通関士の試験対策のための勉強法は?目安の勉強時間やおすすめテキストも紹介

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通関士は、輸出入貨物の税関手続きを専門に行う資格を持つ専門家です。一般的に通関士資格に合格することは非常に難しい​ため、効率的に試験対策を進めて少しでも合格する確率を高めることが重要となります。

そこでここでは通関士試験に合格するための勉強方法や勉強時間について解説していきます!


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通関士試験の基本情報

通関士は、輸出入貨物の税関申告業務を専門とする職業であり、企業が自身で輸出入業務を行うことが難しい場合に代行します。

これには、取引文書の確認、物品の分類、輸入時の納税額算出など、幅広い業務が含まれます。また、申告後に許可が得られない場合に企業に代わって不服申し立ても行うことがあり、その専門性と責任は大きいものがあります。

通関士は、輸出入過程における重要な役割を担い、スムーズな国際取引の促進に貢献しています。

通関士試験時期と回数

通関士試験は、毎年10月の初めの日曜日に行われるのが通例です。受験生は、受験料として3,000円の収入印紙が必要ですが、電子納付を選択した場合は2,900円となります。試験は「通関業法」「関税法等」「通関実務」の3科目で構成され、合格者は11月末から12月初旬にかけて発表されます。

2024年の通関士試験は10月1日(日)に実施され、試験内容は「通関業法」「関税法等」「通関実務」の全3科目です。申し込み期間は7月24日から8月7日までで、受験手数料は3,000円(オンライン申し込みの場合は2,900円)となっています。試験は年に1回のみ実施され、合格発表は11月7日に予定されています​。

通関士試験の合格率は20%以下

通関士試験の合格率は他の難関資格試験と比較しても低いことから、難易度が高いことを意味しています。

年度

受験者数

合格者

合格率

2019年度

6,388名

878名

13.7%

2020年度

6,745名

1,140名

16.9%

2021年度

6,961名

1,097名

15.8%

2022年度

6,336名

1,212名

19.1%

2023年度

6,332名

1,534名

24.2%

2019年の合格率は13.7%と年度によっては10%前半に留まることもありますが、総じて20%以下で推移しています。この数値は、宅建士試験の約15%や行政書士試験の10%前後と比べても劣らないため、難易度の高さが伺えます。

ただし2023年度は例外的に24.2%という高い合格率を記録しました。

通関士試験の合格基準は正答率60%

通関士試験の合格には、各科目で60%以上の得点率を達成することが基本的な要件とされています。しかし、この60%という数字は合格のための最低ラインを示すものであり、実際の合格基準は試験終了後に決定され公表されます。

3科目合計で90点以上を取得していても、一つの科目でも60%未満の場合、合格とはなりません。

また、試験の難易度や受験者の全体的な成績によって、実際の合格基準が年によって変動する可能性がある点に注意が必要です。つまり、全員が高得点を取った場合には合格基準が上がり、逆に全体の成績が低ければ基準が下がることもあり得るのです。

通関士試験の科目別配点

通関士試験では、「通関実務」が最も高い難易度を持つ科目であり、これに45点の配点が設定されています。この科目は、輸出入申告、計算問題、品目分類など実務に即した形式で出題されます。

「通関実務」においては、通関書類の作成要領が20点、その他の通関手続の実務が合計25点となっており、対策をしっかりと行う必要があります。

「関税法等」は60点、そして「通関業法」が45点で、これらは選択式および択一式の問題が中心で、主に暗記が求められる内容となっています。

受験科目が一部免除になることも

通関士試験では、特定の条件を満たす受験者に対して、科目免除の特例が設けられています。この制度は、長年にわたり通関業務や関税に関わる官庁の事務に従事してきた経験豊富な人材を対象としています。具体的な対象者として、以下の2パターンが当てはまります。それぞれの場合で免除条件が異なります。

対象者

①15年以上の関連業務経験者(通関業者での通関業務や官庁における関税及び通関業務)

②5年以上の関連業務経験者(通関業者または官庁における通関事務)

ただし、単純なデータ入力や書類の整理など、専門的な判断を伴わない業務は、経験年数に含まれません。

免除科目

①「関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)」と「通関書類の作成要領その他通関手続の実務」の2科目

②「通関書類の作成要領その他通関手続の実務」の1科目

簡単にまとめると、特定の経験が15年以上の場合は2科目免除、5年以上の場合は1科目免除となります。

試験科目は「関税法等」「通関書類の作成要領等」「通関業法」の3科目で、経験に基づく免除制度を活用することで、受験負担を軽減することが可能です。この制度は、通関士試験の合格を目指す上で、特に長年の実務経験を有する人々にとって有利な条件を提供しています。

通関士試験に向けたおすすめの勉強法

通関士試験対策では、3科目のうち法律関連の科目が大きな割合を占めるため、法律の詳細な暗記が最も重要な勉強法となります。多くの受験者にとって、法律の知識は初学であることが多く、基礎からコツコツと知識を積み重ねることが必要です。

勉強する際は法律条文だけでなく、その適用されるポイントや重要な解釈も併せて理解し、記憶することが重要です。

関税法・通関業法はとにかく暗記ゲー

関税法と通関業法の勉強においては、条文の暗記と諸制度の理解が問われます。これらの科目は、法令の詳細な知識が出題されるため、暗記に重きを置いた学習方法が効果的です。

初学者はまず、基本テキストを複数回読み返し、重要なポイントを網羅的に記憶することから始めるべきです。理解を深めた後は、過去問題集を活用して実践的な理解を目指します。

過去問の反復学習は、試験の傾向と対策を掴みやすくすると同時に、出題されやすいポイントの定着にもつながります。間違えた問題の徹底的な復習を通じて、知識のブランクを埋め、合格に近づくことができます。

暗記事項は定期的に復習を

通関士試験の学習では、暗記が必要な知識が多岐にわたります。長期間の勉強過程で、一度学んだ内容を忘れてしまう恐れがあります。この問題を解決するには、定期的な復習が欠かせません。

特に重要なのは、学習から一定期間が経過した後に、テキストを再読したり、苦手分野を重点的に復習したりすることです。単に一通り学習を終えただけでは不十分で、継続して復習を重ねることで、はじめて暗記事項が確実に定着していきます。

試験までの期間は長く、一度学習した内容を風化させてしまうと大きなマイナスになります。暗記が必要な事項については、計画的に復習の機会を設け、着実に記憶の定着を図っていくことが何より大切です。

範囲が広い通関実務は計画的に

通関実務科目の勉強は、その範囲の広さと貿易用語や計算問題の難易度から計画的な勉強が求められます。特に、インコタームズ(貿易用語)などの専門用語の理解や、テキストでカバーされていない計算問題への対策が必要です。

輸入申告書関連の問題は難易度にブレがあるため、初期段階での集中的な対策はおすすめできません。代わりに、輸出申告書や計算問題などで確実に得点を獲得できるよう、効率的な学習計画を立てることが重要です。

学習資料としては、「通関士教科書 「通関実務」集中対策問題集 」やオンラインの「通関士ポータル」が有効です。さらに、過去問題の繰り返し解答を通じて、解法のコツや頻出問題の傾向を把握する必要があります。広範な問題パターンに対応するためにも、十分な勉強時間を確保し、綿密な対策を進めることで合格に一歩近づきます。

難易度の通関実務は早めに手をつけておく

通関実務科目は、通関士試験内で最も難易度が高いとされています。この科目に対しては、試験直前になってから慌てて準備を始めても、十分な対策が難しいため、早期から時間を確保して取り組むことが重要です。

他の科目の理解度に関わらず、通関実務の勉強は可能ですので、勉強計画においてはこの科目を優先して、他科目と平行して進めることが効果的です。

初期段階では、問題集を模倣することから始め、通関実務独特の解答パターンを身につけることが大切です。

試験では法改正後の内容が問われる

通関士試験の大きな特徴として、法律の改正があげられます。関税法や関連法令の改正がなされると、試験の出題範囲や内容も変更されます。したがって、通関士試験対策においては最新の法改正情報に常に注目し、知識を更新しておく必要があります。

最新の法改正内容は、新しいテキストや税関の公式ウェブサイトなどから入手可能です。試験に向けた準備過程で、これらの情報源を定期的に確認し、法改正のポイントを確実に把握し、暗記しておくことが極めて重要になります。

法改正は通関士試験の核心的な部分なので、その内容を理解・暗記しておかないと、試験で確実に足を引っ張ることになりかねません。法令が変わった際にはすぐに対応し、学習内容の改訂を行うなど徹底した対策が不可欠です。

アウトプットを積極的にしよう

知識がある程度定着したら、アウトプットの練習もすぐに始めるべきです。特に通関士試験の過去問を解くことは、試験の傾向やよく出る領域を把握するのに役立ちます。

演習を繰り返すことにより試験全体の構造を理解できるため、実践は非常に価値があります。択一式問題では、3回同じ問題を解けば、実際の試験で活用できる能力を養うことができるでしょう。

間違えた問題に対しては、再びインプットに戻り徹底的に復習することで自身の地力向上に繋がります。また、過去問を解く際には合格ラインが約60%であることを踏まえ、安心して合格できるよう70%の得点を目指すことが望ましいです。

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通関士試験の準備には、ヒューマンアカデミーの「通関士 完全攻略ガイド」が特におすすめです。この教科書は通関士試験の合格を目指す受験生に対し、体系的な学習計画の提案、充実した問題集、分かりやすい解説、そして最新の試験情報の提供といった総合的な手助けをしてくれます。

受験生それぞれのニーズに応える柔軟な教材選びが求められる中で、この書籍はその内容の網羅性と支援の多様性により、効率的かつ効果的な学習をサポートするための優れた選択肢となるでしょう。

通関士試験合格のために必要な勉強時間

通関士試験の合格には、目安として400~500時間の勉強時間が必要です。特に社会人が受験する場合、日常の忙しさの中で効率良く時間を見つけ、長期間にわたって地道に学習を進めることが重要になります。

科目ごとの学習時間の配分は、関税法と通関業法にそれぞれ勉強時間の20%ずつを割り当て、残りの60%を難易度の高い通関実務に充てるという割合がおすすめです。

この配分に従って勉強スケジュールを立てることで、各科目にバランス良く時間を割くことが可能になり、効果的な学習を実現できます。

6か月の学習期間を意識してスケジュールを組む

通関士試験に合格するための一般的な学習期間は、約6か月と言われています。この期間を意識して、例えば4月頃から勉強を開始し、10月の本試験に向けて計画的に準備を進めていくことが理想的です。

もちろん、すでに関連分野の基礎知識があれば、より短期間で合格できる可能性もあります。一方で、勉強が苦手な方や、社会人で時間的な余裕が少ない方の場合は、8〜9か月の長期的なスパンで学習期間を設定する必要があるかもしれません。

いずれにしても、通関士試験合格に向けては、計画的な学習スケジュールを組むことが大切です。6か月という一般的な目安を参考に、自分に合った適切な学習期間を設定し、その期間に合わせてしっかりと勉強計画を立てましょう。

勉強時間を上手に確保する方法

通関士試験の準備では、短期間での集中的な学習が欠かせません。特に6カ月という期間を最大限活用するには、平日と休日でうまく勉強時間を分け、継続して取り組むことが重要です。

平日は仕事などで忙しい中でも、朝の空き時間、昼休み、夜の時間などを活用して、最低でも1日1時間は学習時間を確保しましょう。

一方、休日はより集中して勉強に取り組めるので、2時間以上の学習時間を確保するのが理想的です。ただし、毎日必ず勉強しなければならないわけではありません。

大切なのは継続して学習に取り組むことで、知識の理解と定着を図ることです。無理なく続けられるペースを保ちながら、極力勉強を欠かさないよう心がけましょう。

このように平日と休日でうまく役割分担をし、コンスタントに学習を重ねていけば、効率的な試験対策が可能になります。


通関士試験に独学で合格するのは無理?

通関士資格に独学で合格している人はいるのでしょうか?

通関士資格の独学合格については、予め一定の知識を持っている方であれば、決して不可能ではありません。この資格試験の範囲は比較的限定されており、受験者のレベルも極端に高いわけではないため、効率的な学習計画を立てれば独学でも十分に対応可能です。

しかし、特に初めて試験に挑戦する方が独学で合格を目指す場合には、いくつかの難点があります。通関士資格は、社会保険労務士や行政書士といったより知名度の高い資格と比較すると、インターネット上で利用可能な情報が限られているため、自習中に遭遇する疑問点や問題点を解決するのに時間がかかる可能性があります。

そのため独学での合格は可能であるものの、準備と計画には特に注意を払い、必要に応じて参考書やオンライン学習コンテンツの活用を考えるべきです。

通関士試験の独学の向き・不向き

通関士試験の独学での合格には、自分自身の学習能力とモチベーション維持能力が重要な要素となります。自己管理能力が高く自分で学習計画を立てて実行できる人にとって、独学は有効な手段です。

独学の大きな課題は、一貫して学習意欲を保ち続けることにあります。そのため、もし独学での勉強に自信がなければ、プロの指導を受けられるスクールや通信講座の利用をおすすめします。

また、通関士試験は法律関連の知識を多く問われるため、特に法律分野に関する予備知識がある人、新しい知識を学ぶことに積極的な人は、独学による合格も見込めるでしょう。

通関士試験の独学のメリット

コストがかからない

独学の場合、必要なのは参考書や過去問題集などの教材費と受験料のみです。予備校や通信講座を利用すると、高額な授業料がかさむため、コスト面では明らかに独学が有利といえます。

自由にスケジュールを組める

通関士試験の独学のもう一つの大きなメリットは、自由にスケジュールを組める点にあります。予備校に通学する場合、決められた時間に合わせて勉強しなければなりませんが、独学であれば自分のライフスタイルや仕事、家庭の事情に合わせて学習時間を調整することができます​。

この柔軟性は、勉強を継続する上で非常に重要です。例えば、忙しい社会人や家庭を持つ人などは、日中は勉強する時間が取りにくい場合が多いですが、独学ならば早朝や夜間、休日を利用して効率的に学習を進めることができます。また、自分が最も集中できる時間帯に勉強をすることで、学習効率を高めることも可能です​。

ただし、この自由度の高さは逆に言えば自己管理が求められるということでもあります。スケジュールを自由に組めるからといって甘えが生じやすい環境でもあるため、強い意志と計画性を持って臨む必要があるでしょう​

通関士試験の独学のデメリット

勉強のスケジュール管理が難しい

独学では、すべて自分自身で計画を管理する必要があります。これは、計画的に物事を進める自己管理能力がないと難しい場合が多く、一度スケジュールが崩れると、勉強が滞りがちになるリスクがあります​​。また、仕事やプライベートの急な予定変更があった際に、勉強の時間をどう確保するかも課題となります。

そのため現実的で柔軟な学習計画を立てつつ、定期的に計画を見直して調整することが重要です。

モチベーションの維持が難しい

長期にわたる独学では、モチベーションの維持が難しいです。特に通関士試験のような難易度の高い試験では、勉強に対する意欲が途中で低下しやすく、中断や挫折につながる可能性があります。

さらに他の受験生や講師との直接的な交流が少ない独学では孤独感を感じることもあります。

モチベーションを維持するためには、具体的な目標設定や小さな達成ごとに自分自身を褒めることが有効です。また勉強の進捗を可視化するためのチェックリストや進捗表を作成することで、自身の成長を確認でき、モチベーションの向上に繋がります。

法律の予備知識がないと難しい

通関士試験において法律の予備知識がないと学習が難しいというデメリットがあります。通関士試験は、関税法・通関業法など法律に関する専門的な知識を要求するため、法律の基礎知識がない場合、試験の内容理解や用語の把握が困難になる可能性があります。

法律の予備知識がない場合に勉強を進める際の対策としては、まずは基礎から学ぶことが重要です。法律用語や基本的な法律の概念を学ぶための入門書や、通関士試験に特化した初学者向けの教材を活用することで、徐々に専門知識を身につけていくことができます。

講座受講の方が明らかに合格率が高い

通関士試験の独学と比較して、予備校や通信講座などの講座受講者の合格率の方が明らかに高いことは無視できません。予備校や通信講座などの受講は、専門的な知識や学習のノウハウ、さらには効率的な勉強法を提供してくれるため、試験対策を効果的に進めることができます。

特に、法律の予備知識がない受験生や試験の形式に不慣れな受験生にとっては、講座受講による学習方法の提示は大きな助けになります。

実際、人気講座であるフォーサイトの通関士講座では全国平均の2.85倍の合格率を記録しています(令和5年度実績)。

独学で不合格を重ねて何度も受験料の支払いや参考書の買い直しを行うよりも、合格率の高い通信講座を受講して一発合格をした方がむしろコスパが良いと考えることもできるので、独学に不安がある方はぜひフォーサイトの通関士講座をチェックしてみてはいかがでしょうか。


通関士試験の勉強法まとめ

ここでは通関士試験の難易度や合格基準、勉強方法について解説してきました。

自分自身で管理して学習に臨める方は、独学での合格も夢ではないと思います。

難しい方は、オンラインでのサポートサービスや通信講座を受けることもできますので、自分にあった方法で合格を目指しましょう!