看取り期間の過ごし方は?看取り介護の心構えや危篤期間の対応法まで紹介
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大切な家族が看取り期間に入ったとき、多くの方が「どのように過ごすべきか」「何をすればよいのか」と不安を抱えます。24時間付き添うべきなのか、仕事は続けても良いのか、様々な判断に迷われることでしょう。
看取り期間は人によって長さが異なり、数日から数ヶ月と幅があります。この大切な時期を後悔なく過ごすためには、ご本人の希望を尊重しながらも、介護する側の体調管理も重要になってきます。
本記事では、医師や看護師、介護の専門家の知見をもとに、看取り期間の具体的な過ごし方をご紹介します。
看取り期間について
人生の最期を迎える時期は、患者本人とその家族にとって大変厳しい時期です。しかし同時に、大切な人との最後の時間を過ごすことができる最後の大切な時間でもあります。
看取り期間は、医師から看取り介護が必要だと告げられた時点から始まります。
看取り時期がいつ頃になるかを事前に把握しておくことで、心の準備ができるだけでなく、残された時間をどのように過ごすべきか考えることができます。
看取り期間の平均期間はどのくらい?
看取り期間は、患者の体調や病気の種類、年齢などによって大きく異なり、数日から数か月に及ぶこともあります。ですので、患者や家族は医療スタッフと状況を共有し、適切な対応策を立てることが重要になります。
このように看取り期間は不確定であることから、介護者や家族の方々に不安などの気持ちが生じることもあります。
そのような時は、福祉関係者やケアワーカーに相談し、一緒になってその期間をよりよく過ごせる方法を見つけていくことをおすすめします。
看取り期間は、大きく以下の3つの期間に分けられます。
看取り介護安定期
患者にとって、症状が落ち着く「看取り介護安定期」は非常に大切な期間です。この期間は人それぞれ異なりますが、患者と家族が会話やコミュニケーションを楽しむことができます。
患者の好みの食事を用意したり、気持ちよく入浴できるよう配慮するなど、日常生活の中で心地よい気分転換を促すことをおすすめします。
さらに重要なのは、患者に愛情を込めて話しかけ続けることです。馴染みの声を聞くことで孤独感が和らぎ、安心感を得られるでしょう。
看取り介護不安定期
看取り介護には予測できない要素が多く、思い通りにいかない場合もあります。
よくあるパターンとして、徐々に体調が悪化していく中で、一時的に良くなる時期と悪くなる時期が繰り返されることがあげられます。体調が良くなった時は介護者も安心しますが、突然悪化することも珍しくありません。
病状や症状は人それぞれ異なるため、介護する家族は安定期と不安定期を行ったり来たりします。このような繰り返しは、精神的・肉体的な負担を家族にもたらします。ストレスや疲労が蓄積し、深刻な健康問題につながる可能性もあります。
看取り介護では、介護を受ける方だけでなく介護する家族自身のケアも重要な要素となります。
看取り介護後期
人生の最終段階では、病状が回復することは期待できず、落ち着いた状態に戻ることもできない時期を迎えます。この命の終わりの時期においては、最善のケアを提供するために様々な配慮が必要となります。
自宅で最期を看取る場合は、緊急時の連絡先をあらかじめ把握しておくことが重要です。そして何より大切なのは、本人の思いや希望を尊重し、最後の時間を安心して過ごせるよう手配することです。
一方、施設や病院で最期を迎える場合には、本人が会いたいと願う人に連絡を取り、面会の機会を設けることが大切です。これにより本人の心に満足感を与え、穏やかな気持ちを保つことができます。
また、本人が事前に希望していた最期の過ごし方を尊重することが何よりも重要です。可能な限りその意向に沿った介護を行うことで、安心して人生を全うできるよう支援しましょう。
看取り期間の心構えとできること
看取りの時期が近づいたら、医師から症状の変化について事前に説明を受けることでいざという時にも落ち着いて行動できます。
未知の状況に直面すると、患者や家族は驚きや不安を感じがちです。
しかし、今後起こりうる症状を知っておけば心の準備ができ、冷静に対応できるようになります。そこで、医師から看取りの一般的な経過を説明してもらい、心構えをする必要があります。
説明を受けることにより、家族からは「先生から説明された通りの変化が見られました。これからも大丈夫でしょうか?」といった冷静で具体的な質問ができるようになります。
以下では、看取り期間にできることを紹介します。
十分なケアプランを練ろう
早期からケアの計画を立て、葬儀屋の選定や手配まで行うことがおすすめです。臨終の流れや葬儀の手続きをあらかじめ把握しておけば、緊急時にも冷静に対応できます。
特に、葬儀屋の選択は患者や家族の意向を反映させることが大切です。可能であれば、本人が意識がある間に選定し、準備を整えましょう。
そうすれば、家族は最期を看取る時間に集中でき、後の混乱も最小限に抑えられます。
介護者としてできることを理解する
看取りの時期は、介護者や家族が患者に寄り添い、深い理解と安心を与える大切な時です。
そのためには、介護者自身が死を人生の自然な旅立ちとして受け入れる確固たる心構えが欠かせません。介護者側は、患者との信頼関係を築き、「ここなら最期を迎えても安心できる」と感じてもらえる環境づくりに努めましょう。
人生の最終段階で不安や疑問を抱える家族に対し、敬意を持って寄り添い、互いに支え合うことも介護者の大切な役割です。 実際のケアでは、食事や排せつ、清潔の世話が必要ですが、そこにも安心感を与える言葉遣いや丁寧な接し方が求められます。
辛い症状を和らげるケア
命の最終段階にある患者の介護においては、積極的な治療は控え、本人の要望に合わせたケアが重視されます。しかし、この段階でも患者は痛みや苦しみを抱えています。
そのため、患者の好きな音楽を流したり、好きな香りのアロマを焚いたりすることで心身のリラックスを促しましょう。
また、柔らかい照明や快適な温度調整も患者が安らぐのに効果的です。
他には、家族がそばにいて話しかけることでも辛い症状を和らげることができます。
精神的に寄り添ったケア
看取り介護は、患者の身体的な苦痛を和らげるだけでなく、心の痛みにも寄り添うことが求められます。死を目前にした不安や焦燥感は自然な感情であり、これらに対して丁寧に向き合い、支援することが介護者や家族の大切な役割となります。
孤独感は終末期に多くの患者が経験する感情ですが、介護者や家族は常に寄り添い続けることで、「一人ではない」というメッセージを伝え続けることができます。
質の高い見取り介護を提供するためには、家族全員での協力が不可欠です。患者の穏やかな表情や呼吸の変化、筋緊張の緩和など、些細に思える観察結果でも家族内で共有することが大切です。
看取り介護加算の発生条件
看取り介護加算とは、施設で看取りを行う際に追加で発生する報酬のことです。以下では、看取り介護加算の種類と、どのような場合に発生するのかについて解説します。
看取り介護加算は特養で看取りをすると発生
特別養護老人ホームの入居者が余命が長くないと医師に診断された場合、最期まで適切なケアを提供するために、医療・看護・介護の専門家が連携して支援を行います。
この支援に対する報酬として、「看取り介護加算」が設けられています。入居者の状況に応じて、「看取り介護加算(I)」と「看取り介護加算(II)」の2種類から適切な加算が選択されます。
看取り介護加算(Ⅰ)
看取り介護加算(Ⅰ)は、入居者が最期を迎える際の身体的・精神的苦痛を和らげるケアへの尊重を制度化したものです。
この加算の発生には、常勤の看護師を配置し医療機関との連携を図ること、入居者や家族に十分な説明と同意を得ること、ガイドラインを適切に整備すること、職員の研修や個室等の環境を整えること、そして実際に適切な看取り介護を行うことなどの要件を満たす必要があります。
看取り介護加算(Ⅱ)
入居者の最期までを適切に介護するためには、医療機関との綿密な連携が欠かせません。入居者の容体の変化に応じて、施設と医師が情報を共有し、具体的な対応策を協議する必要があります。24時間体制で医療サービスを提供できる体制を整備することも重要です。
これらのような条件を満たすと、看取り介護加算(Ⅱ)が発生します。
看取り介護の施設と選び方
看取り介護施設を選ぶ際には、人生の最終段階を迎える人が自分らしく過ごせる環境を選ぶことが大切です。
施設を選ぶ際は、24時間体制のケアができるか、家族が訪れやすい地域か、費用負担は軽減できるかなどを確認することが重要です。
最期の時を、本人や家族が納得のいく環境で過ごせるよう、様々な選択肢から最適な場所を見つけることが肝心です。
看取り介護の現状
人生の最後の時を、尊厳を持って迎えられるように支援することが看取り介護です。
しかし、すべての施設で看取り介護を提供できるわけではありません。介護保険法で定められた条件を満たす必要があります。
条件とは、24時間看護体制と医療機関との連携、入所者や家族への十分な説明と同意、看取りへのアプローチの継続的見直し、スタッフへの実習提供などです。
これらを満たさない施設では、看取り介護の提供は認められていません。自然な死を尊重しながら、個人の尊厳を守ることができる大切なサービスです。施設選びには慎重さが求められます。
ケアハウスや老人ホームなどの介護施設の場合
介護施設で生活する人の多くは、自宅で最期を迎えることを望んでいます。
しかし、終末期になると自宅に戻るための準備は簡単ではありません。一方、家族にとっては最期まで施設で過ごせることが安心につながります。
ただし、施設によって「看取り介護」の対応能力は異なります。一部の施設では看取りが不可能で、最期を迎えるまでに病院や別の施設への転院を余儀なくされる場合があります。
自宅の場合
家族や親しい人々と過ごしながら、自分らしい最期を迎えたいと願う人は多いものです。
しかし、自宅での看取り介護には24時間体制での対応が求められ、家庭環境を整備する必要があります。
近年、在宅医療を支える体制は整いつつありますが、まだ実現できるケースは限られています。ソーシャルワーカーやケアマネージャーなどの専門家と十分に相談し、質の高いサポートを受けることで、自分や家族が満足のいく看取りが可能になるでしょう。
病院の場合
看取り介護において、病院を選択する人が増えています。家族形態の変化や高齢者の一人暮らしが増えたことで、従来の在宅介護が難しくなりました。
また、介護施設でも看取りケアが十分に行えないため、結果的に病院での看取りが多くなっています。
病院では専門的な緩和ケアが受けられ、余計な苦痛なく最期を迎えられるというメリットがあります。こうした背景から、病院での看取りが一般的になってきているのです。
危篤期間の対応法を紹介
終末期のケアは非常にデリケートな課題です。患者の状態が長期化すると、関係者の心情も緊張し、些細なことでも感情的になりがちです。
このような時期には冷静なケアとコミュニケーションが求められます。就寝、食事、排泄のサポートでは患者の尊厳を尊重しつつ適切な援助が必要です。
また、痛みの緩和や個別の状況に応じた最善のケアプランの提供も重要です。終末期ケアには、専門知識と共に患者とその家族への思いやりの心が不可欠です。
危篤期間には個人差がある
人は誰でも危篤状態に陥る可能性があり、その期間は個人差が大きいです。
たった数分で終わることもあれば、数週間や数ヵ月に及ぶ場合もあります。危篤状態から回復する道もあり、必ずしも最期を意味するわけではありません。
しかし、その過程では様々な困難に直面します。そのため一人ひとりの状況を理解し、最善の対応を講じることが重要です。
家族が注意するべきこと
医師から危篤状態と宣告されれば、家族は衝撃と無力感に打ちのめされるでしょう。
この試練の時期を乗り越えるために、患者とその家族が心がけるべきことがあります。ただ漫然と過ごすのではなく、後悔のない道筋を見出すためのヒントとしてご参考ください。
声がけ
終末期は、患者本人や家族が精神的に非常にデリケートな状況にあります。そのような時に不用意な言葉を発すると、深く傷つけてしまう可能性があります。
そのため優しく思いやりのある言葉を選び、相手の心情と体調を十分に配慮した上で、適切な声掛けをする必要があります。繊細な気遣いと細やかな心づかいが求められるのです。
病院内
突然の危篤の知らせに、家族は混乱と不安に襲われます。
しかし、病院内では冷静な判断と行動が何より大切です。状況が刻一刻と変化する中、病室や廊下でパニックに陥るのは避けましょう。
医療スタッフが懸命に治療に当たっている最中、感情的になり騒ぎを起こすと治療の妨げになるだけでなく他の患者やその家族への配慮も欠けてしまいます。
病院は複雑な感情が行き交う場所ですが、環境を理解し適切に振る舞えば最善の医療を受けられます。
家族がするべきこと
家族の大切な人が危篤状態に陥った時、多くの人は混乱し戸惑うものです。
しかし、この困難な状況でも適切に対処すれば、後悔のない時間を過ごすことができます。
まずは冷静さを保つことが大切です。感情的になり過ぎると的確な判断ができなくなるからです。家族で協力し、医師から詳しい説明を受けましょう。診断結果や病状の進行、治療法、予後など、できる限り情報を集めることが重要です。
そして、患者のご意向を確認して医療やケアの方針、遺言、葬儀の希望などを尊重しましょう。
本人への声がけを続ける
重篤な状態の方とのコミュニケーションは、非常に大切なことです。反応がないように見えても、実際には声が聞こえている可能性があるので、できる限り声をかけ続けましょう。優しい声や話す内容が、その方に良い影響を与えるかもしれません。
家族の会話は、本人の意識を刺激し、些細な変化に気づく機会を増やします。思い出話や感謝の気持ちを伝えることで、本人を元気づけ、回復する可能性も高まります。
重篤な状態の方には、積極的に言葉をかけ、感謝や励ましの言葉を伝えることが大切です。限られた貴重な時間を最大限活用し、後悔のないようコミュニケーションを深めましょう。
いざという時のために心づもりをしておく
愛する人が重体になった際、家族は「まだ生きている」「回復する可能性がある」と希望を抱きながらも、現実を受け入れる力が必要となります。
希望を持つことは大切ですが、心の底から事実を受け入れ、備えをすることも同様に重要です。予期せぬ事態に冷静に対処するには、あらかじめ心構えをしておくことが求められます。
医師からの説明を聞いたり関係者へ連絡をする際、何よりも冷静さが必要不可欠です。その冷静さを保つことは簡単ではありませんが、いつでも適切に判断できるよう自らを落ち着かせ、事前に心の準備をしておくべきです。
看取り介護と生前整理
人生の中で物を大切にしながらも、不要なものは断捨離していくことが大切です。
自分がまだ元気なうちに、大切な品物や資産について、誰にどのように残すのかを検討し意向を伝えておくことが賢明です。そうすれば、認知症になったり亡くなった後も遺族が混乱することなく適切に対処できます。
生前整理は、単に物を減らすだけでなく残したい財産や思い出の品に向き合い、見通しをしっかり立てて整理することが肝心です。
生前整理をするべき理由
人生には予期せぬ出来事が付きものです。親しい人を突然亡くし、残された家族は財産の整理や重要書類の特定に追われることもあります。
ある老婦人が一人暮らしの家で亡くなった際、遠く離れた子供たちが、母親が大切にしていたものや重要書類の場所を特定するのに苦労したというケースが多いです。
このような事態に備え、生前に自分の意志を明確にし、大切なものを整理しておくことが重要です。生前整理をすれば、亡くなった後の手続きが円滑になり大切な品々や情報を適切に残すことができます。
生前整理は家族の負担を軽くするだけでなく、自分の人生の軌跡を後世に残す意味でも重要な作業なのです。
生前整理のポイント
生前整理は、人生の節目や体力的な変化に合わせて適切なタイミングで着手することが重要です。まだ体力や判断力があるうちに始めれば、物事を冷静に判断でき、無理なく進められます。緊迫した状況下では、適切な判断が難しくなる場合があります。
生前整理には適切な手順があり、まずは写真や思い出の品など感情的な負荷が比較的少ない「情報」の整理から始めるのがよいでしょう。写真の保管方法は悩みの種ですし、大切な思い出が失われてしまうこともあります。
次に、自分にしか分からない価値観に基づく物の整理が大切です。その物の価値を家族に伝え、理解してもらう機会を設けることが求められます。
さらに、不動産などの「財産」の整理は手続きが複雑になる可能性があります。家族や信頼できる人々とその情報を共有し、自分の意志を確実に伝えることが肝心です。
生前整理で注意したいこと
生前整理や遺品整理については近年トラブルが増えており、業者選びには十分な注意が必要です。一部の業者から契約を急がせるような誘いがあり、結果的に高額な費用を請求されるケースもあります。
トラブルを避けるためには、身内や友人に相談し、複数の業者から見積もりを取って比較検討することが重要です。作業内容と費用を確認し、処分品と保管品をはっきりと区別して方針を示すことも大切です。
万が一トラブルが起きた場合は、消費生活センターに相談しましょう。
看取り期間の過ごし方まとめ
この記事では、看取り期間の平均的な長さや看取り介護に向けた心構え、危篤期間への適切な対応方法についても詳しく解説しました。
人生の最期を迎える大切な人を看取るにあたっては、事前の知識と準備が重要です。そうすることで精神的な負担を和らげ、亡くなる方への深い理解にもつながります。