通関士試験に合格するまでの勉強時間の目安は?難易度や独学での勉強法を解説

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通関士の資格を取得するには、高度な専門知識と経験が求められる難関試験に合格しなければなりません。

果たして、合格に向けてどのくらいの時間を費やし、どのように学習すればよいのでしょうか。

この記事では、通関士試験に挑戦する方々に、求められる学習時間と効率的な自習方法をご紹介します。

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通関士試験合格に必要な勉強時間はどのくらい?

勉強時間は400~500時間

通関士試験に合格するには、400~500時間の勉強時間が目安とされています。

そのため、長期的にコツコツと取り組むことが重要です。特に社会人は、仕事や家庭と並行しながら、限られた時間を活用して学習を進める必要があります。

具体的に、毎日の生活の中で勉強のルーティンを作ることをおすすめします。

例えば、通勤時間や休憩時間、就寝前などの時間を活用して少しずつ学習を積み重ねていくことが求められます。

試験対策期間の目安は4~5か月

400~500時間程度が目安とされているので、毎日3時間勉強すると4~5か月かかるという計算になります。

ただし、個人差があるため、遅くとも試験の6ヶ月前から学習を始めることをおすすめします。

一方で、教材のボリュームが多くて不安を感じるような時は、8~10ヶ月前から徐々に学習を始めることをおすすめします。

学習環境や前提知識のあるなしによっても変わる

通関士試験に必要な勉強時間は、その人が勉強をしやすい環境にいるか、勉強をするのが得意なのかどうか、といった条件が違うことで大きく異なってくるため、目安として捉えると良いでしょう。

また、事前知識がある人は新しいことを理解しやすく、効率的に実践問題に取り組めると言えます。

通関士試験の基本情報

​本章では、通関士の国家試験についての基本情報を解説していきます。

そもそも通関士って何?

通関士は、税関に申告する輸出入貨物の書類作成や審査・申告を行う職業です。頻繁に取引を行う企業は、自社だけでこの業務を十分にこなすことが難しいため、通関士に代行を依頼することが多くなっています。

書類の確認から税金計算、行政との交渉までの幅広い業務を一手に担っています。

しかし、高度な知識と経験が求められるため、通関士の開業や独立は容易ではありません。そのため、資格を取得した後は多くの通関士が通関業者や運送会社に勤めています。

概要と合格率

通関士試験は、毎年10月の第一、または第二日曜日に実施されており、受験料は紙式で3,000円、オンライン申し込みの場合は2,900円が必要です。

試験科目は「通関業法」「関税法」「通関実務」の3科目からなり、合格発表は11月下旬から12月上旬となっています。

合格率は平均で15.4%程度となっていますが、合格率には年による変動があり、10%を下回ることもあれば、20%を超えることもあります。

そのため、前年に不合格だったからといって落胆せず、次の機会に向けて準備を続けることが大切です。

合格基準

通関士試験に合格するためには、3科目すべてで60%以上正答する必要があると言われています。また、たとえ3科目の合計点が90点以上でも、60%以上正答できていない科目が1つでもあると不合格となります。

しかし、あくまでも目安に過ぎず、実際の合格基準がわかるのは合格発表時になります。試験の難易度によって合格者数が変動するため、合格基準も年によって変わるのです。

例えば、全受験者が60%以上を達成した場合でも、全員が合格するとは限らず、逆に、難易度が高すぎた年は合格基準が下方修正されます。

難易度

平均合格率からもわかるように、通関士試験の合格は決して簡単なものではありません。

この試験は受験者の実力を問う一定の難易度が課されており、気軽に臨んでは合格できるレベルではありません。

しかし、じっくりと時間をかけて取り組めば、努力が報われる試験だと言え、十分な学習時間を確保できる受験者であれば、合格の可能性は高まっていきます。

通関実務は特に難しい

特に「通関実務」科目は、実際の業務に即した出題が行われ、輸出入の申告手続きや計算問題、品目分類などの理解が求められます。最も難易度が高い科目とされており、配点は45点です。

一方、関税法等と通関業法は、法令の暗記が中心となる選択式の出題で、配点は前者が60点、後者が45点となっています。

おすすめの勉強する科目の順番を紹介

通関士試験は、通関業法・関税法等・通関実務の3科目から構成されています。

科目の難易度は、通関業法が最も易しく、関税法等と通関実務がやや難しい科目となっています。ただし、通関実務は個人の経験によって難しさが変わってきます。

おすすめの学習順序として、通関業法から始め、次に関税法等、最後に通関実務を学ぶ「1科目ずつコツコツ型」と、3科目を同時進行で学ぶ「同時進行型」の2パターンがあります。

前者は難易度を徐々に上げられますが、後者の方が科目間の関連性を捉えやすい可能性があります。

自身の学習スタイルに合わせて、好みの方法を選んでください。

通関業法

通関業法は初学者にとって理解しやすい科目なので、スタートの科目としておすすめです。

しかし、関税法との関連性があるため、関税法の基礎的な部分と並行することをおすすめします。そうすることで、通関業法で使われる専門用語の意味がつかみやすくなるでしょう。

比較的簡単であるため軽視されがちですが、試験に向けて地道な対策を怠ると後々つまずく可能性があります。

過去問題を定期的に解くことで、知識と対応力を維持・向上させることができます。

関税法等(略称)

関税法は、通関士試験で最も出題範囲が広く複数の法律から出題されるため、この科目の学習に多くの時間を費やすことになります。

関税法の配点は60点満点と、その得点が試験の合否を大きく左右する重要科目です。

通関実務と密接に関連しているため、両科目を同時に学習することで理解が深まりますが、初学者の方は一科目ずつ着実に進めてもよいでしょう。

最初はバラバラに感じられるかもしれませんが、焦らず一つひとつ学習を重ねていけば、徐々に全体像が見えてくるはずです。

通関実務

通関実務は、計算・申告書問題が中心になる科目ですが、高度な数学力は必要ありません。

電卓が使用可能で、中学1年生レベルの方程式さえ理解していれば、難しい問題でも解答できます。

むしろ重要なのは、問題文を丁寧に読み解く力と、関税定率法の知識を確実に身につけることです。

また、学習に飽きてきた際は、計算問題や貨物分類の問題に取り組むことで気分転換になり、継続した学習が可能になるでしょう。

独学で試験対策をするときに気を付けるポイント3選

遅くても6カ月前から取り組み始める

独学対策として、試験の6ヶ月前から勉強を始めることが推奨されていますが、これは一般的な目安にすぎません。

個人の予備知識や得意分野によって、適切な学習時間や進度は異なります。通関士の専門書は分量が多いため、8ヶ月から10ヶ月前に学習を開始すれば、ゆとりをもって対策ができるでしょう。

合格には十分な知識と理解が必要なので、自分に合った計画的な学習と時間管理が重要になります。

通関業法:関税:通関実務=2:2:6の学習時間

通関業法と関税法については、主に法令の暗記が必要ですが、通関実務では暗記だけでなく、計算問題の解決力や申告書の読解力が求められます。

そのため、「通関業法:関税法:通関実務=2:2:6」の比率で時間を配分することが理想的とされています。

まずはこの比率を参考に学習スケジュールを立て、通関業法と関税法の暗記、そして通関実務の実践力養成に重点を置いた学習計画を立てましょう。

通関業法・関税法

この2科目の学習においては、知識の暗記が重要となります。

初めは丁寧にテキストを読み進め、全体像を把握することが大切です。

その後、問題演習を行い、理解が浅い部分があればテキストに戻り、繰り返し学習することで知識を確実なものにしていきます。

通関実務

通関実務の学習では、問題解決力が重視されます。

申告書の読解力や必要な計算式を導き出す力が求められるため、知識の蓄積だけでは試験問題に対応するのが難しくなります。

さらに、通関実務の問題数は他の科目に比べて少ないため、1つ間違えると得点率に大きく影響してしまいます。

そのため、テキストの読み込みと並行して、早い段階から実際の問題に取り組むことが重要です。

計画通りにいかないことを想定する

独学で試験勉強を進める上で、最大の課題の一つは計画通りに進まないことです。

理想的なスケジュールを立てても、様々な予期せぬ事態により、そのとおりに進むことはあまりないでしょう。

​そのため、自分の思うように勉強時間が確保できない場合は、スキマ時間の活用、曜日・時間帯ごとの学習量の調整、自宅以外での勉強環境の確保など、臨機応変な対策を講じる必要があります。

隙間時間をなるべく確保しよう

学習を続けるためには、予期せぬ出来事に備えて余裕を持った時間管理が不可欠です。

スキマ時間を活用して短時間でも学習に取り組むことで、日中の仕事や家庭での時間確保が難しい場合でも対応できます。

しかし、状況によっては計画通りに進まない場合もあるため、余裕を持った学習計画を立てることが大切です。

通関士試験合格のためのおすすめ勉強法

本章では、通関士試験に合格するためのおすすめ勉強法を紹介していきます。

全体像を把握してから計画を立てる

通関士試験に合格するには、全体を見渡した上で、計画を立てて着実に学習を進めることが肝心です。

まず、目標期限を決め、どの教材を使いどの順番で勉強するかを明確にすることで、理解度や進捗状況を把握しやすくなります

一方で、計画なしに勉強を進めてしまうと、基礎が固まらず、難しい問題に行き当たった際に挫折してしまう可能性があります。

単に計画を立てるだけでは不十分で、強い意志を持って毎日2、3時間は集中して勉強する覚悟が必要不可欠です。適度な休憩を取りながら、効率的に学習時間を確保することで、自己管理能力も高められます。

法律の暗記が最優先

また、法的知識を厳しく問われるため、幅広い法律知識を身につけ、しっかりと記憶に留めておく必要があります。

ほとんどの受験者が事前に法律知識を持っていない可能性が高いため、一つひとつ地道に知識を積み上げていくことが求められます。

暗記する際は、単に法律の名称を覚えるだけでなく、その主旨や重要ポイントも一緒に暗記することが重要です。

法律とそれに関連する規則を結びつけ、細かい内容まで理解することで、試験で問われる知識を確実に身につけられます。

法改正の情報はしっかり押さえておく

法律は絶えず改正されているため、改正内容を逐一確認し、勉強に反映させる必要があります。

過去問題の解答が現行法に沿っていないケースもあるため、正しい情報を持っていないと正解を導き出せません。

通関士は多くの法令を遵守する職種なので、新しい法改正の内容を確実に学ぶことが欠かせないのです。

あくまでも合格点の6割を目指す

通関士試験は高度な知識と技能が求められますが、全ての分野を完全に理解する必要はありません。なぜなら、各科目で6割以上の得点があれば合格できるからです。この基準を意識することで、分からない問題があってもパニックに陥ることなく、落ち着いて試験に臨めるでしょう。

しかし、合格基準は年度によって若干変動するため、単に6割に合わせて勉強するのはリスクがあります。7割を目安に学習を進めた方がゆとりができ、試験でも余裕を持って対応できます。

出題頻度の高い重要ポイントに焦点を当て、必要な部分は詳しく、不要な部分は概要のみを理解するといった工夫が求められます。

通関実務は特に丁寧に学習

通関士試験の中でも、通関実務は特に難易度が高くなっています。

各問題の配点が高く、難解な計算問題も含まれているため、的確な学習計画と十分な時間の確保が重要です。

また、この科目は高度な知識が必要であり、通関業法や関税法などの基礎知識を事前に習得しておく必要があります。

基礎知識を確実に身につけた上で、実務の学習に取り組めば、効率的な結果が得られるでしょう。

繰り返し問題を復習する

通関士試験は非常に広範囲の内容を扱うため、知識をストックしておくのは大変難しいです。また、すべての情報を一度に理解することはほぼ不可能なので、繰り返し問題を解くという方法が効果的でしょう。

この学習法は、膨大な知識を効率的に習得する上で非常に役立ちます。繰り返し問題を解くことにより、重要な情報が徐々に頭に定着し、理解が深まっていきます。

また、弱点を克服するためだけでなく、得意分野にも適用すべきです。なぜなら、すべての知識が徐々に定着することで、強みと弱みを可視化し、総合的なスキルを向上させることができるからです。

試験の傾向になれることが重要

試験当日の緊張から頭が真っ白になり、事前に準備した知識すら思い出せないことがあるため、単に知識を持っているだけでは不十分でしょう。

そのため、過去問題を繰り返し解いて試験の傾向に慣れ、時間内に必要な回答を導き出せるようになることが重要です。

過去問題こそが最良の学習資料だと心に留め、自己採点を行い、弱点や誤解を修正することがおすすめです。

章末問題は頻繁に取り組む

人間は忘れやすい生き物ですから、新しい知識を定着させるためには、繰り返し復習する必要があります。

初めは名前を覚えるのが難しくても、日々の接触を重ねることで徐々に記憶に残っていくのと同じように、問題に何度も取り組むことで内容を理解し、記憶に定着させることができます。

頻度としては、3日に1度、1週間に1度と定期的に復習することをおすすめします。

間違えた理由を説明できるようにする

次の試験で同じ間違いを繰り返さないためには、なぜ間違えたのかを理解し、その理由を説明できるようにすることが大切です。

具体的には、ノートに問題文を書き写し、間違いの理由と正しい答えを記録することが効果的です。このノートを毎日確認することで、自分専用の問題集として活用できるでしょう。

この学習方法は、他の資格取得の際にも役立ちます。

過去問演習は特に何度も繰り返してやり込む

通関士試験の過去問題は、試験の傾向が反映されており、頻出分野や出題形式を把握できます。ただし、単に過去問題を解くだけでは十分ではありません。

一度解いた問題を繰り返し解くことで、試験の流れや問題の組み合わせを理解し、実際の試験で活用できるようになります。

間違えた問題に対しては、再度取り組むことで間違いの理由を明確にし、内容を確実に理解できます

通信講座を利用しよう

独学で合格することに限界を感じた場合、通信講座の利用をおすすめします。

通信講座では、試験範囲を網羅した教材と学習計画に基づき、じっくりと知識を身につけることができます。また、理解度確認テストや模擬試験を通じて客観的な学習評価を受けられ、弱点の克服に役立てられます。さらに、自宅で自分のペースで学べるというメリットもあります。

ここでは代表的な通信講座を2つご紹介します。

フォーサイト

フォーサイトは、合格に必要な専門知識とテクニックを短期間で身につけられるよう設計されており、利用者の合格率は68.9%と非常に高くなっています。

テキストと連動した視覚的な講義動画、各科目の重要ポイントが明示された学習教材、eラーニングシステム「ManaBun」によるスマートフォンでの学習など、様々な機能を備えています。

このようにフォーサイトではスキマ時間を活用した効率的な学習が可能なので、合格への近道となるでしょう。

ユーキャン

ユーキャンの通信講座は、半年間の計画的な学習で合格を目指せるようになっています。

テキストや講義に加え、質問への対応や添削指導など、一人ひとりに合わせたきめ細かいサポートが充実しています。

講師は受講生の合格を最優先に考え、問題解決に向けて寄り添ってくれます。

通関士試験の勉強時間まとめ

これまで、通関士試験の勉強時間について紹介してきました。

通関士試験は専門知識が求められる難関試験で、合格には計画的で継続した学習が欠かせません。

仕事と並行しながら学習する人も多い​と考えられるため、試験の6ヶ月前から1日2〜3時間ほど毎日学習することをおすすめします。

この記事で紹介した内容が、皆さんの学習に役立つことを願っています。