基に薬の質の向上が図られます。
薬剤師のやりがいは、こうした患者から直接得た情報を医師や製薬企業にフィードバックし、薬の改良や開発に貢献できることにあります。患者の満足度を高めるにはどのような改善が必要かを明らかにする必要があります。その実現に尽力することで、医療の発展に直接寄与できるのです。
常に能力を高め続けられる
薬剤師は、患者の健康を守るためのやりがいのある仕事ですが、その一方で、絶えず自己研鑽が求められます。患者から信頼されるためには、医療に関する深い知識と、適切なコミュニケーション能力が不可欠です。
さらに、最新の薬剤情報を常に把握し、疾患への理解を深めるための日々の学びが重要です。薬局では、患者の健康管理だけでなく、多職種との連携による地域包括ケアも期待されています。患者に最適なソリューションを提供できるよう、絶えず学び、経験を重ねることが、薬剤師としての自信と成長につながります。
柔軟な働き方ができる
薬剤師は柔軟な働き方が選べるのが大きな魅力です。女性が多く活躍するこの職種では、産休や育休制度が整っている職場が多数あります。
資格を持つ薬剤師は求人倍率が高く、一時的に仕事を離れても再就職しやすい環境にあります。正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣などの働き方を選べるので、ライフスタイルに合わせて効率的に働くことができます。
さらに全国どこでも需要があるため、転居しても仕事を続けられます。家庭と仕事の両立しながら、自分らしい柔軟な働き方ができるのが、薬剤師のやりがいの一つと言えるでしょう。
薬剤師の平均年収
職業 | 年収 |
---|---|
薬剤師 | 583.4万円 |
歯科医師 | 810.4万円 |
診療放射線技師 | 543.7万円 |
臨床検査技師 | 508.9万円 |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士 | 430.7万円 |
看護師 | 508.1万円 |
准看護師 | 418.2万円 |
医師 | 1428.9万円 |
薬剤師の平均年収は583.4万円です。ただ、都市部と地方、病院や薬局など勤務先によっても違いがあります。
また、他の医療職と比較すると、医師・歯科医師が飛び抜けて高いですが、薬剤師もそれに次いだ年収水準になっています。
薬剤師の仕事は無くなってしまう?
薬剤師の数は近年増加してきましたが、2025年以降は薬学部の定員増が認められないため、薬剤師の人口は頭打ちになる可能性があります。しかし、薬剤師の仕事そのものがなくなるわけではありません。
その中で、薬剤師の未来についてどんな懸念点があるのかを見ていきましょう。
懸念点
AIやロボットに奪われないか
薬剤師の皆さん、安心してください。最新のAI技術は、皆さんの仕事を奪うものではありません。むしろ、AIは薬剤師の業務をサポートし、より効率的で洞察力のある業務遂行を可能にするものです。
慶應大学などの研究機関が開発したAIは、服薬指導などの基本的な業務を支援するためのものです。AIは薬剤師に代わって患者に説明をするのではなく、薬剤師がより適切な指導ができるようバックアップする役割を果たします。
また、オックスフォード大学の研究によれば、薬剤師の仕事がAIによって失われる可能性はわずか1.2%にすぎません。AIは薬剤師の労働を軽減し、より質の高い業務遂行を可能にするパートナーとなるでしょう。一方で、単純作業のみを行う薬剤師にとっては、AIが脅威となる可能性もあるのは事実です。
テクニシャンによる代替がなされないか
テクニシャン制度は、薬剤師の業務負担を軽減するために、薬剤のピッキングや事務作業などの特定の業務を薬剤師以外のスタッフに任せる制度です。
ここでの問題は、専門性の高い業務を遂行できない薬剤師の存在価値が低下してしますことです。そのため、スキルセットの低い薬剤師の需要が減っていくかもしれません。
結果として、薬剤師の役割や職業教育の見直しが必要となるでしょう。薬剤師の専門性を維持しながら、テクニシャン制度をバランスよく取り入れることが求められます。
オンライン薬局の普及
近年、オンライン診療が普及し、オンライン薬局の数が増えています。これにより、薬剤師の役割について見直す必要が出てきました。
オンライン診療は従来とは異なる新しい医療の形態であり、オンライン薬局の広がりによって、対面での服薬指導などの薬剤師の役割が損なわれる恐れがあります。さらに、診療後にオンラインで処方箋が発行され、その場で薬が購入できるため、この流れは加速しそうです。
また、薬の宅配サービスが広がれば、薬剤師が直接患者に薬を手渡して説明する機会が大幅に減少します。これにより、服薬指導や副作用確認など、薬剤師の重要な役割が縮小される可能性があります。
薬剤師からの転職を考えるなら転職エージェントを活用しよう
近年、薬剤師の需要が高まる一方で、AIやロボットによる業務代替化の懸念も存在します。しかし、薬剤師の専門性と患者対応能力はAIやロボットでは代替できません。むしろ、高齢化社会の進展により薬剤師の役割は拡大していくでしょう。
ただし、変化に対応できない薬剤師は淘汰される可能性があり、働き方改革を求める声も高まっています。そんな時は、薬剤師専門の転職エージェントを活用するのがお勧めです。転職エージェントは、適切な転職先の紹介やキャリアアドバイス、面接対策などをサポートしてくれます。
自身のスキルと経験を生かし、働き方も改善できる転職を考えている方は、ぜひ転職エージェントを利用してみてください。
まとめ
薬剤師は、医師から出された処方箋をもとに、患者さん一人ひとりに合わせて薬を調合し、正しい飲み方や注意点をわかりやすく説明します。
さらに、薬の効果や副作用に関する相談にも乗り、体調に合わせて薬を調整することもあります。
患者さんの健康を守るため、薬に関する専門的な知識と適切なアドバイスが求められる職務です。